源氏物語イラスト訳【紅葉賀153】ことしもあれ | 【受験古文速読法】源氏物語イラスト訳

源氏物語イラスト訳【紅葉賀153】ことしもあれ

「ことしもあれ、うたての心ばへや」と笑まれながら、「森こそ夏の、と見ゆめる」とて、何くれとのたまふも、似げなく、

 

【これまでのあらすじ】

桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。

光源氏18歳冬。藤壺宮は、光源氏との不義密通の御子を出産しました。源氏は宮中の女官に手を出すこともなかったのですが、年増の源典侍(げんのないしのすけ)には少し興味を持って、ちょっかいを出しています。

 

 

源氏物語イラスト訳 

 

 

ことしもあれうたての心ばへ」と笑まながら

訳)事もあろうに嫌らしい趣向なぁ」と微笑みなさりながらも

 

 

「森こそ、と見ゆめるとて

訳)「『森こそ蔭はしるけれ』の歌を引いて見せようだね言っ

 

 

何くれとのたまふも、似げなく

訳)いろいろとおっしゃるのも、不釣り合いで

 

 

【古文】

ことしもあれうたての心ばへ」と笑まながら、「森こそ、と見ゆめるとて何くれとのたまふも、似げなく

 

【訳】

事もあろうに嫌らしい趣向なぁ」と微笑みなさりながらも、「『森こそ蔭はしるけれ』の歌を引いて見せようだね言っいろいろとおっしゃるのも、不釣り合いで

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

■【ことしもあれ】…事もあろうに。よりによって

※【こと(事)】…事柄。他の事

※【し】…強意の副助詞

※【も】…強意の係助詞

※【あれ】…ラ変動詞「あり」已然形(已然形止め)

■【うたての】…嫌らしい

※【うたて】…嫌なことに

※【の】…連体修飾格の格助詞

■【心ばへ】…趣向

■【や】…詠嘆の終助詞

■【と】…引用の格助詞

■【笑(ゑ)ま】…マ行四段動詞「ゑむ」未然形

■【れ】…尊敬の助動詞「る」連用形

■【ながら】…逆接(継続)の接続助詞

■【森こそ夏の】…『日本古典集成』では、「ひまもなく茂りにけりな大荒木森こそ夏の蔭はしるけれ」(出典未詳)を指摘し、「立ち寄ってもよさそうな森ではないか、と、扇の絵の批評にかこつけての皮肉」と注している

※【こそ】…強意の係助詞

※【の】…連体修飾格の格助詞

■【と】…引用の格助詞

■【見ゆ】…見せる

■【める】…推定の助動詞「めり」連体形(連体形止め)

■【とて】…~と言って

※【と】…引用の格助詞

※【て】…単純接続の接続助詞

■【何くれと】…いろいろと

■【のたまふ】…「言ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)

■【も】…強意の係助詞

■【似げなく】…ク活用形容詞「似げなし」連用形

※【似げなし】…ふさわしくない。似合わない

 

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「似つかはしからぬ扇のさまかな」と見たまひて、わが持ちたまへるに、さしかへて見たまへば、赤き紙の、うつるばかり色深きに、木高き森の画を塗り隠したり。片つ方に、手はいとさだ過ぎたれど、よしなからず、「森の下草老いぬれば」など書きすさびたるを、「ことしもあれ、うたての心ばへや」と笑まれながら、「森こそ夏の、と見ゆめる」とて、何くれとのたまふも、似げなく、人や見つけむと苦しきを、女はさも思ひたらず、

 

】 傍線部は、「ひまもなく茂りにけりな大荒木森こそ夏の蔭はしるけれ」(出典未詳)、または、「時鳥来鳴くを聞けば大荒木森こそ夏の宿りなるらし」(信明集)の引き歌ともいわれている。これを参考に、傍線部の説明として、最も適当なものを選べ。

 

.年をとって誰も相手にしてくれないという引き歌を扇に書いて淋しさを訴えていたことに対して、「源典侍の所には多くの男たちがの泊っているはず」と、別の歌意の引き歌を匂わせて、源氏は戯れている。

 

.年をとって誰も相手にしてくれないという引き歌を扇に書いて淋しさを訴えていたことに対して、「それなら自分が今夜は泊まろう」という内容を意味する別の歌意の引き歌を引用して、源氏は口説いている。

 

.老いた自分にもまだ女性の部分は残っているという引き歌を扇に書いて源氏を誘惑してきたことに対して、「源典侍の所には多くの男たちがの泊っているはず」と、別の引き歌を用いて、源氏はその誘いを拒んでいる。

 

.老いた自分にもまだ女性の部分は残っているという引き歌を扇に書いて、源氏を誘惑してきたことに対して、それなら自分が今夜は泊まろう」と、別の引き歌を用いて、源氏はその誘惑に乗ろうとしている。

 

.老いた自分には、あなた以外に頼れる夫がいないという引き歌を扇に書いて、源氏に告白してきた源典侍に対して、それなら自分が今夜は泊まろう」と、別の引き歌を用いて、源氏はその誘いに乗っている。

 

 

【引き歌】どうしのやりとりは、『源氏物語』のなかで、ちょくちょく出てきます。

 

大学入試では、本文に和歌がなくとも、このような引き歌の注釈から、和歌の主旨を読解する問題も出てきますので、注意しましょう。

チューチューチュー

 

 

 

 

 

 

※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!

ウインクウインクウインク

 

 

 

 

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