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古典文法習得のためのまぎらわしい語の識別マスターノート
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「筝の琴は、中の細緒の堪へがたきこそところせけれ」
とて、平調におしくだして調べたまふ。かき合はせばかり弾きて、さしやりたまへれば、え怨じ果てず、いとうつくしう弾きたまふ。
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。四月になり、藤壺宮と御子が宮中に戻りました。源氏は罪悪感に苛まれながらも、紫の君のいる二条院で時を過ごしています。
「筝の琴は、中の細緒の堪へがたきこそところせけれ」
訳)「箏の琴は、中の細緒が切れやすいのが厄介だ」
とて、平調におしくだして調べたまふ。
訳)と言って、平調に下げて調律しなさる。
かき合はせばかり弾きて、さしやりたまへれば、
訳)試し弾きの小曲だけ弾いて、押しやりなさったところ、
え怨じ果てず、いとうつくしう弾きたまふ。
訳)恨み言を言い続けることもできず、とてもかわいらしく弾きなさる。
【古文】
「筝の琴は、中の細緒の堪へがたきこそところせけれ」
とて、平調におしくだして調べたまふ。かき合はせばかり弾きて、さしやりたまへれば、え怨じ果てず、いとうつくしう弾きたまふ。
【訳】
「箏の琴は、中の細緒が切れやすいのが厄介だ」
と言って、平調に下げて調律しなさる。試し弾きの小曲だけ弾いて、押しやりなさったところ、恨み言を言い続けることもできず、とてもかわいらしく弾きなさる。
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■【箏(さう)の琴(こと)】…弦楽器の一つ。中空の胴の上に十三本の弦を張った琴
■【は】…取り立ての係助詞
■【中の細緒(ほそを)】…箏(そう)の13弦のうち、中の細い弦
■【堪へがたし】…堪えることができない。ここでは、切れやすい意
■【こそ】…強意の係助詞(結び;「ところせけれ」)
■【ところせけれ】…ク活用形容詞「所狭し」已然形
※【所狭(ところせ)し】…ここでは、煩わしい。面倒だの意
■【と】…引用の格助詞
■【て】…単純接続の接続助詞
■【平調(ひゃうでう)】…日本の音階「十二律(じふにりつ)」の一つ。第三音で、壱越(いちこつ)より二律(=一音)高い。西洋音楽のホ音に相当する。また、その音を基音とする音階
■【おしくだす】…おろす。(「おし」は接頭語)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【調べ】…バ行下二段動詞「しらぶ」連用形
※【調(しら)ぶ】…調律する。演奏する
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【かき合はせ】…弦楽器の音の調子をみるために、ためしに曲を弾いてみること。試し弾き
■【ばかり】…限定の副助詞
■【て】…単純接続の接続助詞
■【さしやる】…押しやる(「さし」は接頭語)
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【れ】…完了の助動詞「り」の已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【え~ず】…~できない(「え」は陳述の副詞)
■【怨(えん)ず】…恨む。恨み言を言う
■【―果つ】…すっかり~する。~し続ける
■【ず】…打消の助動詞「ず」連用形
■【いと】…とても
■【うつくしう】…シク活用形容詞「うつくし」連用形ウ音便
※【うつくし】…かわいらしい
■【弾き】…カ行四段動詞「弾く」連用形
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒紫の君)
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