源氏物語イラスト訳【紅葉賀66】葵の気高さ
しひて見知らぬやうにもてなして、乱れたる御けはひには、えしも心強からず、御いらへなどうち聞こえたまへるは、なほ人よりはいとことなり。
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。朱雀院行幸で、源氏は美しい「青海波」の舞を披露し、昇進しました。藤壺宮が里下がりしたので、源氏は心乱れつつも、左大臣邸へ顔を出します。
源氏物語イラスト訳
しひて見知らぬやうにもてなして、
訳)無理に見知らないように振る舞って、
乱れたる御けはひには、
訳)形式ばらないでいる源氏の君のご様子に対しては、
えしも心強からず、御いらへなどうち聞こえたまへるは、
訳)強情も張り通すこともできず、お返事などちょっと申し上げなさっているところは、
なほ人よりはいとことなり。
訳)やはり他の女性よりもとても違って格別である。
【古文】
しひて見知らぬやうにもてなして、乱れたる御けはひには、えしも心強からず、御いらへなどうち聞こえたまへるは、なほ人よりはいとことなり。
【訳】
無理に見知らないように振る舞って、形式ばらないでいる源氏の君のご様子に対しては、強情も張り通すこともできず、お返事などちょっと申し上げなさっているところは、やはり他の女性よりもとても違って格別である。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
■【しひて】…強引に。むやみに
■【見知る】…見てそれと判断する
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【やうに】…比況の助動詞「やうなり」連用形
■【もてなす】…振る舞う
■【て】…単純接続の接続助詞
■【乱れ】…ラ行下二段動詞「みだる」連用形
※【みだる】…形式ばらなくなる
■【たる】…完了の助動詞「たり」連体形
■【御―】…尊敬の接頭語(作者⇒光源氏)
■【けはひ】…様子
■【に】…対象の格助詞
■【は】…取り立ての係助詞
■【え~ず】…~できない
※【え】…陳述の副詞【可能】
※【ず】…打消の助動詞「ず」連用形
■【しも】…強意
※【し】…強意の副助詞
※【も】…強意の係助詞
■【心強から】…ク活用形容詞「心強し」未然形
※【心強し】…断定の助動詞「なり」連用形
■【御―】…尊敬の接頭語(作者⇒葵上)
■【いらへ】…返事
■【など】…例示の副助詞
■【うち―】…ちょっと(接頭語)
■【聞こえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」連用形
※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(作者⇒光源氏)
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒葵上)
■【る】…完了の助動詞「り」連体形
■【は】…取り立ての係助詞
■【なほ】…やはり
■【より】…比較の格助詞
■【は】…取り立ての係助詞
■【いと】…とても
■【ことなり】…異なる。格別である
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【大学入試予想:マーク問題】
しひて見知らぬやうに①もてなして、乱れたる御けはひには、えしも心強からず、御いらへなどうち②聞こえたまへるは、なほ人よりはいと③ことなり。
【問】 傍線部①②③の主語の組み合わせとして最も適当なものを選べ。
1.① 葵上 ② 光源氏 ③ 葵上
2.① 光源氏 ② 光源氏 ③ 葵上
3.① 葵上 ② 葵上 ③ 葵上
4.① 光源氏 ② 光源氏 ③ 光源氏
5.① 葵上 ② 葵上 ③ 光源氏
【主語の把握問題】は、敬語や「を・に・ば」などの助詞が識別ポイントになりますが、今回のように、登場人物みな身分の高い場合には、あまり役に立ちません。また、単純接続でも、文脈上明らかに主語が変わる場合もあります。
今回の古文では「乱れたる御けはひ」が光源氏主体であり、この一文の目線が「葵上」であるということがポイント。古文目線として、こういう文章も読み取れるようにしておきましょう。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【3】