源氏物語イラスト訳【末摘花222】真っ赤なお鼻の…
「あながちなる御ことかな。このなかには、にほへる鼻もなかめり」
「左近の命婦、肥後の采女や混じらひつらむ」
など、心も得ず言ひしろふ。
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)と逢瀬を迎えた光源氏。返歌もできない教養のなさや、雪明かりの朝に見た彼女の容貌に驚き、幻滅します。しかし、縁があって逢瀬を迎えたのだから、一生彼女の面倒をみようと心に決めます。光源氏19歳の年末、へたな和歌と元日に着る野暮ったい衣装が届き、光源氏は閉口します。命婦は贈り物を届けたことを後悔し、そっと退出しました。
源氏物語イラスト訳
「あながちなる御ことかな。
訳)「ひどいお言葉だわ。
このなかには、にほへる鼻もなかめり」
訳)この中には赤く染まっている鼻の人はいないようなのに」
「左近の命婦、肥後の采女や混じらひつらむ」
訳)「左近の命婦や、肥後の采女がまさか交じっ ているのだろうか」
など、心も得ず言ひしろふ。
訳)などと、合点がゆかず、言い合っている。
【古文】
「あながちなる御ことかな。このなかには、にほへる鼻もなかめり」
「左近の命婦、肥後の采女や混じらひつらむ」
など、心も得ず言ひしろふ。
【訳】
「ひどいお言葉だわ。この中には赤く染まっている鼻の人はいないようなのに」
「左近の命婦や、肥後の采女がまさか交じっ ているのだろうか」
などと、合点がゆかず、言い合っている。
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■【あながちなる】…ナリ活用形容動詞「あながちなり」連体形
※【あながちなり】…無理だ。ひどい
■【御―】…尊敬の接頭語(女房たち⇒光源氏)
■【こと】…言葉
■【かな】…詠嘆の終助詞
■【に】…場所の格助詞
■【は】…取り立ての係助詞
■【にほへる鼻】…赤く染まっている鼻(の人)
※【にほふ】…美しく照り映える。赤く色づく
※【四段・已然形+る】…存続の助動詞「り」連体形
■【なか】…ク活用形容詞「無し」連体形撥音便の無表記
■【めり】…推定の助動詞「めり」終止形
■【左近(さこん)の命婦(みょうぶ)】…赤鼻の持ち主だったといわれる女房名
■【肥後(ひご)の采女(うねめ)】…赤鼻の持ち主だったといわれる女房名
■【や】…疑問の係助詞
■【混じらひ】…ハ行四段動詞「混じらふ」連用形
■【つ】…強意の助動詞「つ」終止形
■【らむ】…現在推量の助動詞「らむ」連体形
■【など】…引用の副助詞
■【心も得ず】…納得もいかず。合点がいかず
※【も】…強意の係助詞
※【ず】…打消の助動詞「ず」連用形
■【言ひしろふ】…互いに言い合う
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【本日の源氏物語】
光源氏の不可解な「口ずさみ」に対して、
大輔命婦は、「掻練で好むような紅色の鼻が見えたのかしら」などとごまかします。
それを聞いた女房たちは、「えっ? わたしたちの鼻が赤いですって?!」とクレームを言い合っているのですね。
「左近の命婦」や「肥後の采女」は、はっきり分かりませんが、おそらくこの文脈から、宮中で仕えた女房名でしょう。もし、真っ赤なお鼻の彼女たちがいたら、光源氏の歌の意味も納得がいくだろうに、というわけですね;;
今も昔も、こういうイジリがあったのですね。
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