源氏物語イラスト訳【末摘花218】命婦の後悔
「何に御覧ぜさせつらむ。我さへ心なきやうに」と、いと恥づかしくて、やをら下りぬ。
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)と逢瀬を迎えた光源氏。返歌もできない教養のなさや、雪明かりの朝に見た彼女の容貌に驚き、幻滅します。しかし、縁があって逢瀬を迎えたのだから、一生彼女の面倒をみようと心に決めます。光源氏19歳の年末、へたな和歌と元日に着る野暮ったい衣装が届き、光源氏は閉口します。
源氏物語イラスト訳
「何に御覧ぜさせつらむ。
訳)「どうして、御覧に入れてしまったのだろうか。
我さへ心なきやうに」と、
訳)。自分までが思慮のない者のようで…」と、
いと恥づかしくて、やをら下りぬ。
訳)とても恥ずかしくて、そっと退出した。
【古文】
「何に御覧ぜさせつらむ。我さへ心なきやうに」と、いと恥づかしくて、やをら下りぬ。
【訳】
「どうして、御覧に入れてしまったのだろうか。自分までが思慮のない者のようで…」と、とても恥ずかしくて、そっと退出した。
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■【何に】…どうして~か
■【ご覧ぜさせ】…サ行下二段動詞「ご覧ぜさす」連用形
※【御覧ぜさす】…ご覧に入れる(「見る」の尊敬;命婦⇒光源氏)
■【つ】…完了の助動詞「つ」終止形
■【らむ】…現在の原因推量の助動詞「らむ」連体形
■【我】…自分
■【さへ】…~まで(添加の副助詞)
■【心なし】…分別がない。思慮がない
■【やうに】…比況の助動詞「やうなり」連用形
■【と】…引用の格助詞
■【いと】…とても
■【恥づかしく】…シク活用形容詞「恥づかし」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【やをら】…そっと。静かに
■【下(お)り】…ラ行上二段動詞「下る」連用形
※【下(お)る】…退出する
■【ぬ】…完了の助動詞「ぬ」終止形
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【本日の源氏物語】
光源氏の、末摘花からの贈り物を受け取った様子を見て、大輔命婦は、「どうして渡してしまったのか」と後悔していますね;;
この、野暮ったい贈り物を渡すかどうしようか、と彼女は迷っていたのですが、姫君の純朴な気持ちを汲んで、渡すことに決めました。
女房(※命婦は光源氏の乳母子)というのものは、たんに貴人の指示にしたがうだけの召使いではなく、どうすれば恋愛がうまくいくかとか、自分の主人が恋人によく思われるための噂を流したりとか、配慮できるのが腕の見せ所です。
なのに、今回の命婦は、そのような配慮に欠けていたため、末摘花の名誉を傷つけ、さらには光源氏にいやな思いをさせてしまったのです。
「心なし」というのも、頷けますね。
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