源氏物語イラスト訳【末摘花201】ニヤつく命婦☆
「あやしきことのはべるを、聞こえさせざらむもひがひがしう、思ひたまへわづらひて」
と、ほほ笑みて聞こえやらぬを、
「何ざまのことぞ。我にはつつむことあらじと、なむ思ふ」とのたまへば、
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)と逢瀬を迎えた光源氏。返歌もできない教養のなさや、雪明かりの朝に見た、彼女の容貌に驚き、幻滅が隠せません。しかし、縁があって逢瀬を迎えたのだから、一生彼女の面倒をみようと心に決めます。
源氏物語イラスト訳
「あやしきことのはべるを、聞こえさせざらむもひがひがしう、
訳)「妙な事がございますが、申し上げないとしたらそれもひねくれているようで、
思ひたまへわづらひて」と、ほほ笑みて聞こえやらぬを、
訳)思い悩み申し上げ て……」と、微笑んですっかり申し上げたりしないのを、
「何ざまのことぞ。
訳)「どのような事だ。
我にはつつむことあらじと、なむ思ふ」とのたまへば、
訳)わたしにはつつみ隠すことはあるまいと、思うが」とおっしゃると、
【古文】
「あやしきことのはべるを、聞こえさせざらむもひがひがしう、思ひたまへわづらひて」
と、ほほ笑みて聞こえやらぬを、
「何ざまのことぞ。我にはつつむことあらじと、なむ思ふ」とのたまへば、
【訳】
「妙な事がございますが、申し上げないとしたらそれもひねくれているようで、思い悩み申し上げ て……」
と、微笑んですっかり申し上げたりしないのを、
「どのような事だ。わたしにはつつみ隠すことはあるまいと、思うが」とおっしゃると、
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■【あやしき】…シク活用形容詞「あやし」連体形
■【の】…主格の格助詞
■【はべる】…ラ変動詞「はべり」連体形
※【はべり】…「あり」の丁寧語(命婦⇒光源氏)
■【を】…逆接の接続助詞
■【聞こえさせ】…サ行下二段動詞「聞こえさす」未然形
※【聞こえさす】…「言ふ」の謙譲語(命婦⇒光源氏)
■【ざら】…打消の助動詞「ず」未然形
■【む】…仮定の助動詞「む」連体形
■【も】…強意の係助詞
■【ひがひがしう】…シク活用形容詞「ひがひがし」連用形ウ音便
※【ひがひがし】…ひねくれている
■【思ひたまへわづらふ】…思い悩み申し上げる
※【思ひ】…ハ行四段動詞「思ふ」連用形
※【たまへ】…ハ行下二段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…謙譲の補助動詞(命婦⇒光源氏)
※【思ひわづらふ】…思い悩む
■【て】…単純接続の接続助詞
■【と】…引用の格助詞
■【ほほ笑み】…マ行四段動詞「ほほゑむ」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【聞こえやら】…ラ行四段動詞「聞こえやる」未然形
※【聞こえやる】…すっかり申し上げる
※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(作者⇒光源氏)
※【―やる】…すっかり~する。最後まで~する
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【を】…対象の格助詞
■【何ざま】…どのよう
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【ぞ】…強意の係助詞(疑問詞を伴い「~か」と問いただす)
■【我】…わたし(源氏の自称)
■【に】…対象の格助詞
■【は】…取り立ての係助詞
■【つつむ】…つつみ隠す
■【あら】…ラ変動詞「あり」未然形
■【じ】…打消推量の助動詞「じ」終止形
■【と】…引用の格助詞
■【なむ】…強意の係助詞(結び;「思ふ」)
■【思ふ】…ハ行四段動詞「思ふ」連体形
■【と】…引用の格助詞
■【のたまへ】…ハ行四段動詞「のたまふ」已然形
※【のたまふ】…「言ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
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