源氏物語イラスト訳【末摘花132】初夜を迎えた次の日は…
「夕霧の晴るるけしきもまだ見ぬにいぶせさ添ふる宵の雨かな
雲間待ち出でむほど、いかに心もとなう」
とあり。
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)との初夜を終えた光源氏。なんだか思っていたのと違って、幻滅を隠せません。翌日は夕方に手紙だけを送って、足が向きません。
源氏物語イラスト訳
「夕霧の晴るるけしきもまだ見ぬに
訳)「夕霧が晴れる気配もまだ見ないのに、
いぶせさ添ふる宵の雨かな
訳)うっとおしさがさらに加わる宵の雨だなぁ。
雲間待ち出でむほど、いかに心もとなう」とあり。
訳)雲の晴れ間を待ち受けるような間は、どれほどじれったく…」とある。
【古文】
「夕霧の晴るるけしきもまだ見ぬにいぶせさ添ふる宵の雨かな
雲間待ち出でむほど、いかに心もとなう」
とあり。
【訳】
「夕霧が晴れる気配もまだ見ないのに、
うっとおしさがさらに加わる宵の雨だなぁ。
雲の晴れ間を待ち受けるような間は、どれほどじれったく…」
とある。
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■【夕霧(ゆふぎり)】…夕方の霧。末摘花の心の中を見立てている
■【の】…主格の格助詞
■【晴(は)るる】…ラ行下二段動詞「晴る」連体形
■【けしき】…様子。気配
■【も】…強意の係助詞
■【まだ~(打消)】…いまだ~しない
■【見】…マ行上一段動詞「見る」未然形
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【に】…逆接の接続助詞
■【いぶせさ】…うっとおしさ。気が晴れないこと
■【添(そ)ふる】…ハ行下二段動詞「添ふ」連体形
※【添ふ】…さらに加わる
■【宵(よひ)】…夜
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【かな】…詠嘆の終助詞
■【雲間(くもま)】…雲の絶え間。雲の晴れ間
■【待ち出で】…ダ行下二段動詞「待ちいづ」未然形
※【待ち出づ】…待ち受けて出逢う
■【む】…婉曲の助動詞「む」連体形
■【ほど】…時。間
■【いかに】…どれほど。どんなに
■【心もとなう】…ク活用形容詞「心もとなし」連用形ウ音便
※【心もとなし】…じれったい。不安だ
■【と】…引用の格助詞
■【あり】…ラ変動詞「あり」終止形
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【本日の源氏物語】
光源氏から末摘花への贈歌です。
本来ならば、初夜を迎えた次の日は、
三日続けて通って行くと、婚姻成立となります。
しかし、光源氏は、…足が向かなかったのですね。
ですが、身分の高い常陸宮の姫君に対し、「一夜限りの…」というわけにもいかず、あたり障りのない和歌を送ります。
「夕霧」は自然描写ですが、末摘花の霧に包まれたような心の中を見立てているとも捉えられますねっ!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
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