源氏物語イラスト訳【末摘花33】皮肉
「主上の、まめにおはしますと、もてなやみきこえさせたまふこそ、をかしう思うたまへらるる折々はべれ。かやうの御やつれ姿を、いかでかは御覧じつけむ」
と聞こゆれば、
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【源氏物語イラスト訳】
「主上の、まめにおはしますと、もてなやみきこえさせたまふこそ、
訳)「帝が、き真面目でいらっしゃると、お悩み申し上げなさるのが
をかしう思うたまへらるる折々はべれ。
訳)おかしく存じずにいられません折々がございます。
かやうの御やつれ姿を、いかでかは御覧じつけむ」と聞こゆれば、
訳)このようなお忍び姿を、どうして 目におとめになりましょう か、いや決して目に入らないでしょう」と申し上げると、
【古文】
「主上の、まめにおはしますと、もてなやみきこえさせたまふこそ、をかしう思うたまへらるる折々はべれ。かやうの御やつれ姿を、いかでかは御覧じつけむ」と聞こゆれば、
【訳】
「帝が、き真面目でいらっしゃると、お悩み申し上げなさるのが、おかしく存じずにいられません折々がございます。このようなお忍び姿を、どうして 目におとめになりましょう か、いや決して目に入らないでしょう」と申し上げると、
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■【主上(うへ)】…帝
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【まめに】…ナリ活用形容動詞「まめなり」連用形
※【まめなり】…真面目だ
■【おはします】…尊敬の補助動詞(大輔命婦⇒光源氏)
■【と】…引用の格助詞
■【もてなやむ】…処置に困る。もてあます
■【きこえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」連用形
※【きこゆ】…謙譲語の補助動詞(大輔命婦⇒光源氏)
■【させ】…尊敬の助動詞「さす」連用形
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(大輔命婦⇒帝)
■【こそ】…強意の係助詞(結び:はべれ)
■【をかしう】…シク活用形容詞「をかし」連用形ウ音便
※【をかし】…おかしい。面白い
■【思う】…ハ行四段動詞「思ふ」連用形(思ひ)のウ音便
■【たまへ】…ハ行下二段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…謙譲の補助動詞(大輔命婦⇒光源氏)
■【らるる】…自発の助動詞「らる」連体形
■【折々(をりをり)】…時々。おりおり
■【はべれ】…「あり」の丁寧語(大輔命婦⇒光源氏)
■【かやうの】…このような
※【かやう】…ナリ活用形容動詞「かやうなり」語幹
※【の】…連体修飾格の格助詞
■【御―】…尊敬の接頭語(大輔命婦⇒光源氏)
■【やつれ姿】…お忍び姿
※【やつる】…目立たないようにする
■【を】…対象の格助詞
■【いかで】…どうして~か(いや~ない)
■【かは】…反語の係助詞
■【御覧じつけ】…カ行下二段動詞「御覧じつく」連用形
※【御覧じつく】…お見つけになる。目にとまりなさる
■【む】…推量の助動詞「む」連体形
■【と】…引用の格助詞
■【聞こゆれ】…ヤ行下二段動詞「聞こゆ」連用形
※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(作者⇒光源氏)
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
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「主上」というのは、光源氏の父「桐壺帝」のことです。
大輔命婦は、こんなふうにいろんな女性に手を出そうと、身をやつしてお忍び歩きする光源氏に対して、
「帝はあなたのことを真面目だと思って心配してるのに…」
と、皮肉を言ってるんですね。
ちなみに、大輔命婦は、後宮の女官です。
帝のお手つきの可能性も……。
でも、こうして光源氏の命令にしたがって、宮中を抜け出したりしてるのは、たんに乳母子(めのとご)だから、…というだけではないような気もしますよね。