源氏イラスト訳【末摘花20】梅香
うちとけたる住み処に据ゑたてまつりて、うしろめたうかたじけなしと思へど、寝殿に参りたれば、まだ格子もさながら、梅の香をかしきを見出だしてものしたまふ。
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【源氏物語イラスト訳】
うちとけたる住み処に据ゑたてまつりて、
訳)くつろいだ命婦の部屋でお待ちいただいて、
うしろめたうかたじけなしと思へど、
訳)気がかりでもったいないと思うけれど、
寝殿に参りたれば、まだ格子もさながら、
訳)、寝殿に参ったところ、まだ格子も下ろさぬままで、
梅の香をかしきを見出だしてものしたまふ。
訳)梅の香りの素晴らしいのを眺めていらっしゃる。
【古文】
うちとけたる住み処に据ゑたてまつりて、うしろめたうかたじけなしと思へど、寝殿に参りたれば、まだ格子もさながら、梅の香をかしきを見出だしてものしたまふ。
【訳】
くつろいだ命婦の部屋でお待ちいただいて、気がかりでもったいないと思うけれど、寝殿に参ったところ、まだ格子も下ろさぬままで、梅の香りの素晴らしいのを眺めていらっしゃる。
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■【うちとけ】…カ行下二段動詞「うちとく」連用形
※【うちとく】…気を許す。くつろぐ
■【たる】…完了(存続)の助動詞「たり」連体形
■【住み処(すみか)】…居所。ここでは大輔命婦の部屋
■【に】…場所の格助詞
■【据ゑ】…ワ行下二段動詞「据う」連用形
※【据う】…とどめておく
■【たてまつり】…ラ行四段動詞「たてまつる」連用形
※【たてまつる】…謙譲の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【うしろめたう】…ク活用形容詞「うしろめたし」連用形ウ音便
※【うしろめたし】…気がかりだ
■【かたじけなし】…もったいない
■【と】…引用の格助詞
■【思へ】…ハ行四段動詞「思ふ」已然形
■【ど】…逆接の接続助詞
■【寝殿】…常陸宮邸の中央部分
■【に】…場所の格助詞
■【参り】…ラ行四段動詞「参る」の連用形
※【参(まゐ)る】…「行く」の謙譲語(作者⇒末摘花)
■【たれ】…完了の助動詞「たり」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【格子(かうし)】…格子戸
■【も】…強意の係助詞
■【さながら】…そのまま
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【をかしき】…シク活用形容詞「をかし」連体形
※【をかし】…趣深い。すばらしい
■【を】…対象の格助詞
■【見出す】…外を眺める
■【て】…単純接続の接続助詞
■【ものしたまふ】…いらっしゃる
※【ものす】…代動詞。ここでは「をり」の意
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒末摘花)
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「うちとけたる住み処」というのは、
大輔命婦がふだん住まいをしている離れ部屋をさします。
いったんそこに、光源氏をおとどめ申し上げて、
琴の音色を聞かせようということなのでしょう。
しかし、光源氏はじっとそこにとどまっているような男ではありません。
案の定、寝殿の方へ、足を向けたみたいですね。