源氏イラスト訳【若紫393】万策尽
ただ、「行方も知らず、少納言が率て隠しきこえたる」とのみ聞こえさするに、宮も言ふかひなう思して、
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【源氏物語イラスト訳】
ただ、「行方も知らず、
訳)ただ、「行く方も分からず、
少納言が率て隠しきこえたる」とのみ聞こえさするに、
訳)少納言の乳母が連れていってお隠し申しあげてしまったと」とばかりお答え申し上げるので、
宮も言ふかひなう思して、
訳)父宮もどうしようもないとお思いになって、
【古文】
ただ、「行方も知らず、少納言が率て隠しきこえたる」とのみ聞こえさするに、宮も言ふかひなう思して、
【訳】
ただ、「行く方も分からず、少納言の乳母が連れていってお隠し申しあげてしまったと」とばかりお答え申し上げるので、父宮もどうしようもないとお思いになって、
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■【ただ】…副詞
■【行方(ゆくへ)】…行方。ゆくえ
■【も】…強意の係助詞
■【知ら】…ラ行四段動詞「知る」未然形
■【ず】…打消の助動詞「ず」連用形(連用中止法)
■【少納言】…少納言の乳母
■【が】…主格の格助詞
■【率(ゐ)】…ワ行上一段動詞「率る」連用形
※【率(ゐ)る】…連れて行く
■【て】…単純接続の接続助詞
■【隠し】…サ行四段動詞「隠す」の連用形
■【きこえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」連用形
※【きこゆ】…謙譲の補助動詞(女房達⇒若紫)
■【たる】…完了の助動詞「たり」連体形(連体形止め)
■【と】…引用の格助詞
■【のみ】…強意の副助詞
■【きこえさする】…サ行下二段動詞「きこえさす」連体形
※【きこえさす】…「言ふ」の謙譲語(作者⇒兵部卿宮)
■【に】…順接の接続助詞
■【宮】…若紫の父、兵部卿宮をさす
■【も】…添加の係助詞
■【言ふかひなう】…ク活用形容詞「言ふかひなし」連用形ウ音便
※【言ふかひなし】…どうしようもない
■【思(おぼ)し】…サ行四段動詞「おぼす」連用形
※【おぼす】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒兵部卿宮)
■【て】…単純接続の接続助詞
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おっと!
旧邸に残った女房たち――
若紫がいなくなったのを、
少納言の乳母の責任にしてしまったようですね!
「きこゆ」「聞こえさす」は、謙譲語です。
(本動詞は漢字で、補助動詞は平仮名で記述しています)
少納言乳母や、女房たちの行為には、謙譲語しか用いられていませんね。
そして、宮(兵部卿宮)には、「思す」という尊敬語が用いられています。
このような、身分の違いによる敬語の用いられ方も、いくことができます。