源氏イラスト訳【若紫294】異常
「…人びと、近うさぶらはれよかし」
とて、いと馴れ顔に御帳のうちに入りたまへば、あやしう思ひのほかにもと、あきれて、誰も誰もゐたり。
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【源氏物語イラスト訳】
「…人びと、近うさぶらはれよかし」
訳)「…女房たち、近くでお仕えしなさいよ」
とて、いと馴れ顔に御帳のうちに入りたまへば、
訳)と言って、とても物馴れた態度で若紫との間の仕切りカーテンの内側に入りなさるので、
あやしう思ひのほかにもと、あきれて、
訳)極めてけしからぬ思いがけないことだわと、驚きあきれて、
誰も誰もゐたり。
訳)皆が皆、呆然と座っている。
【古文】
「…人びと、近うさぶらはれよかし」
とて、いと馴れ顔に御帳のうちに入りたまへば、あやしう思ひのほかにもと、あきれて、誰も誰もゐたり。
【訳】
「…女房たち、近くでお仕えしなさいよ」
と言って、とても物馴れた態度で若紫との間の仕切りカーテンの内側に入りなさるので、極めてけしからぬ思いがけないことだわと、驚きあきれて、皆が皆、呆然と座っている。
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■【人びと】…女房たち
■【近う】…ク活用形容詞「近し」連用形ウ音便
■【さぶらは】…ハ行四段動詞「さぶらふ」未然形
※【さぶらふ】…「仕ふ」の謙譲語(光源氏⇒若紫)
■【れよ】…尊敬の助動詞「る」命令形
■【かし】…念押しの終助詞
■【と】…引用の格助詞
■【て】…単純接続の接続助詞
■【いと】…とても
■【馴れ顔(なれがほ)】…もの慣れた態度
■【に】…状態の格助詞
■【御―】…尊敬の接頭語(作者⇒若紫)
■【帳(とばり)】…仕切りの布
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【うち】…中。内側
■【に】…場所の格助詞
■【入り】…ラ行四段動詞「入る」の連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【ば】…順接確定条件(原因・理由)の接続助詞
■【あやしう】…シク活用形容詞「あやし」連用形ウ音便
※【あやし】…きわめてけしからぬ。異常だ
■【思ひのほかに】…ナリ活用形容動詞「思ひの外なり」連用形
※【思ひのほかなり】…思いがけない。意外だ
■【も】…強意の係助詞
■【と】…引用の格助詞
■【あきれ】…ラ行下二段動詞「あきる」連用形
※【あきる】…驚きあきれる。途方に暮れる
■【て】…単純接続の接続助詞
■【誰も誰も(たれもたれも)】…女房達は皆
■【ゐ】…ワ行上一段動詞「ゐる」連用形
※【ゐる】…座っている
■【たり】…完了(存続)の助動詞「たり」終止形
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光源氏は、もの慣れたようすで、
ずいっと「帳(とばり)」の内側に入ってきます。
「帳」は、女性と男性を隔てる、仕切りカーテンのようなもののこと。
その内側に、女性の了承もとらずに入ってくるなんて、
普通では考えられない、異常なことなんです。
なので、女房たちは「あやし」「思ひのほか」と
思ったわけですね。