源氏イラスト訳【若紫287】不快
手をとらへたまへれば、うたて例ならぬ人の、かく近づきたまへるは、恐ろしうて、
ーーーーーーーーーーーーーーー
YouTubeでも「イラスト訳」の動画を作成しています。
見るだけで楽に、古文の速読力が身についてきます。
【源氏物語イラスト訳】
手をとらへたまへれば、
訳)手を捉えなさったので、
うたて例ならぬ人の、
訳)予想外にも いつもと違った人が、
かく近づきたまへるは、恐ろしうて、
訳)このように近くで親しくなさっているのは、恐ろしくて、
【古文】
手をとらへたまへれば、うたて例ならぬ人の、かく近づきたまへるは、恐ろしうて、
【訳】
手を捉えなさったので、予想外にも いつもと違った人が、このように近くで親しくなさっているのは、恐ろしくて、
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
■【手】…若紫の手
■【を】…対象の格助詞
■【とらへ】…ハ行下二段動詞「とらふ」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【れ】…完了の助動詞「り」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【うたて】…異様に。思いとは違う方向に事態が進んでいくときの気持ち
■【例ならず】…いつもと違っている
※【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【の】…主格の格助詞
■【かく】…このように
■【近づく】…近くなる。親しくなる
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【る】…完了の助動詞「り」連体形
■【は】…取り立ての係助詞
■【恐ろしう】…シク活用形容詞「恐ろし」連用形ウ音便
■【て】…単純接続の接続助詞
■【】…可能の助動詞「らる」連用形
■【たる】…完了の助動詞「たり」連体形(準体法)
■【いと】…とても
■【うつくしう】…シク活用形容詞「うつくし」連用形
※【うつくし】…かわいらしい
■【思ひやら】…ラ行四段動詞「思ひやる」未然形
※【思ひやる】…想像する
■【る】…自発の助動詞「る」終止形
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「うたて」というのは、
思いとは違う方向に事態が進行してゆくときの気持ちです。
基本的には、「いやだ」「気味が悪い」などと訳すのですが、
ここは、若紫が、光源氏に抱く気持ちなので、
「予想外に」としました。
もちろん、若紫は、
寝ようと思って光源氏の膝に乗ったわけですから、
「せっかく寝ようと思ってるのに。障らないで!」
という不快な気持ちもあったとは思います。
ですが、無心にも大人しく膝に乗ったわけですから
必ずしも、光源氏を嫌がっているわけではないはずですよね。