源氏物語イラスト訳【若紫182】時々は
「時々は、世の常なる御気色を見ばや。堪へがたうわづらひはべりしをも、いかがとだに、問うたまはぬこそ、めづらしからぬことなれど、なほうらめしう」
と聞こえたまふ。
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【源氏物語イラスト訳】
源氏物語イラスト訳では
一語一語の逐語訳(現代語訳)と
まんが(イラスト)との組み合わせで
難解な古文もビジュアル的にイメージできます。
「時々は、世の常なる御気色を見ばや。
訳)「時々は、世間並みである(妻らしい)あなたのご様子を見たいものだ。
堪へがたうわづらひはべりしをも、いかがとだに、
訳)私が苦しく病んでいましたことをも、せめて『どうですか』とだけでも、
問うたまはぬこそ、めづらしからぬことなれど、
訳)お尋ねくださらないのは、前から珍しくないことであるけれど、
なほうらめしう」と聞こえたまふ。
訳)やはり残念で」と申し上げなさる。
【古文】
「時々は、世の常なる御気色を見ばや。堪へがたうわづらひはべりしをも、いかがとだに、問うたまはぬこそ、めづらしからぬことなれど、なほうらめしう」と聞こえたまふ。
【訳】
「時々は、世間並みである(妻らしい)あなたのご様子を見たいものだ。私が苦しく病んでいましたことをも、せめて『どうですか』とだけでも、お尋ねくださらないのは、前から珍しくないことであるけれど、やはり残念で」と申し上げなさる。
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■【時々】…ときどき
■【は】…取り立ての係助詞
■【世の常】…世間並み
■【なる】…断定の助動詞「なり」連体形
■【御―】…尊敬の接頭語(光源氏⇒葵上)
■【気色(けしき)】…ようす
■【を】…対象の格助詞
■【見】…マ行上一段動詞「見る」未然形
■【ばや】…願望の終助詞
■【堪へがたく】…ク活用形容詞「堪へがたし」連用形
※【堪へがたし】…耐えがたい。苦しい
■【わづらひ】…ハ行四段動詞「煩ふ」連用形
※【煩(わづら)ふ】…病む。病気で苦しむ
■【はべり】…ラ変動詞「はべり」連用形
※【はべり】…丁寧の補助動詞(光源氏⇒葵上)
■【し】…過去の助動詞「き」連体形
■【を】…対象の格助詞
■【も】…強意の係助詞
■【いかが】…どうですか(疑問副詞)
■【と】…引用の格助詞
■【だに】…せめて~だけでも(最低限の希望)
■【問う】…ハ行四段動詞「問ふ」連用形ウ音便
■【たまは】…ハ行四段動詞「たまふ」未然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(光源氏⇒葵上)
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【こそ】…強意の係助詞
■【めづらしから】…ク活用形容詞「めづらし」未然形
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【なれ】…断定の助動詞「なり」已然形
■【ど】…逆接確定条件の接続助詞
■【なほ】…やはり
■【うらめしう】…シク活用形容詞「うらめし」連用形ウ音便
※【うらめし】…残念だ。恨めしい
■【と】…引用の格助詞
■【聞こえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」連用形
※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(作者⇒葵の上)
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
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葵の上と光源氏の夫婦仲は
いくら逢っても、溝が深まっていくばかり…・
光源氏の訴えが、
葵の上の耳に届くのでしょうか…?