源氏物語イラスト訳【若紫177】殿にも
殿にも、おはしますらむと心づかひしたまひて、久しく見たまはぬほど、いとど玉の台に磨きしつらひ、よろづをととのへたまへり。
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【源氏物語イラスト訳】
源氏物語イラスト訳では
現代語訳とイラストをあわせて読解していくことにより
大学受験の古文速読トレーニングとなります。
殿にも、おはしますらむと心づかひしたまひて、
訳)左大臣邸でも、(光源氏が)いらっしゃるだろうと心構えをしなさって、
久しく見たまはぬほど、
訳)長くご覧にならない間に、
いとど玉の台に磨きしつらひ、
訳)ますます玉の台のように磨き上げ飾り立て、
よろづをととのへたまへり。
訳)すべてのことをきちんと準備なさっていた。
【古文】
殿にも、おはしますらむと心づかひしたまひて、久しく見たまはぬほど、いとど玉の台に磨きしつらひ、よろづをととのへたまへり。
【訳】
左大臣邸でも、(光源氏が)いらっしゃるだろうと心構えをしなさって、長くご覧にならない間に、ますます玉の台のように磨き上げ飾り立て、すべてのことをきちんと準備なさっていた。
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■【殿(との)】…左大臣邸のこと
■【に】…場所の格助詞
■【も】…強意の係助詞
■【おはします】…「来」の尊敬(大殿邸の人々⇒光源氏)
■【らむ】…現在推量の助動詞「らむ」終止形
■【と】…引用の格助詞
■【心づかひ】…心配り。配慮
■【し】…サ変動詞「す」の連用形
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒大殿邸の女たち)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【久しく】…シク活用形容詞「久し」連用形
※【久(ひさ)し】…長い
■【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
■【たまは】…ハ行四段動詞「たまふ」未然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【ほど】…間。辺り
■【いとど】…いっそう。ますます
■【玉の台に】…玉の台のように
※【玉の台(うてな)】…りっぱな御殿
■【しつらひ】…ハ行四段動詞「しつらふ」連用形
※【しつらふ】…飾り付ける
■【よろづ】…万事。すべて
■【を】…対象の格助詞
■【ととのへ】…ハ行下二段動詞「ととのふ」連用形
※【ととのふ】…準備する。
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒大殿邸の女たち)
■【り】…完了(存続)の助動詞「り」終止形
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「たまふ」という尊敬語があるので、
左大臣邸で準備に心を尽くしているのは
身分の高い女たちです。
葵の上は、光源氏のためにこんな心配りをするとは思えないので…
おそらく、準備を手配しているのは
左大臣の正妻だと思われます。