【空蝉31-2】「伊予の湯桁」とは?
源氏物語イラスト訳のあいです
イラスト解釈では、イラスト訳で伝えられなかった文法事項や背景などを、随時お話ししています。
まだまだ拙いブログですが、少しでもお役に立てる記事にしていきたいと思います。
では今日も、一気に行ってみましょぉ~♪
ヽ(○・▽・○)ノ゙
これまでのあらすじ
天皇(桐壺帝)の御子として生まれ、才能・容姿ともにすぐれていたにもかかわらず、亡母(桐壺更衣)の身分の低さにより臣籍降下して源氏姓を賜った光源氏。
ただ今、「3.空蝉(うつせみ)」の巻です。光源氏は、紀伊守邸での方違えの際、そこで寝泊まりしていた伊予介の若妻(空蝉)と強引に契りを結んでしまいます。中流階級で凜(りん)とした空蝉に心惹かれた光源氏は、弟の小君を手なずけ、再会を取りつけようとしますが、空蝉は応じません。再び紀伊守邸を訪れ、夜這いをかけようと思っても、空蝉は身を隠してしまいます。光源氏は、小君を通じて、空蝉と逢う機会を執拗に求め続けます。とうとう光源氏は、紀伊守のいない時を見計らい、屋敷に忍び込むことに成功し、空蝉が義娘の軒端荻(のきばのおぎ)と碁を打っている様子を垣間見ます。
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今回の源氏物語
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伊予の湯桁もたどたどしかるまじう見ゆ。すこし品おくれたり。
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☆ 「伊予の湯桁」とは ☆
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【連語】
…物の数が多いことのたとえ
(伊予の道後温泉は湯桁の数が多いので)
*「大辞林第三版」より
こういう、一般教養を超えた知識は、
古文の入試問題では、注釈がついていることが多いです。
だから覚えなくていい
…というわけではなく…
何が言いたいか、という用例の意図や、
早稲田の現古融合問題などの例証として
出題される可能性もあります。
いろいろな古文常識のパターンに触れ、
教養として学ぶことも大切だと思います。
(o´・∀・`o)♪
【名詞】
…旧国名。南海道六か国の一つ。今の愛媛県。予州(よしゆう)
湯桁(ゆげた)
【名詞】
…湯船のまわりの桁(けた)。また、湯船
*「学研全訳古語辞典(weblio古語辞典)」より
愛媛県ってことは…道後温泉でしょうか?
ヽ(*'0'*)ツ
軒端荻の父、伊予介の任国である伊予国にある
道後温泉の湯桁(湯船を角材で格子状に区切ったもの)は、
数が多いことで有名だったようです。
後世の源氏注釈書によると、
藤原定家『体源抄』(鎌倉:源氏注釈書)
伊予の湯の湯桁の数は左八つ右は九つ中は十六
四辻善成『河海抄』(南北朝:源氏注釈書)
…などの当世の歌謡を念頭に、
数の多さをその詩的な「伊予の湯桁」という表現に
たとえたのでしょう。
この「伊予の湯桁」の元歌は、
「雑芸催馬楽」の1(『體源抄』(室町時代の楽書)に収録 )
※三好恭治先生の歴史エッセイ「熟田津今昔」を参照させていただきました。
これが当時流行ってたらしく、
「数が多い」イメージをもつ「伊予の湯桁」というフレーズと、
「軒端荻=伊予介の娘」のイメージとを
重ねたセリフということです。
(*。◇。)ハッ!
や、やはり、伊予介と血のつながった軒端荻は、
意識がそっちに行ってしまうのでしょうか…?
(;´▽`A``
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