営業とマーケティングのAI化を支援している、AIリモートワーカーの佐々木です。
前回は、電話をかける順番を機械に決めてもらった話でした。今日はその続きで、予告していた「まったく売れなくなった時期」の話です。
人材系のスタートアップに入って、3ヶ月目で売上が社内のトップになりました。
月の受注額は、契約の総額でだいたい800万円ほど。
そして4ヶ月目あたりから、ぱたっと売れなくなります。
やっていることは何も変えていません。同じ本数の電話をかけて、同じ話し方をしていました。
それなのに、返ってくる言葉が「今は間に合っています」ばかりになる。
運が悪いだけだと思っていましたが、2ヶ月続いてさすがにおかしいと気づきます。
理由は、あとから考えると単純でした。
最初の3ヶ月で売れていたのは私が上手かったからではなく、もう困っている会社に当たっていたからです。
そういう会社を一周して刈り取ってしまうと、リストに残るのは「今は困っていない会社」だけになります。
そこに、それまでと同じ電話をかけていたわけです。
当時の私が電話で言っていたのは、「うちのサービスはこういうものです。採用で困っていたら使ってみてください」でした。
今読むと恥ずかしいのですが、これは全部こちらの都合の話なんですよね。
困っている人には刺さるけれど、まだ困っていない人には何も残らない。
何が悪いのかを本気で考えたとき、社内で何年も続けて数字を出している人たちを見渡してみました。
共通していたのは話し方でも根性でもなく、会話の中心がずっとお客様側にあったことです。
そこから、聞き方を変えました。
たとえば「営業を2人採用したい」と言われたとします。
前の私なら、営業の候補者を2人お持ちします、で終わっていました。
そこを、なぜ2人なのか、その2人が入ったら何がどうなる予定なのか、というところまで踏み込んで聞くようにしました。
実際にあったのは、「人が足りない」のではなく、入った営業が売れるようになる仕組みが社内にないという状態でした。
それが分かってからは、こうお伝えするようになりました。
「営業を2人ご紹介しても、売れなければ同じことが起きます。それなら、売れる型を社内に作れる方をまず1人入れませんか」
でも、根っこのほうを一緒に考えた会社さんからは、あとで別の会社を紹介していただけるようになりました。
枯れたと思っていたリストの外側から、話が来るようになったんです。
増やすべきだったのは、電話の本数ではありませんでした。
まだ困っていない会社の中から商談を作れるかどうかと、その商談が決まるかどうか。動かす場所を間違えていました。
この話は、今のAI導入の仕事にそのまま効いています。
深く聞くには、事前に相手を調べる時間が要ります。当時の私はそれを気合いでやっていました。
今は、商談が決まった時点でその会社の公開情報を機械が調べ、困りごとの仮説と提案の骨子まで作って手元に届くようにしています。自社では30分かかっていた準備が3分になりました。
浮いた時間で商談を増やす話に聞こえるかもしれませんが、価値はそこではありません。
相手のことを考える時間だけが手元に残ることのほうです。
調べる作業は機械のほうが速い。何を聞くかを決めるのは、人にしかできません。
売れなくなった2ヶ月がなかったら、たぶん今も自分の商品の話ばかりしていたと思います。
次回は、そこから何年も経って、ある上場企業で営業組織のAI化を任されたときの話を書きます。
現場に「AI化したい業務はありますか」と聞いて回って、みごとに空振りした話です。