営業とマーケティングのAI化を支援している、AIリモートワーカーの佐々木です。

 

前回の最後に「AIに任せた仕事の検品を、誰がどうやるか」を書くと予告したので、今日はその話です。

 

AI化の相談を受けていると、途中で必ずこの質問が出ます。

「AIが作ったものは、結局だれがチェックするんですか」

 

よくある答えは「マネージャーが全部見る」です。

でも、これはだいたい続きません。

議事録も、お礼メールも、提案資料も、AIが作る量は人が書いていた頃より増えます。それを1人が全部読もうとすると、浮いたはずの時間がそのまま確認作業に吸われて、最後は誰も読まなくなります。

 

私が上場企業で営業とマーケティングのAI化を進めていたときに落ち着いた形は、2つに分けることでした。

 

ひとつめ。事実の検品は、その場にいた人がやる。

商談の要約やお礼メールの下書きが届いたら、確認するのは商談に出ていた本人です。決まったこと、宿題、次の日程が合っているか。その場にいた人なら、読めばすぐ分かります。上司が読んでも、合っているかどうかは分かりません。

 

ふたつめ。マネージャーは全部を見ない。AIが「ここ」と指した場所だけを見る。

商談の録画を自動で解析して、説明が足りていなさそうな箇所が見つかったら、Slackでマネージャーに知らせるようにしました。

マネージャーは、録画のその箇所だけを見に行く。

本当に足りていなければ、お客様に追加の資料を送るか、次の商談に同席する。

 

この形にして気づいたのは、検品の目的が「AIのミス探し」ではなかったことです。

 

マネージャーが全件の録画を見ていた頃は、時間が足りず、結局は大きな案件だけを見ていました。小さな案件で説明が抜けていても、気づくのは失注したあとです。

知らせが来るようになってからは、説明の抜けを、お客様が迷っているうちに埋めにいけるようになりました。

見ているのはAIの出来ではなくて、お客様がどこで引っかかっているか、のほうでした。

 

その会社では、チーム全体の受注率が入社時の8%から平均45%まで上がりました。もちろんこの仕組みだけの成果ではありません。ただ、「抜けたまま次に進む商談」を減らしたことは、確実にその一部でした。

 

もうひとつ付け加えると、別の支援先では、AI化を組むのと同時に社内向けの説明動画を作りました。動画を見れば、現場の方が自分でAIの動きを直せるようにするためです。

検品で「ここが違う」と気づいた人が、そのまま直せる。気づくたびに私に連絡が来る状態だと、私が抜けた瞬間に止まってしまいます。

 

だれが検品するか、の答えをまとめると、こうなります。

事実はその場にいた人が見る。全体はAIが指したところだけ人が見る。直すのは、気づいた人自身。

 

AIに任せるというのは、人が見なくてよくなることではなくて、人が見る場所が変わることなんだと思っています。

 

次回は、そのお客様が引っかかっていた「説明の抜け」は、そもそもどうやって見つけていたのか。トップセールスの商談録画を全部AIで読んで、話し方を型にしていった話を書きます。

 

今日書いたようなことを、動画と練習問題にして「営業マーケAIスクール」に置いています。個人の方は登録なし・無料で全部見られます(会社で使う場合だけ有料)。自分の職種を選ぶと、今日やる1つとプロンプトが出ます。

営業マーケAIスクール(個人は無料)

 

月・水・金の朝に、こういう現場の話を書いています。フォローしていただくと次の話が届きます。

営業とマーケティングのAI化を支援している、AIリモートワーカーの佐々木です。

 

今日は、AIの話から少し離れて、マネジメントで長く引っかかっていたことと、そこから作ってしまったものの話です。

 

営業組織を運営していたころ、私が使っていたのは「ビジョンから逆算する」型でした。

この仕事の先に世の中がこう変わる、と絵を描いて、そこから逆算して毎日の行動を積み上げる。売上は、その結果としてついてくる。

 

義務感や使命感で動くタイプの人には、これがよく響きました。

ただ、全員には響かなかった。

 

響かない人たちを見ていて気づいたのは、モチベーションの源が「先」ではなく「今」にあることでした。

今日、楽しくやれているか。目の前のお客様の役に立てているか。感謝されたか。

こちらの実感のほうが、遠くのビジョンよりずっと強く効いていました。

 

私が見てきた範囲では、女性のメンバーが多いチームでこの傾向をとくに強く感じました。人によるので決めつけはしませんが、「何かから逆算してストイックに習慣を組み立てる」というやり方が、チームの半分には合わない、という事実だけははっきりしていました。

 

そこで、逆算型を押しつけるのをやめました。

 

代わりに気づいたのは、身近なところにあるきっかけです。

周りを見ると、神社巡りや占いを日常的に楽しんでいる人が、思った以上に多かった。しかも「今日はこう出たから、これをやってみよう」と、その日の行動にちゃんと反映している。

 

きっかけが軽いから、毎日続く。毎日続くから、行動が少しずつ変わる。

ビジョンから逆算する型と比べると、入口の重さがまったく違います。

 

そもそも、稲盛和夫さんのような生き方を目標に置いて、毎日を自分で律し続けられる人は、世の中にそれほど多くありません。私もできませんでした。

できたのは、朝に小さなきっかけをもらって、今日1つだけ変えることでした。

 

ここまで考えて、作ってしまいました。

「五段の暦(ごだんのこよみ)」という暦のサイトです。

 

朝、生年月日を入れると、今日の運勢とおみくじ、今日の一手が出ます。今年の吉日と、3分の学び動画が1日5本。登録はいらず、無料です。生年月日は端末の中にだけ残り、どこにも送りません。

 

私は占い師ではないので、文章は人の鑑定ではなく、暦と生年月日から手順どおりに計算で出るものです。だから「当たるか」ではなく、自分の決めごとと並べて、あとから答えあわせをする道具として作りました。

 

もう1つ、驚いたことがあります。

このサイト、AIと組んで2日で作りました。エンジニアではない営業出身の1人で、781ページです。

とはいえ一発では終わらず、最初の画面は「ダサい」と言われて作り直し、六曜の計算が月によって1日ずれているのを見つけて直し、生年月日の入力欄が日を選べない不具合をテスターに指摘されて直しました。

速く作れる。でも、何が変かを見る目は人の側に残る。営業の現場にAIを入れるときと、まったく同じでした。

 

もともとは、自分が占いに興味を持って、勉強のために作ったものでした。改善を重ねるうちに、自分が毎日見に行きたくなる出来になってきたので、まずは多くの人に体験してもらおうと無料で公開しています。

 

逆算型が合わない人を、どう動かすか。

私の答えは「動かさない。動きたくなる小さなきっかけを、毎朝置く」でした。

 

次回は、AIに任せた仕事の「検品」を誰がどうやるか、という話を書く予定です。

 

今日書いた暦サイトはこちらです。朝、生年月日を入れて今日の一手を1つ受け取り、夜にやったかどうかだけ振り返る。まずはそれだけで十分です。

五段の暦(ごだんのこよみ)・無料・登録なし

 

月・水・金の朝に、こういう現場の話を書いています。フォローしていただくと次の話が届きます。

営業とマーケティングのAI化を支援している、AIリモートワーカーの佐々木です。

 

前回、稟議の比較資料までこちらで作った話を書きました。今日はその同じ案件の、もっと手前の話です。

 

SFAやCRMを売っていた頃、ある大きな会社の営業部とお付き合いが始まりました。

その会社には、すでにSalesforceが入っていました。

ただ、部署の仕事に合わせた設定がされていなくて、現場ではほとんど使われていない。

みなさん、自分たちで作ったスプレッドシートで案件を管理していました。

 

営業としては「今のやり方には無理があります、うちのツールなら楽になります」と説明したくなる場面です。

 

でも、それはやめました。

そのスプレッドシートは、現場の方が仕事の合間に工夫して作ってきたものです。

そこに外の人間が来て「これでは限界です」と言っても、たぶん素直には聞けない。私が逆の立場でもそうです。

 

それで、売り込む代わりに、そのスプレッドシートの手直しを手伝うことにしました。

列を整理して、入力のルールをそろえて、見たい数字がすぐ出るようにする。

「スプレッドシートでも、ここまではできますよ」というところまで、一緒に作り込みました。

 

作り込んでいくと、自然と壁に当たります。

ひとつは、案件ごとに「次に何をするか」を決めて、漏れなく追いかけること。

もうひとつは、案件の状況が変わるたびに動く粗利を、その場で見ること。

この2つは、どれだけ工夫してもスプレッドシートではかなり苦しい。

 

それを私が説明する必要はありませんでした。

一緒に手を動かしていた担当者の方が、自分で「ここから先は無理ですね」と気づいてくれたからです。

 

人から言われた限界と、自分で触って分かった限界は、重さがまったく違います。

そこから話が変わりました。

担当者の方が「この話、部長にもしてもらえませんか」と、上の方を紹介してくださったんです。

こちらからお願いしたわけではありません。

 

いまAI導入のお手伝いをしていても、同じことを思います。

いきなり新しい仕組みを持ち込むより、いま使っている表やメールの流れを一緒に見て、どこで手が止まっているかを探すほうが、ずっと早く前に進みます。

その会社の人が毎日触っているものには、その会社の仕事の癖が全部入っているからです。

 

売る前に、相手が今使っているものを良くする。

遠回りに見えて、あの案件ではそれがいちばんの近道でした。

 

次回は、紹介していただいた部長さんの話です。以前Salesforceを入れたときに「現場が入力してくれなかった」という苦い経験をお持ちで、そこからどう話を進めたかを書きます。

 

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前回の最後に「担当者の方が社内の会議で説明しなくて済むように、資料を作り込んでいった話」を書くと予告したので、今日はその話です。

 

SFAやCRMを大きな会社に売っていた頃、いちばん苦手だったのが「稟議の結果待ち」の時間でした。

担当者の方も部長さんも前向き。あとは経営会議で通るかどうか。

その会議に、私は出られません。祈るように連絡を待って、落ちる。そういうことが何度もありました。

 

同じ部署に、大きな案件を当たり前のように決めてくる先輩がいました。

ある日、その先輩の手元を見せてもらって驚きました。お客様の会社の組織図が描いてあったんです。

誰が誰と近いか。どの部長さんが過去のプロジェクトで結果を出して、いま発言力を持っているか。

「次はこの人に話を通しておこう」と、地図を見ながら一人ずつ合意を取っていく。

 

先輩にとって、経営会議は「通るかどうかを待つ場所」ではありませんでした。

中身はもう決まっていて、それを正式に確認するだけの場所。

結果を待つのではなく、会議の前に終わらせておく。これが仕事なんだと、そのとき初めて分かりました。

 

それから自分でも真似をしました。

ある大きな案件では、経営会議で「他社と比べてどうなのか」を示す資料が必要でした。

本来は担当者の方が、通常業務の合間に作る資料です。

 

そこで、その比較資料もこちらで作って渡しました。

比べる項目は、その会社が営業会議で本当に見たい数字に合わせて、先に決めておきました。

ロジックで判断する取締役には数字で、ビジョンで決める社長には「5年後の営業の姿」で。読む人ごとに、伝え方も変えました。

 

当日の経営会議は、拍子抜けするくらい静かに通りました。

担当者の方がやったのは、資料を会議に出すことだけです。

 

ただ、これにも弱点がありました。

決裁者向けの1枚のまとめと、費用対効果の表。1社分つくるのに30分はかかります。

大きな案件には時間をかけられても、全部の案件にはとても手が回りませんでした。

 

いま自分の会社では、この1枚を商談の記録から自動で作っています。

30分かかっていたものが、1分です。

私がやるのは、数字が事実と合っているかを見て、直すところだけ。

 

やっていることは、あの頃の先輩と同じです。

担当者の方に「頑張って通してください」とお願いするのではなく、通るところまでこちらで用意しておく。

違うのは、それが一部の大きな案件だけでなく、全部の案件でできるようになったことくらいです。

 

稟議に落ちる理由の多くは、中身より「会議の前に準備が終わっていなかった」ことだった気がしています。

 

次回は、同じ案件のもっと手前の話。いきなり売り込まずに、お客様が使っていたスプレッドシートの手直しから手伝った話を書きます。

 

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前回は、AIに任せた仕事が3週間だまって失敗していた話を書きました。

今日は予告していたとおり、ずっと昔の話です。自分の言葉ではどうしても伝わらなかったことが、本を1冊渡しただけで伝わった話を書きます。

 

人材系のスタートアップで、営業を見るようになった頃のことです。

 

チームには、他社で実績を出して転職してきた方が何人もいました。年齢も自分より上の方が多い。

売り方の型は自分の中で固まっていました。お客様が言った要望をそのまま受け取らず、その奥にある本当の困りごとまで聞いてから提案する、という型です。自分自身が一度まったく売れなくなって、そこでようやく身につけたものでした。

 

それを、そのまま伝えようとしました。

 

「要望をそのまま受けないでください」

「もう一段深く聞いてから提案してください」

 

伝わりませんでした。

正確に言うと、その場では「わかりました」と言ってもらえます。でも次の商談の録音を聞くと、何も変わっていない。

 

いま振り返れば当たり前で、年上で実績もある方からすれば、これは「自分のやり方を、年下の上司に否定された」という話でしかないんです。

しかも自分は、なぜそれが効くのかを言葉にできていませんでした。「自分はこうやって復活したから」以上の説明ができない。それは根拠ではなく、ただの体験談です。

 

それで、説明するのをやめました。

 

代わりに、営業の本を1冊選んで、チーム全員に渡しました。自分が大事にしていることが、自分より何倍もうまく言語化されている本です。

 

読んでもらったあとは、こう言うだけで済むようになりました。

 

「あの本に書いてあった、要望の奥を聞くところ。あれを今回の商談でやってみませんか」

 

これが、通るんです。

 

同じ内容なのに、通る。自分と相手の間に本が1冊挟まると、上司対部下の話ではなくなって、著者が書いた型を2人で見る話になるからだと思います。年上の方も、自分のやり方を否定されたことにならない。

 

結果として、そのあとトップセールスに育つメンバーを何人も出せました。自分が一番うまく説明できていない人間だったのに、です。

 

この話を思い出したのは、いまのAI導入でまったく同じことが起きているからです。

 

「AIを使ってみてください」と言っても、現場は動きません。これは怠けているのではなくて、言われた側からすると、今までのやり方を否定された上に、何をすればいいのかが分からないからです。あの頃の自分の伝え方と同じです。

 

動くのは、型が外から渡されたときでした。

この場面で、この文章を、こう打ち込む。そこまで形になっていると、「やってみますか」で済みます。判断を相手にさせない。持っていくのは意識ではなく、手順です。

 

だから、お客様のところへ行くときも、こちらで先に型を作って持っていくようにしています。うまく説明できる人だけが広められる仕組みは、その人が抜けたら終わりますから。

 

自分の言葉で伝わらないなら、伝わる形に外注すればいい。

あのとき本に助けてもらったことを、いまはAIの手順書でやっているだけなのかもしれません。

 

次回は、担当者の方が社内の会議で説明しなくて済むように、こちらで資料を作り込んでいった話を書きます。

 

今日書いたようなことを、動画と練習問題にして「営業マーケAIスクール」に置いています。個人の方は登録なし・無料で全部見られます(会社で使う場合だけ有料)。自分の職種を選ぶと、今日やる1つとプロンプトが出ます。

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月・水・金の朝に、こういう現場の話を書いています。フォローしていただくと次の話が届きます。

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前回は、支援した3社ともに最初のやり方を外していた、という話を書きました。

 

今日は他社さんではなく、自分の会社の話です。

 

うちは、手順が決まっている19の業務をAIにやらせています。商談前のリサーチ、議事録、フォローメール、CRMへの入力、記事づくり、日々の数字の集計。全部を人が1回ずつやると14時間55分かかる仕事が、いまは合計54分で終わります。

 

数字だけ見ると威勢のいい話なのですが、ここまで来るのにいちばん効いたのは、自動化そのものではありませんでした。

 

「本当に動いたのか」を、毎朝機械に確認させること

 

地味です。びっくりするほど地味です。

 

なぜそこに行き着いたか、正直に書きます。

 

この8月、記事の下書きを自動で保存する仕組みが、8本ぶん失敗していたことがありました。エラーも出ず、記録上は「成功」。でも実際には、下書き一覧のどこにも無い。気づいたのは3週間後でした。

 

同じ頃、朝の投稿が3日続けて二重に出ていました。別の経路がすでに送り終えていたのに、こちらはそれを知らずにもう1本出していた。

 

極めつけは、パソコンの画面がロックされているとキー操作が届かず、それに頼っていた12本が同じ日にまとめて止まる、という構造が見つかったことです。

 

この12本の中には、お問い合わせをいただいた直後にお送りする一次返信のメールも入っていました。人がやれば15分、いまは1分で出るようにしてあるものです。

 

ここが黙って止まるということは、問い合わせてくださったお客様を、こちらが黙ってお待たせするということです。

 

何分浮いたかより、こちらのほうがよほど怖い話でした。お客様からすれば、AIが止まっていたかどうかなんて関係がなくて、「連絡が来ない会社」でしかありません。返信が翌日になれば、その時点で他社さんに聞きに行かれても文句は言えない。商談の数は、そういうところで静かに減ります。

 

それで、足したのは3つだけです。

 

ひとつ、出す前に「もう出していないか」を確認する。

ふたつ、やったはずのものが本当に残っているか、翌朝に突き合わせる。

みっつ、黙って失敗したときに、こちらへ知らせる。

 

短縮できる時間は1分も増えません。見栄えもしません。でも、これを入れてからようやく「任せた」と言えるようになりました。

 

AI導入のご相談をいただくと、たいてい「何を自動化できますか」から始まります。そこももちろん大事なのですが、うちの実感としては、動かしたあとに失敗に気づく仕掛けを持っているかどうかで、半年後に残っているかが決まります。

 

浮いた時間を何に使うか、を考える前に。

 

浮いたつもりの時間が、本当に浮いているか。まずそこからでした。

 

次回は、自分の言葉ではどうしても伝わらなかった営業の型が、本を1冊渡しただけで年上のメンバーに伝わった話を書きます。

 

AIリモートワーカー|営業・マーケのAI導入支援

営業とマーケティングのAI化を支援している、AIリモートワーカーの佐々木です。

 

前回まで、2社続けて最初のやり方を外した話を書きました。

現場に「AI化したい業務はありますか」と聞いて回って空振りした話と、ご要望どおり研修から始めて手が止まった話です。

 

聞いても止まる。教えても止まる。

じゃあ次はどうするかと考えて、3社目では自分で決めて持っていきました。それで今度は、別の止まり方をしました。

 

 

「これからの営業はこうあるべき」を設計して持っていった

 

病院向けにサービスを出している、医療DXの会社でした。週2回、1日5時間の関わり方です。

 

私は入る前に、海外で先に進んでいる営業のやり方をひと通り調べました。

そのうえで、経営の数字から逆算しました。受注率を上げるには商談のどこに手を入れるのか、そこをどう自動で回すのか。

 

正直、設計そのものは悪くなかったと思っています。実際、あとから同じ中身が動き出すので。

 

でも、最初は誰も使いませんでした。

 

 

自分のやり方を持っている人ほど、乗ってこない

 

理由ははっきりしていて、営業の方それぞれに、自分のやり方への強いこだわりがあったからです。

 

成績を出している人ほどそうでした。当たり前です。その順番で、その言い回しで、その資料の出し方で、結果を出してきた実績があるわけですから。

 

そこに外から来た人間が「これからの営業はこうあるべきです」と、完成した形を持ってきた。

 

中身が正しいかどうかは、このとき関係なかったんだと思います。

自分のやり方を否定された、という感触だけが残る。

 

1社目は現場に聞きすぎて止まり、2社目は先に教えすぎて止まり、3社目は自分で決めすぎて止まりました。きれいに3回とも違う外し方です。

 

 

聞く質問を変えた

 

やり直すとき、また現場に聞きに行きました。ただ、1社目と同じ質問はしませんでした。

 

「AI化したい業務はありますか」と聞くと、今のやり方を少し速くする宿題が返ってきます。それで1社目は動きませんでした。

 

今回聞いたのは、こちらです。

 

「あなたのやり方を、どうAI化してほしいですか」

 

業務を差し出してくださいではなく、こだわりを預からせてくださいという聞き方です。

返ってきたものを、そのまま形にして返しました。先に信頼を作る。設計を通すのは、そのあとでよかった。

 

 

結局いちばん使われたのは、決裁者に見せる動画でした

 

こだわりの強い方たちが自分から使い出したものが、ひとつあります。

 

商談のあと、その会社専用のページを作って、7分ほどの説明動画を置く。担当者さんはそのURLを社内に転送するだけ、という形にしました。

 

決裁者の方の再生率が約60%。同じ内容を資料で送ったときの閲覧率は約30%でした。

 

中身は同じです。違ったのは共有のしやすさだけ。

営業にとっては「担当者は乗り気なのに上が動かない」が消える話なので、ここはこだわりと衝突しませんでした。

 

そこから先は、週に1つずつ仕組みを足していくペースで進みました。合わせて、社内向けの研修動画も作りました。私がいなくなったあと、自分たちで直せるようにするためです。

 

 

3社とも、最初のやり方は外している

 

3社目でようやく分かったのは、順番の前にもうひとつあるということでした。

 

正しい設計は、信頼のあとにしか通らない。

 

だから今は、先にその人のこだわりを聞くところから始めています。遠回りに見えて、これがいちばん早いです。

 

次回は、自分の会社で決まった手順の19業務を14時間55分から54分にしたときに、いちばん効いた地味な1つの話を書きます。

 

AIリモートワーカー|営業・マーケのAI導入支援

営業とマーケティングのAI化を支援している、AIリモートワーカーの佐々木です。

 

前回予告した3社目の話の前に、今日はひとつお知らせを。

 

「営業マーケAIスクール」という教材を公開しました。全11章56レッスン、合わせて11時間30分ほどあります。

 

 

作りはじめたきっかけは、前回の失敗でした

 

前回書いたのは、ご要望どおりAI研修から始めたら「何をAI化すればいいか分からない」で止まってしまった話です。

 

道具の使い方は教えられる。でも、その道具を自分の一日のどこに当てるかは、仕事の側にしか答えがない。あれは、けっこう痛い勉強でした。

 

総務省の「令和8年版 情報通信白書」を見ると、営業・販売の仕事で生成AIを使っている人は59.6%。ところが、効果を実感できている人は37.5%まで落ちます。

 

使っていないのではなくて、当て先が見つかっていない。あのフィンテックの会社で起きたことが、そのまま数字に出ているように見えました。

 

 

「見終わった」で終わらない形にしたかった

 

なので今回は、中身より先に「終わり方」を決めました。

 

1レッスン見終わるたびに、「自分の仕事のどこで使うか」を1つだけ選んでもらうようにしています。選択肢から選ぶだけなので、5秒で終わります。

 

この5秒がないと、たぶんまた「勉強になりました」で終わってしまう。選んだぶんは溜まっていって、称号が付きます。

 

毎日のぶんは「今日のAIドリル」として3問、2分で終わる量にしました。1問解けばその日は達成で、順位も出しません。

 

毎日続けてもらうこと自体が目的ではなくて、当て先を1つ思い出してもらうのが目的だからです。解くと、その日のAIニュースが3本開きます。ご褒美というより、明日の当て先の種のつもりで置きました。

 

それから、職種別のプロンプトを480本。16職種×30業務です。

 

正直に言うと、480本を読む人はいないと思っています。想定している使い方は、自分の職種を開いて、今週やる業務に当たる1本だけコピーする。それで十分です。

 

入口には30秒の現在地チェックも置きました。どこから見ればいいか分からないまま閉じてしまうのが、いちばんもったいないので。

 

 

個人の方は無料、会社で使う場合は有料にしました

 

個人で使うぶんは、全部無料です。登録もいりませんし、期限もありません。

 

有料にしたのは、会社として社員に使ってもらう場合だけです。こちらは御社専用の受講環境と、管理する画面をお渡しします。

 

線をここで引いた理由は、わりと単純です。配ったあとに誰がどの業務に当てたのかが分からない、というのが、私が入った会社でいつも止まっていた場所だったからです。

 

教材を配ること自体は、どの会社にもできます。でも当て先が見えないままだと、あのフィンテックの会社と同じところに戻ってしまう。だから、そこが見える形を会社向けに用意しました。

 

ちなみに自分の会社では、決まった手順の19業務を14時間55分から54分にしました。特別なことはしていなくて、当て先を1つずつ潰していっただけです。

 

 

会社員の方が、ひとりで使うのも無料です

 

ここは誤解されそうなので、はっきり書いておきます。

 

会社にお勤めの方が、自分ひとりの仕事のために使うぶんには無料です。上司への相談も、経費の申請もいりません。

 

明日の自分の仕事が1つ楽になったら、それでこの教材の役目は果たせていると思っています。

 

次回は、予告していた3社目の話(数字から逆算して進めたら現場に定着しなかった話)を書きます。

 

営業マーケAIスクール by AIリモートワーカー|個人は無料・法人は有料

営業とマーケティングのAI化を支援している、AIリモートワーカーの佐々木です。

 

前回は、現場に「AI化したい業務はありますか」と聞いて回って空振りした話を書きました。

今日はその反省を持ったまま別の会社に入って、今度は反対側から止まった話です。

 

「まず研修からお願いしたい」と言われた

 

融資のマッチングを運営しているフィンテックの会社でした。

 

最初の打ち合わせで言われたのは、こういうご要望です。

「まず社員にAIを覚えてもらいたい。研修から始めてほしい」

 

私は素直にそのとおりにしました。

前の会社では現場に聞いて外していたので、経営の側から出た要望を断る理由がありませんでした。

 

研修そのものは、いい時間でした。道具の使い方、指示の出し方、やってはいけないこと。質問もたくさん出ました。

 

 

数週間後、誰も何も作っていなかった

 

しばらくして様子を見に行くと、業務は何ひとつ変わっていませんでした。

 

理由を聞いて、返ってきたのはこの一言です。

 

「何をAI化すればいいか、分からないんです」

 

使い方は分かった。でも、自分の一日のどこに当てればいいのかが分からない。

 

あとから考えれば当たり前でした。研修で教えられるのは道具の側のことだけです。

その道具をどこに当てるかは、仕事の側にしか答えがない。

 

前の会社では、現場に聞いて「今のやり方を速くする宿題」だけを集めて止まりました。

この会社では、先に道具を渡して「当て先がない道具」だけが残って止まりました。

聞いても止まるし、教えても止まる。同じ穴の両側にいたわけです。

 

 

順番を入れ替えた

 

そこで研修をやめる代わりに、順番を後ろにずらしました。先に、動くものを1つだけ作って見せることにしたんです。

 

選んだのは、新規の提携先に営業が出す最初のメールです。

1社ずつ調べて書くと時間がかかるので、実際にはみんな似たような文面を送っていました。

 

それを、相手の会社の公開情報を自動で調べて、その会社の話として書き分ける形に変えました。

大事なのは速くなったことではありません。一部の相手にしかできなかった「1社ごとの文面」を、全件に出せるようになったことです。

 

返信率は2倍、そこからのアポ率は1.5倍になりました。

 

見せたときに言われたのが、この言葉でした。

 

「すでに自動化は試していたけれど、自社にこんなにAI化できる業務があるとは気づかなかった」

 

 

同じ研修を、もう一度やった

 

そのあとで研修をやり直しました。中身はほとんど同じで、違ったのは質問です。

1回目は「これはどう書けばいいですか」という道具の質問ばかり。2回目は「自分の担当の、あの作業も同じようにできますか」に変わっていました。

 

当て先を1つ見たあとだと、人は自分で次の当て先を探し始めます。

 

数字が動き出したのは、そこから1ヶ月ほどでした。

新規の提携社数が月10件から月20件に、商談が決まる率が10%から20%になりました。

 

最後はマーケティング担当の方へ、記事を自動で作る仕組みと、どの相手のどんな検索に当てにいくかの設計まで渡して引き継ぎました。

 

 

研修が悪いのではなく、順番だった

 

学んだのは、たったこれだけです。

 

1つ実装して見せる → 要領を掴んでもらう → 研修 → 引き継ぐ。

 

中身は最初と何も変わっていません。順番を入れ替えただけで、止まっていたものが動きました。

 

だから今も、研修をご希望いただいても、まず1つ作って見せるところから始めさせてもらっています。

そのほうが、研修が効くからです。

 

次回は、3社目で「これからの営業はこうあるべき」と数字から逆算して進めたら、今度は現場に定着しなかった話を書きます。

 

AIリモートワーカー|営業・マーケのAI導入支援

営業とマーケティングのAI化を支援している、AIリモートワーカーの佐々木です。

 

前回は、売れなくなった2ヶ月の話を書きました。

今日はそこから何年も経って、ある上場企業で営業・マーケ組織全体のAI化を任されたときの話です。

結論から書くと、最初のやり方はみごとに空振りしました。

 

まず現場に聞いて回った

 

入ってすぐ、私は営業のメンバーひとりひとりに聞いて回りました。

「AI化したい業務はありますか」と。

 

現場の声を拾うのが正しいと思っていたんです。

使う人が困っていることから直すのが筋だろう、と。

 

返ってきたのは、こういう答えでした。

商談のあとの入力が面倒くさい。

議事録を書くのに時間がかかる。

資料を探すのに毎回手間取る。

 

どれも本当のことです。だから全部やりました。

 

そして数ヶ月後、私は自分の作ったものを前にして固まっていました。

 

たしかに全部、楽にはなったんです。

でも、商談の数も、受注の数も、一件も動いていませんでした。

 

 

現場は「今のやり方」の外側を答えられない

 

あとから考えれば、当たり前のことでした。

 

「AI化したい業務はありますか」と聞かれた人が答えられるのは、今やっている作業のうち面倒なものです。

今のやり方そのものが正しいのか、という問いは、その質問の中には入っていません。

 

私は現場の声を聞いたつもりで、今のやり方を少し速くするための宿題だけを集めていたわけです。

 

 

聞くのをやめて、数字から逆算した

 

そこでやり方を変えました。

聞いて回るのをやめて、受注の数から逆算することにしたんです。

 

受注は、商談の数と、その商談が決まる率でできています。

だからまず、どこが薄いのかを数字で見ました。

 

見えたのは二つでした。

問い合わせをもらっても、すぐ商談にならなかった相手をそのまま置いていたこと。

そして、商談が決まる率が8%しかなかったことです。

 

だから直す場所を、面倒な作業から、この二つに移しました。

 

すぐ商談にならなかった相手には、相手の状況に合わせたメールが自動で届き続けるようにしました。

問い合わせが入った瞬間にその会社の公開情報を調べて、その会社の話として書いたメールを最初の一通目から出すようにもしました。

 

結果、見込み客の数は1.5倍、追いかけていた相手が商談に変わる率は1.3倍になりました。

そして商談が決まる率は、チーム全体で8%から45%まで上がりました。

 

 

言われて一番うれしかった言葉

 

しばらくして、現場のメンバーからこう言われました。

 

「そもそもこういうAI化の流れ自体、自分たちでは思いつかなかった。調べた上で、こういう形で組むべきという形にして作ってくれるほうがありがたい」

 

この一言で、最初の空振りの意味がやっと分かりました。

 

現場が答えられないのは、意欲がないからでも、視野が狭いからでもありません。

理想の形を先に見せるのは、聞く側の仕事だったんです。

 

だから今も、お客様のところで最初に聞くのは「AI化したい業務」ではありません。

どの数字を動かしたいですか、と聞きます。

そこが決まってから、では何を機械に渡すか、の順番です。

 

順番を逆にすると、よくできた便利な道具が増えて、売上のグラフだけが平らなまま残ります。

私が数ヶ月かけて作ったのが、まさにそれでした。

 

次回は、その反省を持ったまま別の会社に入って、今度は「ご要望どおり研修から始めた」ら、また止まってしまった話を書きます。

 

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