営業とマーケティングのAI化を支援している、AIリモートワーカーの佐々木です。

 

今日は、電話をかける「時間」の話です。

 

商談のあと、提案の資料をお送りして、数日たってから「その後いかがでしょうか」とお電話する。

営業をやっていると、何百回もやる動きだと思います。

 

このお電話、だいたい出てもらえません。

出てもらえても「まだ見られていなくて」「社内で確認中です」で終わることが多い。

こちらは「そろそろ見てくれたかな」と思ってかけているのですが、お客様にとっては、ちょうど別の仕事をしている時間なんですよね。

 

支援先の、医療機関向けのサービスを提供している会社でも、同じことが起きていました。

 

この会社では、お客様1社ごとに専用の提案ページを作って、資料と説明の動画をまとめてお渡ししています。

多い月で80件ほど。決裁者の方向けの動画は、1社あたり3本ほどです。

 

ページを用意したことで、もう一つできるようになったことがありました。

お客様がページを開いたら、担当の営業に通知が届くようにしたんです。

 

通知が来たら、その場でお電話する。

決めたのはそれだけです。

 

これが、思っていた以上に変わりました。

 

まず、出てもらえる。

お客様はまさに検討している最中なので、頭の中にその話が入っている状態です。

 

次に、引っかかっているところを、その場で聞ける。

費用のこと、導入したあとの現場の手間のこと。そういう気がかりが、まだ温かいうちに出てきます。

数日後に聞くと、そういう気がかりは「今回は見送りで」の一言にまとまってしまっていることが多いんです。

 

そして、そのまま次の話に進める。

気がかりが解けたら、次はいつ、どなたと話すかまで、その電話の中で決められます。

 

書いていて思い出したのが、昔の自分の仕事でした。

 

人材系の会社にいたころ、求人の新しい掲載を毎日自動で拾って、「採用に困り始めた会社」が分かるようにしていました。

困り始めたその時に電話をかけると、話を聞いてもらえる。

同じ会社に1か月前にかけても、何も起きなかったはずです。

 

やっていることは、あのころと同じなんだと思います。

電話の上手い下手より、かけるタイミングのほうがずっと大きい。

ただ、そのタイミングを人が見張っていることはできないので、そこを仕組みに任せる。

 

営業の方に「もっと電話して」とお願いするより、「この通知が来たら電話して」とお願いするほうが、ずっと気持ちよく動いてもらえました。

かける理由がはっきりしている電話は、かける側も楽なんですよね。

 

次回も、現場で気づいたことを書きます。

 

今日書いたようなことを、動画と練習問題にして「営業マーケAIスクール」に置いています。個人の方は登録なし・無料で全部見られます(会社で使う場合だけ有料)。自分の職種を選ぶと、今日やる1つとプロンプトが出ます。

営業マーケAIスクール(個人は無料)

 

月・水・金の朝に、こういう現場の話を書いています。フォローしていただくと次の話が届きます。

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今日は、自分の会社の話です。

週に1回、数字を振り返る時間をとっています。問い合わせが何件来たか、記事やSNSがどれくらい読まれたか、先週決めたことが効いたかどうか。

 

この時間が、ずっと1時間かかっていました。

 

1時間あれば十分では、と思われるかもしれません。

問題は、その中身でした。

 

あちこちの管理画面を開いて、数字を写して、先週と並べる。

それが終わるころには、もう1時間近く経っています。

肝心の「じゃあ今週は何を変えるか」を考えるころには、頭がだいぶ疲れている。

結局「先週と同じでいこう」で閉じる週が、何度もありました。

 

振り返りの時間なのに、振り返る前に終わっていたんです。

 

これ、営業会議でもよく見る光景だと思っています。

前職でSFAを売っていたころ、たくさんの会社の営業会議を見せていただきました。

どこから来たお客様が何件で、何件が商談になって、何件が受注したか。それを先週や先月と比べて、落ちているところに手を打つ。

本来はそこまでやるのが営業会議ですが、そこまでできている会議は、ほとんどありませんでした。

 

人のやる気の問題ではないんですよね。

集めて並べるところで、時間と体力を使い切ってしまう。

 

それで、自分の会社では集計を人がやるのをやめました。

 

決まった時間になると、数字が自動で集まって、先週との差が並んだ状態で届きます。

先週「これを試す」と決めたことには、最初から判定する日を付けておくようにしました。

その日が来たら、効いたのか、効かなかったのかが、数字と一緒に出てきます。

 

私がやるのは、それを読んで、今週は何を変えるかを決めることだけです。

1時間かかっていた振り返りが、5分になりました。

 

ただ、うれしかったのは短くなったことより、毎週ちゃんと「決める」ところまで行けるようになったことです。

 

決めたことを形にするのも速くなりました。

たとえばホームページを1か所直すのに、前は1時間半かかっていたのが、いまは10分です。

決めたその日に直せるので、翌週にはもう結果が見えます。

 

振り返りは、時間をかけるほど良いものではなかったんだと思います。

大事なのは、集めることに力を使わず、決めることに力を残しておくこと。

 

支援先の営業会議でも、いまは同じ順番で手を入れるようにしています。

まず数字が勝手に並ぶようにする。会議の時間は、何を変えるかを話すことに使ってもらう。

 

次回も、現場で気づいたことを書きます。

 

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前回は、「今月いけそう?」と聞くのをやめて、案件を1件ずつ一緒に見るようにした話でした。

今日は、上場企業で営業とマーケティングのAI化を進めていたときの話です。営業が一度も会わないまま、受注が決まるようになったときのことを書きます。

 

商談をしていると、同じ質問に何度も出会います。

「うちの業種でも使えますか」「似た会社はどう使っていますか」「始めるまでに何をすればいいですか」。

 

お客様にとっては、どれも大事な確認です。

ただ、その答えを聞くために、毎回日程を合わせて30分や1時間の商談を入れてもらっている。

考えてみると、お客様の側にもけっこうな手間をかけていました。

 

そこで、ホームページにお客様向けのAIチャットを置きました。

 

社内の情報を読み込ませてあって、相手の状況に近い導入事例や、「御社ならこういう形でお役に立てます」というプランをその場で出します。

よくある質問には、文章ではなく動画で答えるようにしました。用意した動画は、約30パターンです。

聞かれた内容に合わせて、チャットがその中から合う動画を出す仕組みです。

 

結果として、営業を介さずに受注まで決まる件数が、月に10件ほど出てくるようになりました。

 

正直に言うと、最初は少し複雑な気持ちでした。

営業出身の人間としては、「会って話してこそ決まる」と思っていたところがあったからです。

 

でも、決まった案件を見ていて気づきました。

この方たちは、営業と話したくなかったわけではありません。

知りたいことを、知りたいときに、自分のペースで確かめたかっただけなんです。

 

夜に落ち着いて見たい人もいるでしょうし、上司に見せる前に一人で確かめておきたい人もいるはずです。

そういう人にとっては、日程調整の連絡が来ること自体が、少し重かったのかもしれません。

 

もう1つよかったのは、営業の時間の使い方が変わったことです。

同じ説明をくり返す商談が減ったぶん、込み入った相談や、一緒に考える必要があるお客様に時間を回せるようになりました。

 

会わなくていい人には、会わずに済む道を用意する。

会って話したほうがいい人には、そのぶん深く時間を使う。

 

人が足りないから機械に任せる、という話ではなかったと思っています。

お客様ごとに合った進み方を、こちらが用意できるようになった、という話です。

 

次回も、現場で気づいたことを書きます。

 

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前回は、受注の報告に「勝因」を書いてもらうようにした話でした。

今日も同じ、人材系のスタートアップにいた頃の話です。月末が近づくと毎月やっていた、地味な確認作業のことを書きます。

 

当時は、一人ひとりに月の予算(目標の数字)がありました。

月の途中で「今月はいくらで着地しそうか」を見るとき、よくあるのは本人に「今月いけそう?」と聞くやり方です。

 

でも、この聞き方だと、だいたい「いけます」と返ってきます。

本人に悪気はありません。営業は前向きな生き物なので、見込みはどうしても明るく見えます。

そして月末に、数字が届かないことが分かる。

 

そこで、聞き方を変えました。

「いけそうか」ではなく、CRMに入っている案件を1件ずつ開いて、マネージャーが一緒に見ていくやり方です。

 

見るのは2つだけでした。

 

1つ目は、お客様のニーズをちゃんと満たした提案になっているか。

2つ目は、本当に今月決まるのか。決める人は誰で、その人まで話が届いているのか。

 

1件ずつ見ていくと、「いけます」の中身が分かれてきます。

本当に今月決まりそうな案件と、気持ちとしては決まってほしい案件です。

 

中身が見えれば、打つ手も決まります。

あと一押しの案件には、マネージャーがクロージングの場に一緒に入る。

今月は難しそうだと分かったら、来月以降の予定だった別の案件を前倒しで動かす。

 

月末に「届きませんでした」と分かるのと、月の半ばに「この案件は来月になりそう」と分かるのとでは、できることがまったく違いました。

 

ただ、正直に書くと、この確認はとても手間がかかります。

メンバーの人数×案件の数だけ、画面を開いて話を聞くことになるからです。

人数が増えるほど、マネージャーの時間はこの確認で埋まっていきました。

 

いま、医療DXの会社さんの営業AI化をお手伝いしたときにも、同じところに手を入れました。

SFAとつないで、営業会議で話すべき「注力案件」のレポートが自動で出てくる形にしたんです。

 

会議の前に、どの案件を見るべきかがもう並んでいる。

マネージャーは、そのレポートを見て「この案件はどう?」と聞くところから会議を始められます。

 

1件ずつ確認するという考え方そのものは、昔と何も変わっていません。

変わったのは、「どれを確認するか」を探す手間が要らなくなったことです。

そのぶん、マネージャーは一番大事な「その案件をどう決めにいくか」の話に時間を使えるようになりました。

 

「今月いけそう?」と聞く会議から、「この案件はどう決める?」と話す会議へ。

数字を追いかける会議ではなく、お客様の話をする会議になるのが、一番よかったところだと思っています。

 

次回は、また別の現場で気づいたことを書きます。

 

今日書いたようなことを、動画と練習問題にして「営業マーケAIスクール」に置いています。個人の方は登録なし・無料で全部見られます(会社で使う場合だけ有料)。自分の職種を選ぶと、今日やる1つとプロンプトが出ます。

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前回は、同じ提案を相手によって入口から変えた話を書きました。

今日は少し時間を戻して、人材系のスタートアップにいた頃の、社内の小さな習慣の話です。

 

当時、受注が決まると社内のチャット(Chatwork)で報告する決まりがありました。

どこの営業組織にもある、よくある光景だと思います。

 

ただ、「〇〇社さま、〇〇万円で受注しました!」だけで終わる報告は、正直あまり残りません。

みんなで拍手のスタンプを押して、翌日には流れていく。

おめでたいけれど、他の誰の明日の商談も変わらないんです。

 

そこで、報告に2つ足してもらうようにしました。

 

1つ目は、「今回の勝因」。

何が決め手になったのか。どの質問で相手の本音が出たのか。どの資料で空気が変わったのか。

 

2つ目は、「それを、どの資料やトークに落とし込むか」。

うまくいったことを本人の頭の中だけに置いておかず、次の人が使える形にするところまでを、報告の一部にしました。

 

受注の報告が、ただのお祝いではなくなりました。

誰かの1件の受注の中身が、チーム全員の次の商談の材料として残っていく。

 

その後、組織は2年で200名規模まで大きくなりました。

何十人、何百人になっても、この報告の文化は崩れずに回っていました。

人が増えるほど、一人ひとりの「勝ち方」が集まってくるので、むしろ効き目が増していった感覚があります。

 

いま、AIの導入をお手伝いしていても、同じことを考えます。

「AIを使ってみたら、うまくいきました」という声は、社内で意外とよく聞きます。

ただ、それが「よかったね」で流れてしまうと、うまくいった人がひとり増えるだけで終わります。

 

何が効いたのか。どの手順に入れれば、他の人も同じようにできるのか。

そこまで言葉にして残しておくと、うまくいったことが個人の工夫ではなく、チームの型になっていきます。

 

受注の報告も、AIの成功体験も、拍手で終わらせずに「次の人の材料」にする。

地味ですが、組織が大きくなるときに一番効いたのは、こういう習慣でした。

 

次回は、また別の現場で気づいたことを書きます。

 

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前回は、SFAを売っていた頃に、入力を嫌がる現場を見てきた部長さんと合意できた話を書きました。

今日はその続きで、部長さんの「上」の方々の話です。

 

部長さんが前向きになってくれても、大きな会社ではそこで終わりません。

取締役や執行役員の方がいて、最後は社長がいる。

以前の私は、部長さんに通った資料をそのまま上に持っていって、何度も止まっていました。

 

この案件では、やり方を変えました。

まず、誰の一言で話が動くのかを見ることにしたんです。

 

営業マネージャー、取締役、執行役員。肩書きだけ見ると全員が「決める人」に見えます。

でも実際は、会議で誰の意見が通りやすいか、誰と誰が近いかで、話の進み方がまったく違いました。

部長さんや担当者の方に少しずつ教えていただきながら、押さえるべき方を絞っていきました。

 

そのうえで、一人ずつ話し方を変えました。

 

ある取締役の方は、資料よりもまず人を見る方でした。

この方とは、会議室の外で話す時間を作りました。仕事の後に食事をご一緒して、どんな営業組織にしたいのかを聞く。提案の話はほとんどしませんでした。

 

別の取締役の方は、とにかく数字で判断する方でした。

この方には、思い描く未来の話はしません。いまの入力の手間がどれだけ減るか、営業会議で何が見えるようになるか。根拠のある数字だけを並べました。

 

社長は、逆でした。

細かい数字より、「この会社の営業がどうなるのか」で動く方だったんです。

そこで、営業の成績だけでなく、経理の数字とつながって、粗利や利益までその場で見える経営の画面を描いてお見せしました。

「会議のたびに数字を集めてもらわなくても、社長がいつでも会社の状態を見られる」。そういう未来の話です。

 

同じ提案です。中身は一つも変えていません。

変えたのは、どの入口から話すか、だけでした。

 

実はこれ、昔の失注から学んだことでもあります。

部長さんまでは「すごくいいね」と言っていただけたのに、経営の方の前で営業の効率化の話しかできず、他社に負けた案件がありました。

あのときは、全員に同じ話をしていたんです。

 

いまAI導入のお手伝いをしていても、同じことを思います。

「AIで業務を効率化しましょう」と全員に同じ説明をしても、たいてい誰にも刺さりません。

現場の方には自分の手間がどう減るか。マネージャーの方には何が見えるようになるか。経営の方には会社がどう変わるか。

 

自分自身、別の組織で「未来はこうなるはずだから」と上から一気に進めようとして、うまくいかなかったことがあります。

結局、一人ずつ困りごとを聞いて、その人の仕事から変えていくのが一番の近道でした。

 

次回は、また別の現場で気づいたことを書きます。

 

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以前、スプレッドシートの手直しを手伝っていたら、担当者の方が部長さんを紹介してくださった、という話を書きました。

今日は、そのとき書けずにいた部長さんとの話です。

 

部長さんには、最初からひとつ引っかかっていることがありました。

 

その会社では、以前Salesforceを入れたことがあったんです。

でも現場が入力してくれなかった。「なんで自分たちが入力しなきゃいけないんだ」と反発も出た。

結局、ほとんど使われないまま、現場はスプレッドシートに戻っていきました。

 

部長さんからすれば、同じ種類のツールの営業がまた来た、という状況です。

「今度のツールは使いやすいですよ」と言われても、たぶん何も響かなかったと思います。

 

なので、ツールの説明はほとんどしませんでした。

代わりに話したのは、「どうすれば現場が入力しなくて済むか」です。

 

現場の方が入力したくないのは、怠けているからではありません。

自分の仕事が楽になるわけでもないのに、上に報告するためだけに手間が増える。そう感じているからです。

それなら、入力そのものを減らせばいい。

 

すでに社内で使っているシステムや、経理まわりのサービス、自社で作った道具から、情報を自動で流し込めないか。

そのために、各部署の方に「いま何を使っているか」「つなげられるか」を一つずつ聞いて回りました。

 

もうひとつ、部長さんに聞いたことがあります。

「営業会議で、本当はどんな数字を見たいですか」

 

どこから来たお客様が何件で、そのうち何件が商談になって、何件が受注になったか。

それが先週や先月と比べてどう動いているか。

聞いていくと、部長さんの頭の中には見たい数字がはっきりありました。ただ、それが一度も画面に出てきたことがなかったんです。

 

そこで、聞いた内容をもとに仮のダッシュボードを作って、次の打ち合わせで見ていただきました。

 

入力はできるだけ自動で流れてくる。そのうえで、会議で見たかった数字がこう並ぶ。

そこまでを一緒に見ていただいて、まず部長さんの合意をいただくことができました。

 

振り返ると、部長さんが欲しかったのはツールではありませんでした。

現場に嫌われずに、見たい数字が上がってくる状態。それだけだったんだと思います。

 

いまAI導入のお手伝いをしていても、同じ壁に何度も出会います。

「AIを入れても、結局みんな使わなかった」という経験をお持ちの会社は少なくありません。

 

そういうときも、使い方を教えるより先に、人が手を動かさなくても回る形を考えます。

商談が終わったら記録が自動でできていて、人は中身を確認して直すだけ。

新しいことを覚えてもらうのではなく、やることを減らす。

あの部長さんに教わったのは、そういう順番でした。

 

次回は、同じ案件で、取締役や社長に一人ずつどう話を変えていったかを書きます。数字で納得したい方もいれば、思い描く未来の話で動く方もいました。

 

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前回の最後に、商談に出ていない決裁者の方にどうやって話を届けているかを書くと予告したので、今日はその話です。

ただ、うまくいった話からではなく、いちばん記憶に残っている負けた話から始めます。

 

SFAやCRMを売っていた頃のことです。

ある会社で、担当者の方も部長さんも「これはすごくいいね」と言ってくださっていました。

あとは経営層の判断だけ。正直、取れると思っていました。

 

結果は、他社に決まりました。

 

あとから振り返ると、理由ははっきりしていました。

経営層の方に持っていった提案が、最初から最後まで「営業の効率化」の話だったんです。

入力が楽になる、報告の手間が減る、商談の管理がしやすくなる。

担当者の方と部長さんに響いた話を、そのまま上に持っていっていました。

 

競合の会社は違いました。

営業のデータを経理や財務の数字とつなげて、粗利や営業利益までその場で見える。経営の判断がしやすくなる。

同じ道具の話を、ひとつ上の目線で話していたんです。

 

気づいたとき、「そりゃ負けるよな」と思いました。

 

そこから、同じ提案でも、読む人によって中身を変えるようにしました。

 

担当者の方が気にしているのは、自分の手間が増えないかどうか。

部長さんが気にしているのは、営業会議で見たい数字がちゃんと上がってくるかどうか。

経営層の方が気にしているのは、会社の利益がどう変わるか。

 

同じ会社の中でも、この3つはほとんど重なりません。

担当者の方が一番うれしいことは、社長にとってはどうでもいいことだったりします。

逆もそうです。

 

商談に出ていない決裁者の方に話を届けるとき、一番やってはいけないのは、商談の場で盛り上がった話をそのまま送ることだと思っています。

その場にいた人には響いた話でも、いなかった人には、自分に関係のない話に見えるからです。

 

いまAI導入のお手伝いをしていても、これは変わりません。

AIで資料はすぐ作れるようになりました。でも、何も考えずに作らせると、商談で話した順番のまま、現場向けの言葉で並びます。

 

だから決裁者の方に渡すものは、最初の1枚を「時間が減ります」ではなく「会社の数字がどう変わるか」から始めるようにしています。

どの立場の人が読むのかを先に決めてから作らせる。そこだけは、人が決めるところだと思っています。

 

あの負けがなかったら、たぶん今でも、自分がいいと思った話を、全員に同じように話していたと思います。

 

次回は、以前紹介すると書いたまま書けていなかった部長さんの話です。前にSalesforceを入れて「現場が入力してくれなかった」という苦い経験をお持ちの方に、どう話を進めたかを書きます。

 

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前回の最後に、1回目の商談で聞いたことが、そのまま2回目の提案書になるようにした話を書くと予告したので、今日はその話です。

 

営業をしていた頃、2回目の商談の資料づくりで、いつも同じところで手が止まっていました。

1回目でお客様がどんな言葉を使っていたか、思い出せないんです。

 

メモはあります。でも、自分のメモは自分の言葉に置き換わっています。

お客様が「人が足りない」と言ったのか、「今の人数で回せる仕組みがない」と言ったのか。この2つは、提案する中身がまるで違います。

 

結局、手元にある会社紹介の資料をベースに、それっぽく直して持っていく。

すると2回目の商談で、お客様は資料ではなく、自分がこの前話したことがどこに書いてあるかを探し始めます。見つからないと、話はまた1回目に戻ります。

 

以前、「営業を2人採用したい」と言われたときに、なぜ2人なのかまで聞くようにして売れるようになった、という話を書きました。

ただ、深く聞けても、それを2回目の資料に正確に戻せなければ、聞いたことは半分しか活きません。

 

そこで今は、こういう流れにしています。

 

1回目の商談が終わると、録画から議事録ができます。

その議事録をもとに、2回目の商談用の資料をAIが組み立てます。

構成は毎回同じ型です。お客様が話した困りごとを、お客様の言葉のまま最初に置く。そのあとに、なぜそれが起きているのか、どう変えるのか、と続けます。

 

自分の会社では、この2回目の資料1本が、30分ほどかかっていたのが5分ほどになりました。

 

でも、短くなったこと自体はあまり大事ではないと思っています。

変わったのは、資料の1枚目です。

前は、こちらが言いたいことから始まっていました。今は、お客様がこの前言ったことから始まります。

 

人は、自分が話したことが書いてある資料は、ちゃんと読みます。

「そうそう、これが言いたかった」という反応があると、2回目の商談は、1回目の続きから始められます。

 

もう1つ、気をつけていることがあります。

AIが組んだ資料を、そのまま出さないことです。

議事録には、言葉は残っていても、そのときの声のトーンや間は残りません。お客様がどこで少し言いよどんだか、どの話で身を乗り出したか。そこは商談に出た人にしか分からないので、最後に自分の目で直してから出します。

 

AIに任せているのは、思い出す作業と、型に並べる作業です。

どこを一番大きく書くかを決めるのは、まだ人の仕事だと思っています。

 

次回は、お客様の会社の中で、商談に出ていない決裁者の方に、どうやって話を届けているかを書きます。

 

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前回の最後に、トップセールスの話し方をどうやって型にしたかを書くと予告したので、今日はその話です。

 

病院向けにサービスを出している会社を支援していたときのことです。

事業は伸びていました。ただ、売れる人は売れて、売れない人は売れないまま。新しく入った人に「こうやれば売れる」と渡せるものがありませんでした。

 

トップセールスの商談は、ちゃんと録画されていました。

でも、誰も見返していませんでした。

1本1時間の録画を何十本も見る時間は、営業にもマネージャーにもありません。

 

最初に思いつくのは、本人に聞くことです。

「商談で何がいちばん効いていますか」

 

でも、これはあまりうまくいきません。私自身、トップセールスだった頃に、自分のやり方をうまく言葉にできませんでした。

聞かれれば答えはします。でも出てくるのは、自分で意識してやっていることだけです。

本当に効いているのは、たいてい本人が意識していないところにあります。言い回しの順番だったり、お客様が黙ったあとの一言だったり。

以前、自分の言葉で型が伝わらなくて、本を1冊渡したら伝わったという話を書きました。あれも結局、自分のやっていることを自分で言葉にできていなかった、ということだと思っています。

 

だからこの会社では、本人に聞くのをやめて、録画をすべてAIで読むことにしました。

 

見たのは「誰が何を話したか」ではありません。

受注まで進んだ商談に共通して出てくる話は何か。そこだけを抜き出しました。

 

そうやって共通項を取ると、本人も自覚していなかった話が出てきます。

聞き取りだけでは、まず出てこなかった部分です。

 

抜き出した話は、商談の流れに沿ってトークスクリプトにまとめ、それに合わせて資料も作り直しました。

サービスの紹介資料、病院が実際に比べている他の選択肢との違いの資料、似た規模・似た悩みの病院の事例資料、の3つです。

 

ここで気をつけたのは、完成品を作ろうとしないことでした。

現場から「この病院にはこの切り口が要る」と言われたら、その日のうちに資料を直せるようにしておく。型は一度作って終わりではなくて、録画が増えるたびに更新していくものだと思っています。

 

やってみて思ったのは、トップセールスのやり方は、本人の頭の中ではなく録画の中にあった、ということです。

本人に聞くと、本人がこうだと思っている姿が返ってくる。録画を読むと、実際にお客様の前でやっていることが返ってくる。

型にすべきなのは、後者のほうでした。

 

この会社では、型のほかに、決裁者の方に向けた動画や専用のページも一緒に進めたので、どれが一番効いたかは切り分けられません。

ただ、新しく入った人に「まずこれを見て」と渡せるものができた。それだけでも、売れる人と売れない人の差を埋める入口にはなったと思っています。

 

次回は、1回目の商談で聞いたことが、そのまま2回目の提案書になるようにした話を書きます。

 

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