営業とマーケティングのAI化を支援している、AIリモートワーカーの佐々木です。
前回は、売れなくなった2ヶ月の話を書きました。
今日はそこから何年も経って、ある上場企業で営業・マーケ組織全体のAI化を任されたときの話です。
結論から書くと、最初のやり方はみごとに空振りしました。
まず現場に聞いて回った
入ってすぐ、私は営業のメンバーひとりひとりに聞いて回りました。
「AI化したい業務はありますか」と。
現場の声を拾うのが正しいと思っていたんです。
使う人が困っていることから直すのが筋だろう、と。
返ってきたのは、こういう答えでした。
商談のあとの入力が面倒くさい。
議事録を書くのに時間がかかる。
資料を探すのに毎回手間取る。
どれも本当のことです。だから全部やりました。
そして数ヶ月後、私は自分の作ったものを前にして固まっていました。
たしかに全部、楽にはなったんです。
でも、商談の数も、受注の数も、一件も動いていませんでした。
現場は「今のやり方」の外側を答えられない
あとから考えれば、当たり前のことでした。
「AI化したい業務はありますか」と聞かれた人が答えられるのは、今やっている作業のうち面倒なものです。
今のやり方そのものが正しいのか、という問いは、その質問の中には入っていません。
私は現場の声を聞いたつもりで、今のやり方を少し速くするための宿題だけを集めていたわけです。
聞くのをやめて、数字から逆算した
そこでやり方を変えました。
聞いて回るのをやめて、受注の数から逆算することにしたんです。
受注は、商談の数と、その商談が決まる率でできています。
だからまず、どこが薄いのかを数字で見ました。
見えたのは二つでした。
問い合わせをもらっても、すぐ商談にならなかった相手をそのまま置いていたこと。
そして、商談が決まる率が8%しかなかったことです。
だから直す場所を、面倒な作業から、この二つに移しました。
すぐ商談にならなかった相手には、相手の状況に合わせたメールが自動で届き続けるようにしました。
問い合わせが入った瞬間にその会社の公開情報を調べて、その会社の話として書いたメールを最初の一通目から出すようにもしました。
結果、見込み客の数は1.5倍、追いかけていた相手が商談に変わる率は1.3倍になりました。
そして商談が決まる率は、チーム全体で8%から45%まで上がりました。
言われて一番うれしかった言葉
しばらくして、現場のメンバーからこう言われました。
「そもそもこういうAI化の流れ自体、自分たちでは思いつかなかった。調べた上で、こういう形で組むべきという形にして作ってくれるほうがありがたい」
この一言で、最初の空振りの意味がやっと分かりました。
現場が答えられないのは、意欲がないからでも、視野が狭いからでもありません。
理想の形を先に見せるのは、聞く側の仕事だったんです。
だから今も、お客様のところで最初に聞くのは「AI化したい業務」ではありません。
どの数字を動かしたいですか、と聞きます。
そこが決まってから、では何を機械に渡すか、の順番です。
順番を逆にすると、よくできた便利な道具が増えて、売上のグラフだけが平らなまま残ります。
私が数ヶ月かけて作ったのが、まさにそれでした。
次回は、その反省を持ったまま別の会社に入って、今度は「ご要望どおり研修から始めた」ら、また止まってしまった話を書きます。