愛おしい愛おしい彼女の帰りを待つのは、ただの苦痛。

唯一無二の想い人たる彼女も同じように、一人でいる時間を苦痛に感じてくれていたら良いと思ってしまうのは、恋に囚われた哀れな男。


がらりとした空間は、今までの一人の時には気にならなかった隙間が所々あいているようで、言葉にならない想いが募っていく。

早く早くと、帰宅を願うが、今日は噂に聞く女子会というやつで、今日という日のギリギリにならないと顔を合わせないだろう事は少し前の晩から、わかっていたことだ。


それでも、何か色々な事が重なり合って、急遽早く帰ってくる、なんてことないのかな・・・・と思考を巡らしながら、キョーコの好む軽めのワインに口を付ける。


寂しい、というより、悲しい。

悲しい、というより、切ない。

切ない、というより、寂しい。


キョーコがいない時に生まれる、永遠のループ。


結局はキョーコがいなければ何一つ出来ない。

そんな自分の変化が愚かしくて、彼女への想いを重さを思い知り、少しだけ申し訳なくなる。

だからといって、その想いを止めることなど出来ないのだけれど。


**


ワインのボトルが半分ほどなくなって、読みかけの雑誌があと僅かになった頃。

想い人の帰宅を知らせる音が鳴る。

「蓮さん!ただいま~」

「おかえり、キョーコ」


勢い良くあけられたドアの先には、待ち望んでいた彼女。

アルコールによって、上気した頬がとても可愛らしい。

にこにこと上機嫌で戻ってきたキョーコは、そのままの勢いで、ソファに座る蓮に抱きついた。

蓮は満面の笑みでもって、手に持った鞄を置き捨てて、コートも脱がずにやってきた華奢な身体を抱きしめる。


「ただいまぁ」

「おかえり」


うっとりと擦り寄りながら、甘えてくるキョーコに、緩む顔が止められない。

外の空気と他人の気配を消し去っていくように、髪を梳き、コート越しに背中を撫でる。

少し部屋の温度に馴染んだところで、コートを脱がせ、脇に置いた。


「飲んだ?」

「ふふ、赤ワインをちょっと」

「美味しかった?」

「はい、とっても」


冷たい頬を両手で暖めながら、軽いキスを送る。

蓮の唇に触れる温度は、やっぱり冷たい。


「やっぱり迎えに行けばよかった」


本当に心から、そう思う。

そうしたらキョーコは冷たい思いをせずに済み。

自分は今よりも早くキョーコに会えた。


「駄目、です」


キスを受け入れ、その数の半分ほどを、蓮の頬に返しながら、可愛い酔っ払いは手厳しく拒絶をする。

何度もした口論を、またぶり返す気なのか?というような、棘さえ感じられるのは気のせいではないだろう。

それでも食い下がってしまうのは、囚われたことに甘んじる男。


「だって、こんなに冷たい」

「大丈夫ですもん」

「ほっぺも、手も、身体も・・・・」

「だいじょうぶ」


触れる頬、唇を寄せられる手、抱きしめられる身体。

全身で温かい蓮を感じたキョーコの心に、ほんわかと優しさの火が灯る。

「だって、バレたら・・・・駄目ですもの」

「店からちょっと離れたところにいれば平気だよ」

「ばれちゃう」

「大丈夫」

「だ、め」


頬に降っていたキスは、いつの間にか唇同士の触れ合いになって。

お互いに飲んだワインの味を少し感じながら、その合間に言葉を紡ぐ。


「でも、帰ってきてすぐに抱きついてくれたのは、寂しかった証拠でしょう?」


だから、次からは迎えに行かせて。

そう願いを込めながら、瞳を覗き込むと、キョーコの意志が途端に揺れる。

キスの余韻がなくなってしまったことが、少しだけ残念なので、最後にリップ音をわざと鳴らして、少し離れた。


「それは・・・・会いたかったのは確かに、そうですが・・・」

「じゃぁ、良いじゃない」

「それとこれとは、違う気がします」

「気のせいじゃない?」


むむむっと眉間に皺を寄せて考える姿すら、可愛い。

あと少しでアルコールに浸った思考は陥落するから。

あと、一押し。


「ね、キョーコ。次から、ね?」

「・・・・ぅぅ」

「バレないようにするから、ね?」

「あぅ」


揺れる瞳を見つめながら、ようやく暖まってきた指先に唇を寄せた。

キョーコの指先をそのまま自分の頬にあてる。


「キョーコ、お願い」

「・・・・・バレないように、ですよ?」


諦めたように溜息をついて。

聞き分けのない良い大人を甘やかす答えを出したキョーコ。

途端に瞳を輝かせる蓮へ、せめてもの腹いせを、と頬に当ててある指で、蓮の頬をぐにっとつまむ。


「痛い・・・・」

「ふふ」

「酷いな、でもありがとう」


触感が気に入ったのか、あいていた片方の指でも同じようにつまみ出す。

伸ばしてみたり、ひねってみたり。

抵抗して先程の約束がなかったことになっては厄介だと思いついた蓮は気の済むまでそうぞと、なすがままにされる。


「敦賀蓮が、変な顔・・・・」

「させてるのは、キョーコでしょう」

「ふふ」

「酔っ払いだね」


そうですね、の言葉と共に、キョーコから蓮に唇を寄せる。

こつん、と額同士を当てて・・・・低く、囁く。


「さっきのバレないように・・・・ですよ?」

「もちろん、頑張ります」

「まだ、秘密なんですから」

「見つからないように、迎えに行くよ」


二人だけの空間で、ひそひそと意識を合わせる。

公に出来るその日まで、密やかにしておかなければならない関係。

不便で、不自由ではあるけれど、そのなかで想いを育むことは、なかなかスリリングで刺激的。


「じゃぁ、待ってます」

「絶対行くから、ちゃんと待ってて」


キョーコの答えは吐息にかき消された。

触れ合う二人は、一つに重なる。













******

追い込みを軽く掛けられて。

最近色んなところで、暗い話しか思いつかないと言ってたら、本気で心配されて。

ここはいっちょ~!と、某所で叫ばれていた憧れの甘さに挑戦しました☆

結果、敗北。

所詮、私は微糖止まり(ノДT)







お世話になりっぱなしの、皆様へ。



昨日作ってどうしたものかと・・・・思ってましたが・・・・
本誌がネ申な展開過ぎる!という前情報の元、自分の妄想がそちら側にそれないうちにUPします。

昼ご飯もそこそこに、ずーーーーとスマホいじっていたお馬鹿なあたし←
笑ってやってください。


早く読みたい!!本誌!!!







******








猫は、にゃぁって鳴くのが・・・・一般的よね?
うにゃぅとかも、ありかしら。
つぶらな瞳で見つめられたらたまらないし。
文句なしで、可愛いわよね~・・・・・・・・


そう思わない?
大好きな兄さん。

そう思いませんか?
敬愛する大先輩。



決して決して、私はにゃんこじゃありません!
そう、言えたら・・・・どんなに楽か。
でも・・・与えられた選択肢は、一つしかない。

見つめる瞳は楽しげに微笑んでいて、口元は意地悪に上がっている。
そんな遊んで!遊んで!!と言っているような彼の表情を拒否できる術を教えて欲しい。

(この人の方がよっぽど尻尾とか生えてそうなのに)

ここで自分に猫の真似事を強要するとは。
全く持って不可解。
ただの嫌がらせ兼お仕置きにしても、恥ずかしすぎるだろう。

猫耳がないだけ・・・・まし?
いやいや、そういうことではなくて。

アメショ設定でも良い・・・・わよね?
いやいやいや、そういうことでもない。

思考の小部屋から脱出を促すのは、先程からしつこいほどに促す彼。
そして、恩を知らない黒猫。

『セツ・・・・?』
にゃぁ・・・

さぁさぁ、早く!
これが正しい鳴き方だ!

そんな幻聴が聞こえてしまうくらいのタイミングの良さはなんなんだろう。
合わせ技でこられても、ただただ困惑するばかりなのに。
一人と一匹は絶妙なコンビネーションで、間にいる私を追い詰める。

一人は愛玩行為なのか、耳を撫でながら触れてきて。
一匹はおねむの時間なのか、膝の上でもぞもぞ動く。

声帯をようやく震わせて、出てきたのは・・・・・言語としての機能を持たない音。
それだけで、彼が満足するのかどうかは怪しいけれど。
これはお仕置きだからと自分に言い聞かせる。


『・・・・・・・・・・にゃ、ぁ・・・・・・・・・・』


途端に目を輝かせる彼に、心臓が止まりそうになったのは内緒。

『セツ・・・・』
『・・・・ん、にゃ』
『可愛い』

耳や頭に触れてくる指も。
輪郭をなぞるように滑る唇も。
これはお仕置きだから、他意はないから。
キョーコとしての溢れてしまいそうな想いを必死に閉じ込めて、なすがままになる。
だって雪花なら喜んで受け入れるはずだから。
大好きな兄さんにこんなことされたら、きっと喜ぶはずだから。


**



ひとしきり、愛玩行為が終わったときには、もう私自身くったりで、これ以上なにもすることが出来そうもなかった。
膝の上にいた筈の黒猫は、いつの間にかツインベットの間に設置されたペットベットで悠々と就寝していた。

『・・・・あの子・・・いつの間に』
『お前が意識を遠くにやってる間に連れて行った』

兄さん、いつの間に・・・・
そして帰ってきても、抱きかかえてる状態は変わらないんですね。
・・・・・お仕置き、続行中?

この心地よくて、性質の悪い体温を。
この心地よくて、性質の悪い人肌を。
覚えてしまいそうで、怖い。
本当のペットのように、飼いならされてしまいそう。

『遠くにって・・・・気を失っていたわけじゃないわ』
『呼んでも返事をしなきゃ、同じだろう?』

言い返せなくて、抗議の意味を込めて、唇を突き出す。
それをはむっと指で摘まれ、強弱をつけて、くにくにと遊ばれる。

『んーッ』

痛くはないけど、こそばゆい。
やめてよ、と視線で訴えると、指が外され・・・・・ぺろりと、唇を舐められた。

『・・・・・兄さんはにゃんこじゃないでしょ?』
『美味しそうだったから』
『兄さんの方が・・・・美味しそうよ?』

荒れ狂う脳内を必死に鎮めて、雪花としての対応を探る。
私の言葉にきょとん、とした彼は・・・・
大好きな兄さんでも。
敬愛する先輩でも。
どちらでもないような、不思議な気がした。

『どこら辺が?』
『ちょっと厚くて、ぷりっとしてて、とってもセクシーで、とっても美味しそう』

うっとりと言いながら、それをなぞる。

『・・・・味見してみる?』

囁かれた言葉に従って、先程されたようにぺろりと舐める。
やっぱり美味しい。
そんな訳ないのに。
それでも、美味しい。

『美味し、い』
『そうか、良かった』
『ん』

本当の猫になったように、無心で何度も何度も・・・・ぺろりと舐めては、小さく歯を立てる。
途端にがたつく大きな身体。

『・・・・セツ・・・・寝るぞ』
『もう?』
『ぁあ、寝ないと夜が長くなる』
『意味わかんない』

目の奥にある揺れる感情は、なんなんだろう。
私が知りえることのない感情。
知りたいと。
求めたいと。
きっと思うことすら、おこがましい。

離れていった体温に変わって包まれたのは、薄手の毛布。
寂しいと思うということは、だいぶ彼の体温と人肌に慣れてしまったせいだろう。
せめて・・・・あの恩知らずな黒猫とでも良いから、体温を分け合いたいと思って目線を上げると、笑う彼と絡み合った。


『どうした・・・?』

知ってるくせに。

『黙ってちゃわからん・・・・』

嘘つき。

『寒い?』

もう、猫としてでも良いから、一緒にいて欲しい。

『・・・・セツ?』

少し、ほんの少しだけ、毛布を捲って、意思を伝える。

『・・・・・・にゃ、ぁ』


すぐに入ってきたのは、暖かくて大好きなヒトの熱。
飼い慣らされた後に待つ結末なんか知りたくなくて、ぎゅっと目を閉じる。
ぎゅっと抱きしめられる身体が、無性に切なくなった。


『兄さん・・・・ずっと一緒ね』
『お前が嫌だと言っても・・・・』
『約束よ』













覚悟が足りずに、嵌ってしまったのは・・・・
愚かな、私。









******

やっぱりなんだかな。。

このお笑いテイストに仕上げたいのに、仕上がってくれないこの散々たる有様。


大人しく薄暗い話だけ書いてろってことか←

お世話になりっぱなしの、皆様へ。





大変長らく更新せずに申し訳ありません!!

(リアルとよく分からない不思議な出来事が凶器を持って襲ってきてます。(´д`lll)


いつもながらの浅いお話ですが・・・お楽しみ頂ければ幸いです。








******










ふっくらとした重みを感じて、思わず顔が蕩けてしまいそうになる。

華奢な身体はどこまでも細く硬質で、他人の肌と交わったことのないことを物語る。


馴染まない体温。

馴染まない人肌。

そして、警戒する全身。


その全てに愛おしさと嬉しさが募っていくことは、禁じえない。

彼女が膝に乗せている子猫は満腹でくったりと寛いでいる。


『それで・・・セツ、そいつはどうしたんだ?』

『・・・・凍えてるところを、見つけたのよ』

『そうか』


ちらり、とこちらを伺う様子は、悪いことをした子供みたいな顔つきだった。

そんな顔するなら、真っ先に自分を頼ってくれれば良かったのに・・・・と、現実には到底起こりうらないであろうことを考えてしまう。


良き先輩。

良き後輩。


そんな関係の中で、か弱い生き物の相談など一番にするはずもないと、分かってはいるのだが・・・・

膝の中でようやく寛ぎ始めた彼女を目の当たりにすると、やっぱり頼って欲しかったと、欲が出てきて仕方ない。


『・・・・なんて言われた?』


誰に、何を、と言ってしまっては、差しさわりがあるような気がして。

どうにでも逃げられるように、言葉を選ぶ。


『・・・・・・』

『セツ?』

『・・・・・明日の朝まで、一緒に・・・・って』


がっくりと落とした肩で、ピンっとくるのは・・・・彼女への想いか。

それとも・・・・社長との付き合いの長さか。


『俺には、秘密に朝を迎えろと・・・・?』

『・・・・・ッ!!』


再び硬直する華奢な身体。

この全身で感情を露にする癖は大変可愛らしいのだが、それは紙一重で、社長の餌食となることをいい加減気付いたほうが良い。

いや、それは最近3人に増えたラブミー部員全員に言える事なのだが・・・・

思わず溜息が零れてしまう。


『あ、あたしだって!言おうと思ったの!!』


くるりと顔だけ向けて詰め寄られる。


『兄さんに隠し事なんて出来ないし!』


必死に言い募りながら、潤ませる瞳。

無意識のうちにだろう、許しを請うのに擦り寄る身体。


(ほんと、可愛い・・・・)


どうにかしてしまいたいほどに。

でも、それを許さないのは、理性。


ささやかな彼女への報復と・・・・

自分の理性への飽くなき挑戦。

それを言い訳に、華奢な体をぐっと抱きしめる。

肩口に顔を埋めて、体温と・・・・肌の感触を味わう。


『・・・・ん・・・・兄さん?』


漏れる吐息に男の劣情が煽られることなど知らないのだろう。

子猫を膝に乗せながら、必死にもがく身体に言い聞かせる。


『セツ・・・』

『ど、したの?兄さん?』

『今日一日、そいつがここにいることは許そう』

『本当!?』


肩に触れる俺の息をくすっぐたさそうに、交わそうとしながらも、嬉しさに色づく彼女の声。

その声色だけで、充分に幸せになれる自分はなんて安いんだろう、と少し意識が遠くなるが、事実そうなのだからしかたない。


『ああ・・・・でも』

『・・・・・でも・・・・?』


途端に警戒の色を強めた彼女。

さすが、よく分かってるじゃないか。


『明日まで、セツが俺の猫になってくれれば・・・・な?』

『・・・・え?』


ふふ、良いね。

その豆鉄砲食らったみたいな顔。

突飛な場所へと向かう彼女の思考の、更に上を行けた事に少しばかり心が満たされる。


『さぁ、セツ・・・・・猫はなんて鳴くんだ?』


その時に黙ったままの小さな小さな黒猫が、それまでよりも大きく、にゃぁ・・・・と空気を震わせたことは、ただの偶然。

俺の言った言葉の意味と、その正しい鳴き声を脳内できちんと理解した彼女は、役柄を放り投げて、顔を真っ赤に染め上げた。


まぁ、今回は多めに見よう。

自分だってカインの役柄を大きく逸脱しているわけだし、ここはお互い様というところで。


『セツ、なんて鳴くんだ・・・・・?』









さぁ、君はどう出てくる?