さて、本コラムはアジアで止めておくつもりでしたが、面白くなってきたのでお隣の地域も取り上げてみる事にしました。

ご興味ある方はよろしくお付き合い下さい。

 

―――――――目次―――――――

1.日本の薬事と製薬業界

2.世界の医薬品市場と日本の位置付け

3.アジアの現状

4.今後をどう読むか

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3.アジアの現状(番外編)

7) オーストラリアについて

 

実際、オーストラリアはオセアニア地域ではありますが、番外編という事で取り上げたいと思います。

ネットや現地コンサルによる講演アーカイブなどを参考にしています。

 

さて、

オーストラリアは人口2500万人。

医薬品市場規模は1.5兆円で世界14番目のマーケットです。

中期的な市場成長率は0~3%となっている様です。

 

医療制度についてですが、

メディケアと呼ばれる公的保険があります。

公立病院のみ無料という制度で(私立病院は対象外)、検査費や入院費などは無料です。

 

薬代は支払いが必要ですが、

多くの医薬品は、政府による全額または一部の国庫負担がなされており、利用者は安価に利用できる仕組みがあります。

 

オーストラリアは、アジア・オセアニアでは、日本に次ぎ医療福祉が整った国と言われており、国民は比較的手軽に医療を受ける事が出来ます。

平均寿命は82.7歳と長寿化が進んでいる様です。

 

政府が国庫負担を決めた医薬品に関しては、PBS(Pharmaceutical Benefit Scheme:医薬品有効利用計画)にもとづき、毎月リスト更新され、国民に公開されています。

→PBSのサイト

PBSに収載されている医薬品は、成分としては約600種以上、剤型・規格別では1500品目以上ある様です。

それらの薬価は、政府が介在して製薬会社との交渉で決められています。

患者さんのQOLを如何に高めるかと言ったベネフィットが評価される様です。

 

医薬品の審査・承認は、国家機関であるThe Therapeutic Goods Administration (TGA)で行われています。


ところで、

昨年同国は、

日本を医薬品迅速審査の対象国としました。


日本で先に承認されている医薬品に関しては、PMDAによる審査報告書を提出する事で、本来かかる審査期間255日が120~175日に短縮されるというのです。


これは日本の製薬会社にとっては追い風ではないでしょうか?


 

さて、

話は変わりますが、

日本は、倫理的な事情やいくつかの大人事情によって抗がん剤の臨床試験が組みにくいと言われていますが、

10年ほど前だったか、オーストラリアなら比較的容易に抗がん剤の臨床試験が組めるという話が湧き上がり、現地で試験を組んだ開発品がありました。


実際、調べてみると、オーストラリアは臨床試験、国際治験が盛んに行われています、


2010年~2019年の期間に同国で行われた医薬品の臨床試験は4,197件。

世界の7.3%だそうです。

 

実施されているPhaseⅠ~PhaseⅡaの数は世界で7番目です。

5番目の日本と大差はありませんが、

人口(日本の約1/5)を考えると、なかなかの数かもしれません。


世界のメガファーマを始め、多くの他国籍企業の国際治験に使われている様ですが、

その理由としては、

 

・同国がヨーロッパ系を始め、様々な人種のるつぼである

・欧米よりも安価に臨床試験が出来る

・優秀な医療人材が豊富で研究のインフラが充実している

・R&Dに対する税制控除がある

・臨床試験に対する効率的な規制環境がある

・発展を続けるアジア諸国に近い

 

という事の様です。


特に抗がん剤関連の試験が全体の35%と多くを占めています。(世界平均は27%)


その他は、免疫及び炎症が18%、CNSが14%。

呼吸器感染症に関しては、臨床試験は世界2番目だそうです。

  


ところで、

他国に漏れず、オーストラリア政府も、国内の医薬品研究開発を推進して来ました。

 

2015年、政府はイノベーション&サイエンスアジェンダを発表し、様々なサイエンス分野の産学連携に対して、4年間で1000億円の拠出を開始しました。

また、スタートアップ企業に対して税制の優遇を行うなど、起業を推進。

 

2016年には、政府のNational health and medical research councilによる、医療研究未来投資ファンドが設置され、2021年までに2兆円の基金を目指す事となりました。

2020年時点で累計1.8兆円が投資されました。

 

併せて、2011年からR&Dに対する税制インセンティブが開始されました。


オーストラリアで行われる研究開発に対して、最大43.5%税金が控除されるとの事です。

これは、外資も含まれる、という事でしょうか?

良く分かりませんが、同国で研究開発を行うと、優遇される政策があるという事なのでしょう。

 

目下、オーストラリアには、製薬会社が281社ある様ですが、こうした背景により、盛んに資金調達を行いながら研究開発を進める会社もある様です。

 

2016年Science American Worldviewによると、バイオ医薬産業イノベーションで、オーストラリアは世界トップ5にランクインされているのだとか。

へぇ。 。


何やら新しい事が色々と行われている、みたいな感じでしょうか?


現地で開発を行う製薬会社・創薬ベンチャーとしては、

CSL、Mayne Pharma、Propanc Biopharma、Immutep、Mesoblast、Acitinogen Medical、

Botanix Pharmaceuticals、Benitec Biopharma、Immuron、Prescient Therapeutics、

等、12~15社程の名前が出てきました。

 

CSL社は、世界25カ国に事業所を持ち、従業員1万1千人と規模の大きな製薬会社です。


その他の会社は中小やベンチャーの様で、多くは2000年以降に設立された比較的新しい会社と見られます。

 

開発モダリティーは、

あくまでも印象ですが、低分子よりも、再生医療、ペプチド、抗体など、バイオの方が盛んな印象。

対象疾患はがんが多い様子です。

 

他国製薬企業とのパートナーシップが盛んです。


過去5年で60数件、年平均では12件程度の国際パートナーシップが行われており、

年々増加傾向にある様です。


内容は、共同開発・導入・導出・ライセンス契約・委託製造等が含まれます。

 

パートナー企業としてはメガファーマが多い感じで、

メルク、アストラゼネカ、武田薬品、ファイザー、J&J..の順位となっています。

 

製薬会社ではない日本企業で、同国の再生医療開発企業とパートナーシップを組んだというニュースも見つかりました。

実は意外と穴場だったりするのでしょうか?

 

さて、まとめると、

 

・オーストラリアは医療福祉が整っており国民は長寿である 

・各種優遇政策により他国製薬会社の臨床試験が多く行われている

・資金調達しやすい環境?

・国際パートナーシップが盛ん

・産業としては比較的新しく新薬創出は今後に期待か

 

といったところでしょうか。

 

オーストラリアは親日国でもありますね。

日本の会社さんとのコラボも増えていくのかな?