さて、続けて投稿しますが、今回はいよいよ最終回です。
まず冒頭に、Moogleさんから頂いた、
グローバル視点で見た日本の製薬業界の強み
について、
深く共感する内容でしたので、少し脚色しつつご紹介したいと思います。
(以下21行)
ーーーーーーーーーーー
日本は、Appleの様な企業は生み出せませんでしたが、松下電機やトヨタを生み出してきました。
こんな課題があるから解決したい、こんな要求があるから応えたい、
日本人は実に、現実的な課題に対して力を発揮する国民と言えるかもしれません。
今の日本の課題は何か?
世界一の長寿国である事、それ自体は問題ありませんが、
・死亡原因の1位である「がん」
・認知症を含む「中枢疾患」
(罹患率自体は他の先進国よりも低い様ですが、患者の絶対数は多いと言えます)
・その他の高齢者ならではの疾患
これらが医療における現在の日本人の取り組むべき大きな課題である事は間違いないでしょう。
研究開発の立場から見ると、こうした疾患は国内に臨床上の知見の蓄積も多く、患者さんも多数いる事になります。
つまり、世界から見た日本の製薬業界は、
長寿国ならではの研究優位性を持っている
と言えます。
新薬開発にあたっては、机上論理だけで開発を進める事も多いなか、
大学等、臨床現場に近い機関と開発早期段階からタイアップしながら、疾患に対する理解を深めつつ開発を進めるのがベストと言えるのではないでしょうか。
ーーーーーーーーーーーーー
なるほど、
日本の新薬開発の強みは高齢化社会である事、とのお話。
このまま突き進むのが良いと。
一方で世界を見た時、
現在の日本とは健康問題が違う国々が沢山ある、という現状はあります。
昔の日本同様、感染症や乳幼児の死亡が最も大きな問題になっているエリアがあるという事、
同じく循環器系疾患が死亡原因の一位を占める国が多いという事、
目下の日本における開発品は、がん関連や、中枢疾患治療薬、その他の希少疾患などに偏っています。
上記の様な「かつての日本の病」が問題になっている国々でも、こうした新薬の需要は当然ある、と言えるでしょう。
例えば乳がんなどは、平均寿命に関わらず罹患率の多い国と、そうでない国があります。
しかしながら、総じていえば、日本の国民(先進国)に合わせて研究開発を進めてきた医薬品の多くは、
やはり先進国でこそ需要に応える事ができると言えるかもしれません。
逆に言えば、将来、発展途上国や新興国の多くが経済成長し、長寿社会を迎えた時、
今の日本の開発品や医療技術が生かされる
かもしれません。
新薬に関しては、当然、タイムラグによる特許切れの問題はあります。
上市後10年なりのうちに需要のあるエリアに優先的に進出するしかありません。
しかし将来、新興市場を凌駕しておくために、今から途上国専用のマーケティングや新薬開発に取り組むといった戦略があっても良いかもしれません。
アフリカに関しては、
未だ衛生面の悪さから発生する疾患などがあります。
衛生に関しては、日本の製薬会社ができる事があるのではないでしょうか?
製薬会社、化成品会社、商社などがタッグを組んで進出するという発想があっても良いかもしれません。(Moogleさんご意見)
南米に関しては、希少疾患の状況がヨーロッパと似ていると言われているようです。(Moogleさん情報)
なるほど、インディヘナに併せ、スペインとポルトガルからの移民、戦後にヨーロッパから移住したユダヤ系移民など。
こと、チリ、アルゼンチン、ウルグアイについては、ヨーロッパ系人種の色濃い国となっている様です。
チリなどは長寿化が進んでおり、医療事情もそれなりに整っている様です。
こうした背景から、南米大陸については、これから日本の製薬会社の進出が進む事は期待できるでしょう。
次に、
16 億人市場のイスラム圏への対応として、
ハラール医薬品の研究開発を進めるという方向性はどうでしょうか?
知らずに勝手な事を言いますが、既存薬で、すでにハラール認定を取れる薬はないのでしょうか?
製造工程でアルコールも使えない、となるとほぼ全滅という事?
宗教的な難しさからか、このあたりの研究発表が公に出て来ない事は謎ですが、
ハラール医薬品については、一部の欧米メガファーマが開発を進めているという事、
化粧品業界では日本国内のメーカーの多くが既に認定を取得している事などから、
先陣に学ぶのが良いかもしれません。
次に、世界的な新薬開発競争の方向性について軽く触れたいと思います。
近年、各国の産業政策に伴う製薬会社の増加と、新薬開発企業の増加が顕著になってきています。
今や、タイやフィリピンまでも新薬開発に取り組む会社があったりします。
今後、タケノコの様に現れて来る事でしょう。
現実問題、一部研究資材の取り合いも始まっています。
製薬協政策研ニュースによると、例えば、中国の開発品目は、先進国の「流行りもの」が多く、目新しさに欠けている様だとの事ですが、
こと、こうした国々が取り組む研究は、開発競争も激しくリスクも大きいと言えるかもしれません。
日本としては、創薬の歴史や研究基盤をもって、後発国の3歩4歩先を行く必要はあるでしょう。
(すんごい生意気な事を言ってしまってすみません)
新薬開発メーカーとしては、今までの研究設備や人員、知見を存分に活かす事、
すなわちアカデミア等から、より良いシーズを見つけ、共同開発につなげる事が大切と思われます。
開発初期段階で出来る限り臨床現場に近いところの情報を仕入れながら、
それが上市される10年後の患者さんセグメントや層別を予想し、
また、臨床からの意見を取り入れながら、標的や作用機序によってはバイオマーカーの開発を同時に行い、臨床試験をイメージしながら初期開発を進める事が大切、と言えるでしょう。
(Moogleさんご意見)
一方で、日本の研究力については、論文本数にも表れていますが、残念ながら衰えつつある事を認めざるをえなくなってきています。
原因は、少子化(若手研究者の減少)や、基礎研究に対する余力の喪失、ドクターの減少、学力低下など、社会構造的な要因から来るものではないでしょうか?
日本の製薬産業は、長年、研究開発、申請、製造、マーケテイング販売等、全ての工程を保有してきました。
また、総じて資金力もあると言えるでしょう。
こんな事を言うと文部科学省に怒られそうですが、
こうしたノウハウや資金は、国内のアカデミアやベンチャーのみならず、海外のアカデミアやベンチャーとの連携や研究シーズの具現化にも生かす事ができるはずです。
シーズの発掘もこれからはグローバルに広げる必要があるでしょう。
さて、
締めに入ります。
今回の調査で自分は、10年足らずで海外売上比率を60%まで引き上げた、日本の製薬業界の底力を改めて知りました。
今はまさに世界開拓時代の様相を呈しています。
攻めて攻めて攻め、
立ち止まる事ができない。
その様な厳しさや気迫を感じています。
こうした状況の直接的な要因を作った厚生労働省ですが、
今回の調査の中で、PMDAのご努力の片鱗をいくつか発見する事もできました。
例えばブラジルやオーストラリアの行政と交わされた、医薬品の申請にかかる協力関係の構築などです。
おそらく薬価引き下げなどのブレーキをかけた一方で、国内企業の海外進出を後押しする姿勢もあるものと推測します。
今後、製薬各社の上の方々は、
世界の医療事情と、自社の技術、開発品、販売品を照らし合わせては、
次はどこへ?
その場合に何を?
という思考で戦略を練っていくのではないかな?
と勝手ながら想像します。
日本人のパスポートは、世界で一番行ける国が多い、という事はご存知でしょうか?
それだけでも有利なのです。
円もそれなりに強く、国家は安定しており、
比較的信頼も得やすい。
これからマーケティングがより重要になっていく事でしょう。
あと、語学力や説明力もですね。
長くなりましたが、
最後までお読み下さりありがとうございました。
また、途中途中で情報を下さった方々にも感謝致します。