喜劇 眼の前旅館 -41ページ目

喜劇 眼の前旅館

短歌のブログ


先生と大きな墓に入りたい夜明けまで蠅に逐われながら


授業中電話に出ても下駄音が歩くだけ耳を廊下のように


みずいろのとかげを踏むと消えている 教室がその隙にふえている


更衣室から火の匂い届くけど風向きは逆 はためく並木


歯に睫毛つくようなことしてきたとごめんなさいの後でささやく

落葉にぎりつぶす音でもないよりはましな二人の遊ぶ静寂


トンネルに出口を作る計画をあなたの声がはなしつづけた


木星似の女の子と酸性雨似の男の子の旅行写真を拾う


どぶの匂い梨の匂いとまじりあい坂はくるくる下るさすがだ


先生に私たちだけのスイッチもつける 迷路の施錠のように

星にひび よろけたピアノ止む前に眠れるといいな歩きながら


楽譜読める人なら誰でも尊敬する売春婦に馬鹿にされたかった


黒板にグラビアモデルの輪郭が消えずにたどりつく朝の門


草に水遣る旅だけど教壇を通らなきゃあの草に行けない


行き止りや隙間に咲いたコスモスが敏感だった今朝の散歩は

釣り人を近頃みない橋をゆく 川風が髪に残す花びら


私には宛て名のようにドアがあり笑うときかるくほぞがひきつる


鍵は落葉にまじって踏まれてるきみが次のフェイズを見にゆく前に


遮断機のむこうで降る夕立ちをつい凝視する点滅がまだなのに


線路には線路の滝があることを誰か手紙に書いて丸めた
 開始 17:25

前髪がのびるはやさで垂れてくる水に映っていた空の雲
集金袋から覗くたび蝶がとぶ集金人のことはよろしく
地方局アナウンサーが飼い殺す鸚鵡に気まぐれにえさをやる
防寒ジャンパー一着五千九百円半額セールを待ち火をつける
枯れ草に積木をおいて肩の荷をおろしたようにめがねの曇る
焦げた土にぽたぽた爪先をたらす歩道はどこかばかり気にして
料金所遠のいてゆく天麩羅をほおばる味がラジオからする
親の目に海がうつると水面をめがけて噴き上げる息の泡
(知らなそうな人をねらって訊く道を冥王星のひかり頼りに)

 終了 19:00