忘れてた米屋がレンズの片隅でつぶれてるのを見たという旅 我妻俊樹
連作「案山子!」(『風通し』その1)より。
『風通し』の合評ページで連作中とくに俎上に載せられた歌ということもあり、その後もいろんな場所で言及される機会が多くて、私の歌の中では一番人目にふれたし批評の対象にもされた歌ということになるでしょう。
この歌はもともと「忘れてた本屋が駅の北口でつぶれてるのを見るという旅」たしかこんな感じの歌としてストックしていたのを、連作を編むにあたり上記のようなかたちに改作したのでした。
改作前の状態でも全然私の基準では人前に出せる歌だけど、連作の場合私の意見より連作自身の意見が尊重されるので、顔色をうかがいながら手を入れていってああいうかたちになりました。それは私にとっては多く偶然による結果で、結果に対しやや不本意でさえありますが、「案山子!」という連作にとってはかなり必然の、こうなる以外にないという結果だったのだと思います。連作ってそういうものですよね。ルールが発生するというか。