題詠(4) | 喜劇 眼の前旅館

喜劇 眼の前旅館

短歌のブログ

てっぺんが星屑になってる組織とか顔に小径のある阿修羅とか

無責任にきれいになりながら雨を飲む右翼手に初秋世界を託す

王冠にみえるほど私たちは同類だ 炊飯器ひざのすき間に光り

*

秩序がカーテン着て歩いてるような部屋だから窓には鍵が錆びついてるわ

十日目の赤ん坊の胸の中のロンドン きりのないながい橋の話よ

うまれた時から小指が赤い意図で(おや、あれが終電ではなかったようだ)

逃げるように藤棚は延び痴漢だけが気づく貼り紙だろうか月は

(愛国心に慣れない左手でエロチックな名をつけて可愛がる)→(発達する)

愛が駅に変わるのを車内広告の裏で焦がれて待つ愛の日々

髪と切れた電線が繋がるような馬鹿は、よもやすみれさん、袖口に蛇口

私に似た引越し屋がおまえを家具として搬ぶのに立派な理由がいるのか

ミスターまたはミセス・クリックを待ちぼうけて腫れた耳朶くらべ合うのみ

係累に加えてくれないか百円で雨の夜は雨のふりをするから

わさびだけ爪先まできつく充たされて見張るとびらを漏るうす暗さ

あれが幕張駅だと地鳴りを指させば電車の中をあるいていった

常識の庭だとしても枯れ果てて瞼をあけては眠れなかった

無料娼婦自分だけの街路樹を信じてる 無料警官ひげの中に芝生

来年もお逢いしましょう泥棒と見張りの西瓜畑の夜に

首すじにからみつくゆうべの風船を泡のように吹く少女ソムリエ

黄色い表紙の街に暮らす なりわいから災いまで駆け足で読まれ

雨でおまえの横つらを撲りあかしたい 言い訳をニュースのように聴きたい

さえない女が夕日を浴びた堰堤と同じ色になって縄跳びしてる

さえない女が花束をよれたシャツに入れ「妊娠したわけじゃないの」と言う

手首だけ日なたに出して話してる休みのつづくファミレスの裏

式場で姉妹はつづきの地図柄で見るたび交互にうらんでいた

*

魔法瓶と海賊盤の町へようこそ キャタピラの傷たどれば迷う

黒っぽいピンクに塗られ今日かぎり閉めきる支店のようなるまぶた

どの顔も目鼻が飛んでひかってる林の坂に午後をむかえて

鏡には選挙カーの窓で手を振っている菊人形 いかがな旅を

雀斑だらけでがりがりの胸ルーシーは日本人穴のたりないフルート

片隅でレジを始めるまだ店は始まってない土間が与えられる

夏休みがCDになって割れていた よくあることがわれらにこたえる

右側に瀬戸内海をくりかえしヒントのように怖れて暮らす

肩に書いたほくろ一つをひからせて西新宿は手を振れる距離

いつかおまえと崖に住みクイズ王になった娘の四十歳を祝いたい

すごく眠い河口に見えてしかたない他人の手紙に割り込んで怒鳴る

メキシコの、あるいは弾丸鉄道の切符が払戻されて砂に

「フリーセックス」と大きく書けば夕焼けに指揮するおばさんと看做される

つままれたような鼻した娘たちを言葉がしばし闇にみちびく

身をかくすシャツも紫煙も静電気さえもあなたといえば世田谷

観覧車ひとつずつ倒れ見透しが好くなってゆくある日ぼくらは


題詠blog2009 031~100(34以降は未投稿。55以降は欠番あり))