鍵かけて展望台に山羊を飼う きみにひとことの相談もなく 我妻俊樹
これは三年以上前に歌会に出す用につくった歌です。「台」の字での題詠ですね。
「ひとことの相談もなく」というのはもちろん慣用表現で、相談があってしかるべきだったのに、という相手への非難を込めた言い回しだと思いますが、ここではそれを自分自身の行動を言うのに使っている。
あと、鍵かけて動物を飼う場所が、閉じ込めるというイメージにそぐわない展望台であるということ。そこにあるものを鑑賞するのではなく、そこから景色を観賞する場所である展望台(しかも高いところにあるはずだし、個人の所有する施設には普通ない)をわざわざ選んでいること。
そのあたりが気になるところから、読みはじめられる歌になっているのではと思います。鍵というのも私のよく使う言葉かもしれない、と今思いました。