というわけで歯医者に行ってきた。レントゲン撮ると虫歯は神経に達していたので、削って神経抜いた穴を何回か洗浄したあと、金属の土台をつけてその上に歯をのっけるという説明。四、五回通うことになる。
今は飴みたいな触感のものが仮に穴に詰まっている状態。舌でさわると柔らかいのがちょっと不安。一回目の会計は四千円弱。鎮痛剤としてロキソニンが出た。
しかし大物の虫歯がひとつ失われてみると、その他まだいくつもある小物の虫歯が口の中でそれぞれかすかに疼いているのが感じられてくる。気のせいかもしれないが。
「ファンタスティック・プラネット」(ローラン・トポール)という73年のアニメ映画を見た。人物の顔やポーズが諸星大二郎の絵にそっくりで、諸星は絵といくつかのアイデアの点であきらかに本作を参考にしていると思う(諸星のデビューはこの作品の制作年より早いけど、現在の作風が確立するのはたしか74年頃)。実際好きな映画のベストテンのような中に本作を挙げてもいるようだ。もちろん好きな作品だから影響を(少なくとも表面上は)受けるとは限らないし、好きでもない作品から影響を受けることもあるわけだが。
先行する作家の模倣から創作をはじめ、やがてその影響を脱して個性を確立していく…というのはよく聞かれる創作観・作家誕生のストーリーであるが、私はこれは部分的にしか正しくないと思う。強度の高い作家性というのはかなり早い時点からある者にはあって、ない者にはないのであり、模倣の経験は作家性をけしかける刺激や、作家性を目に見えるものにする画材のようなものだと思う。結果、模倣をやめる場合もあるだろうけど、そのまま作家性を具体的にするアイテムとして取り込んでしまう場合もある。何か先行する作家や作品とそっくりな部分を残していても強靭な作家性、というのはありうるし、逆に一見何にも似ていないんだけどひ弱な作家性もあるのだ。