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Scene no.3-22
start
グリーンワールドの天はブルースカイに覆いつくされ
僅かな真夏の雲が陽気に浮かぶ。
グレイロードにアスファルトの白線が果てしなく連なっており、
先は蜃気楼のように霞んで見える快晴だ。
その日、タカネはタケシからの紹介で人と会うことになっていた。
昼過ぎの三時頃が都合がいいということで
午前中の二時間程オンリードライブを楽しむ羽目になった。
法定速度を遵守したかは不明。
遥か遠く車はひた走り待ち合わせの場所に赴く。
定刻よりも一時間程早く現地に到着し、
見知りの料理屋で遅めの昼食をとる事にする。
暖簾を潜り抜けると、料場から板長の面長なハンサムスマイルが会釈をした。
おススメメニューは
公魚【ワカサギ】の天麩羅が旬らしく 天麩羅定食を注文する。
和服を着た若い仲居さんが料理を盆に載せて運んできた。
小柄ではあるが和服姿が絶妙の仲居さんは、
笑顔が魅力的な女性で 左薬指にはキラリと光るリングをしている。
しかし、視線の矛先は眼下に広がる。
小鉢に盛られた天つゆにおろし生姜とおろし大根がいっそう風味を際立て
舌鼓を打っているときに携帯が鳴った。
「三時に待ち合わせの予定だったが、急な用事で都合が悪くなった。」
「また、連絡するから待っていてくれ!」
受話器の向こう側から聞こえてくる彼の呼吸は少しの乱れも無く
一方的に電話は切れる。
時を楽しむのはお手の物 呑気に構えるのはいつでも特技だ。
気が付くと料理は綺麗に平らげており、
残す課題はリングの本丸の探索だけとなった。
この問題は容易に解明できる筈だ。
板長の手元を気付かれないようにそっと覘くと答えは明白である。
洞察力は相変わらず優秀である。
突如、板長が不敵な笑みを浮かべ 「タカネさん、今、暇ですか?」
「もしよかったら、ちょっと付き合ってくれません」
と根回しをしてきた。
板長は、『NO!』という文字を知らないタカネを知っているのだ。
「すぐ傍ですから 行きましょうよっ」
言われるままに 板長の車の助手席に座わる。
「すぐ 近くですからっ」 と意味ありげに微笑んだ。
その近場の意味が 随分な近場であった。
砂利道を四十分程 車は爆走し 着いたところは山の奥深く、
幸い人の住む気配は 一切感じられない・・・、
山の中腹辺りで車を止め 板長は急な勾配の斜面を登りだした。
「大体この辺なんです。」
非常に興味深いことを呟きながら 更に斜面を登って行った。
車から離れて随分歩いた。
鬱蒼と茂る林のそこには 新芽の山菜があたり一面に
ひょっこりと顔を覗かせていた。
「季料理の彩りに丁度いいんです。」
「採取するときには 根は残して置いて下さい」
「一般人が入り込んで根こそぎ持っていってしまうので
良質な食材に限りがあるんです。」
等と、神妙なことを言いながら 板長の思惑は達成されたようだった。
しかし、目的に向かい登っているときは 全然感じなかったが、
帰りの下り斜面は 絨毯とアスファルトに勤しんでいるタカネには きつかった。
腰の辺りが 軋む感じがした。
疲れ果てて 料理屋に帰ってきた頃には、
陽も落ち 先ほどの仲居さんが 夕食の支度に取り掛かっていた。
「あらっ!タカネさん、お疲れ様です。」
タカネの名前を どのようにして調べたかは不明だ。
「あの人に可笑しなところへ つき合わされちゃったでしょう」
「人の出入りの少ないところだから 一人で行くのが怖いみたいなんですよっ」
と屈託の無い笑顔を浮かべた。
「タカネさん、うちの夕飯食べて行ってねっ」
その瞬間、腹部の凹みが 腰の痛みに勝った。
仲睦まじい二人との楽しい食事が 済んだ頃に、
計算しつくされたかのように 携帯が鳴る。
ホームランはいらない いつでもタイムリーヒット。
「今、何処にいます?」
「分かりました。今すぐそちらへ迎えに行きますから そこで待っていてください。」
相変わらず一点の澱みも感じられない口調で電話は切れた。
「これから何方と遭うんですか?」
板長の質問に
「ボクも人の紹介で初めてなので よく分からないんです・・・。」
時計は午後八時を過ぎていた。
・・・つづく
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