*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・
Scene no.2-10
start
目の前に道は、ない。
漠然と広がるのは、荒れ野の泥濘なのか、はたまた イバラの道か、
皮肉に舗装された道なのか、敷かれたレールの上を歩くつもりもない。
未知なるものを 知るよしもない・・・
小さく灯りが燈る六畳間のこの部屋で、
偶然に出会った見知らぬ者同士が、枕を共にしている。
不思議な空間・・・
「ご出身は、どちらですか・・」 それとなく話しかけると、
「岐阜です。」 ポツリと言った。
「それも小さな町です。人口2万人ぐらいの町です。」
「ボクは、北海道だよっ、仕事で来てるんだけど・・・」
「祇園なんかに遊びに行って、北海道の人間は庭で、熊と遊んでいるよっ」
「な~んて言ったら、目茶ウケさっ 面白いよねっ」
話を続ける・・・
「自然が一杯で、食べるものも美味しいしさ・・・」
「日高に競馬用の馬の産地があって、そんな話もこちらでは新鮮みたいだねっ」
「ふ~ん」 彼が、聞いてきた。
「何のお仕事してるんですか?」
「実家の手伝いかな~ 紆余曲折、色々あったけど いつのまにかやってるねっ」
「君は・・?」 少し間を置いて答えた。
「俺、浪人してるんですよっ」
「そう、勿体無いねっ」
「仕方ないんです。」 掃き捨てるように言って、
堰を切ったかのように話し始めた。
「小さな町で、ちょっとデキがいいからって、周りから煽てられて・・」
「地元の新聞にも取り上げられちゃって・・・」
「この町、初の京大現役入学なんて 期待懸けられて・・・」
「結局は、地方で優秀といっても全国レベルじゃ、次元が違うんですよねっ」
一瞬、彼の表情が曇ったように感じられた。
話題を変えたかったが・・・
その後の話の続きが、こうなのだ・・・
ひとつ違いの弟さんがいて、その弟さんもやはり成績優秀だったそうだ。
翌年の春、二人は揃って別々に国立大学を受験をされて、
弟さんは、晴れて難関を突破し京大現役合格を果たした訳だ。
年上の彼は、有名私立大学を受かったものの、
国立大学は無念の涙という筋書きであった。
そして、現実を受け入れられずに、今年も・・・!?
「島崎藤村の『破壊』って知ってます?」 突然、彼が呟いた。
「そんな心境です。」
「郷里に帰りたいんですが、弟が京大現役合格で・・・」
「俺は、相変わらずの立場で、どうなると思います?」
「小さな町で、我慢できないし、妥協もしたくないんです。」
「・・・・・!」 返す言葉が見つからなかった。
「帰りたくなくなっちゃうんです。」
「あなたに会わなかったら・・・」
「今夜あのプラットホームのベンチで寝ようかな、なんて思っていたんです。」
「もうどうなってもいいやって、自業自棄になった時もあります。」
胸の奥底から搾り出すような心の叫びにもみてとれた。
「そうか、それ辛いかも知れないねっ」
「・・・・・」 会話が滞るように静寂が訪れた。
沈黙の中から 割り切れない苛立ちを感じ始めた。
「悔しいでしょうねっ」
「でも、その悔しさを噛み締めて、あなたは乗り越えなきゃいけないよねっ」
「格好悪くたって、やらなかったらいけないかもしれないっ」
「男なんだから・・・」
「悔いを残したまま辞めたとき、後で絶対に思うんだっ」
「どうしてあの時頑張れなかったんだろうって、絶対後悔すると思うよっ」
「トコトンやるしかないんだ。」
「駄目であっても、きっと後悔はしないと思うよっ」
「まだ、人生始まったばかりなんだからさ、いつでもやり直しは効くんだからさっ」
「・・・・・」 やけに静かだ。
僕たち以外に泊り客などいないのかも知れなかった。
この奇妙な会話のやり取りを聞いている人間は恐らく皆無であろうと確信した。
夜も深まり それとなく睡魔の闇が襲ってきた。
・・・つづく
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・

![]()
いつも 心は 太陽さっ チャンチャコリ~ン
(^_-)-☆
