先日、この裁判の 控訴状 の 原判決の表示 を紹介させて頂いた↓。

 

 

 

↑で、裁判所は、とにかく、法律、法律 というところです。

 

その怖さを知っておいた方が良いかと思うので、上記の 訴状 についても紹介させて頂きます。

(詳しい資料は、上記サイトにアクセスすれば、確認できます。)

 

訴状

https://www.call4.jp/file/pdf/202012/a7863ba161cefabbce464463f59ba29c.pdf

 

この 訴状 にアクセスして、一番下のひとつ前のページから、原告(黒塗り部分)、訴訟代理人、被告が記載されています。

 

これは、民事訴訟法134条2項1号において、当事者及び法定代理人を記載しなければいけない旨が規定されているからです。

 

けど、ここから先が大事なのです。

 

判決文

https://www.call4.jp/file/pdf/202206/b515d873063c7fe36a59522b52f16ea1.pdf

 

最初のページの2行目に、以下のとおり、事件番号が書かれています。

 

 

令和2年(行ウ)第455号 持続化給付金等支払請求事件

 

 

ポイントは、「行ウ」の文言です。

 

これは、第1審の行政事件である旨を示しています。

 

つまり、民事訴訟法だけでなく、行政事件訴訟法も確認する必要があるのです。

 

 

ピンポイントで説明すると、行政事件訴訟法11条1項 及び 4項 、同法38条1項です。

 

つまり、この事件では、

 

被告 国

処分行政庁 経済産業省

代表者 ○○経済産業大臣

 

とすべきです。

 

 

このほかにも、請求の趣旨にも問題があります。

 

行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟は、抗告訴訟になります(行政事件訴訟法3条1項)。

 

なので、処分の取消しの訴え、裁決の取消しの訴え、無効等の確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務付けの訴え、差止めの訴えでなければいけません(行政事件訴訟法3条2項以下)。

 

今回の事件は、「給付金を支給して下さい!」とするものです。

 

つまり、私には、「貰う権利がある!」というもので、言い換えれば、国には、「支払う義務がある。」という類のものなので、上記の 義務付けの訴え に該当します。

 

この場合、行政事件訴訟法37条の三の1項、2項、3項が絡んできます。

 

つまり、義務付け訴訟をする場合には、併合して、不作為の違法確認の訴え、処分の取消しの訴え、無効等の確認の訴えをする必要があるのです。

 

 

今回の裁判関連資料を見る限りでは、これらの記載がありません。

 

 

もし、あなたが裁判官なら、法律の要件を満たしていない訴状が提出されたら、どのように対応しますか?

 

僕なら、門前払いしますね。つまり、却下。

 

 

却下・・・中身を検討することなく、訴えを退ける

棄却・・・中身を検討した結果、訴えを退ける

 

 

 

しかしながら、地裁の判決文の主文は、以下のとおり示されています。

※ 確認したい方は、↑の判決文にアクセスしてください。

 

主文

1 本件訴えのうち、確認請求に係る部分をいずれも却下する。

2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

3 訴訟費用は原告の負担とする。

 

 

なぜ、このような主文になったのか?...ですが、これは、被告が 答弁書において、このような判決を求めたからです。

 

答弁書

https://www.call4.jp/file/pdf/202104/32f62ebaf6d9c40c97d9717e36cb21dc.pdf

 

 

...。

 

 

ここから先の話ですが、僕自身、まだ、確信を持って言えないことですが、おそらく、そうだろう...って感じのものですので、あくまでも、参考に留めておいて下さい。

 

 

もし、この事件において、被告側から、上記の要件を満たしていないとして、却下を求めたらどうなるかです。

 

原告側が、それでも自分が正しいんだ!...という姿勢のまま裁判が進むなら、有効でない訴状なので、訴えの内容を詳しく調べもせず、適当な理由をつけて、訴えを退ける...つまり、被告側が勝訴となる...と考えるのが妥当だと思います。

 

けど、原告側が、被告の主張を理解して、訴状を訂正したり、訴えを変更する権利があるので(民事訴訟法143条)、瑕疵ある部分を治癒することが可能となり、有効な訴状となり、訴えの内容を詳しく調べた上での判決となってしまいます。

 

詳しく調べていくと、被告が敗訴となってしまうおそれがでてきてしまうので、原告の訴えが、不適法な場合、知らんふりしているのが、最大の防御ということになります。

 

 

また、裁判官には、釈明権がありますが、行使するか否かは、裁判官の裁量(好き勝手)によります(民事訴訟法149条)。

 

釈明権・・・分かりにくいところや、不足している点を、質問して確認する権利

 

 

ややこしい事件であればあるほど、裁判官としては、間違いたくない!という心理が働くかと思いますので、釈明権を行使せず、不適法のまま裁判を進め、裁判を早期に終わらせたいという心理になるのではないでしょうか?

 

裁判官にしたら、そもそも、訴訟書類を作ったのは、法律の専門家である弁護士なので、恨むなら、そいつを恨め!ってなってもおかしくないと思います。

 

いずれにせよ、法律要件を欠いた書類を提出することは、絶対に避けるべきではないでしょうか?