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財政再建は終わりました

主に経済関連について不定期更新します。

「財政再建を問う-財政赤字よりも大切なこと」という143ページにわたる長い資料が2万viewを超えた記念に資料の解説ブログをしたいと思います。
概ね資料の目次に沿って解説していきます。
解説は不定期更新です。

今回は資料の10~14ページを解説していきます。

基礎知識編その3として、グロスネットについて解説します。

前回の記事ではフローとストックを解説しましたが、そのストックの指標を見るのに役立つのが今回の記事です。

簡単に解説すると、

 

グロス:総額

ネット:純額

 

グロスの説明として、総額を使いましたが、粗額とも言います。
財政に絡めると、グロスは総債務です。ネットは純債務です。

純債務=総債務-総資産

純債務とは総債務から総資産を差し引いた値です。つまり、資産をいくら持っているかを考えた上での数字です。
例えば、
A国は債務を1兆円負っていますが、資産を1兆円持っています。
純債務は0円です。

B国は債務を1兆円負っていますが、資産を1円も持っていません。

純債務は1兆円です。

以上の2例を取ってみても、債務の重さはだいぶ違います。もし何かあった場合に、A国は資産を売ることでどうにかその場をしのげます。しかし、B国は資産を持っていないので、破産します
財政の持続可能性を考えるうえで、ネットで見ることは大切だということがわかります。

「いやいや、でも資産を売ることはですねry」みたいな話は追々説明しますのでお待ちください。

財政について考えるうえで重要なのは、統合政府という考え方です。

統合政府とは政府と中央銀行を合わせた総称のことを言います。
中央銀行は広い目で見れば政府の一部として見ることができます。政府の子会社と言って差し支えありません。
中央銀行が保有している政府債務は事実上償還の必要がありません。
そして、利払いも必要経費を除いて国庫に納付されるので利払いの心配もいりません。

中央銀行へ債務を償還する。つまり、借金返済をするということは政府が市場からマネーを吸い上げるということです。これは物価を押し下げるデフレ圧力になるため、基本的には必要ありません。半永久的に中央銀行の資産として借換し続けられるものです。

以上のことから、中央銀行がいくら政府債務を保有しているかもしっかり考えたほうが良いということがわかります。詳しい話は後のブログで解説します。
 

次にこれからフローやストックの数値を見せながら解説していくわけですが、対GDP比を多用していきます。ただ単純に〇○兆円、○○億ドルとは言わないわけです。

まず、対GDP比に使われるGDPは実質GDPではなく、名目GDPです。

名目GDPは一国の経済規模を示し、税収の源です。

そして、個人で1億円は大金ですが、日本経済全体からすると、0.00002%に過ぎません。1兆円ですら、対GDP比で0.2%程です。

そして、他国と比較する場合に対GDP比という指標は使い勝手が良いです。一国の経済規模に対してどれくらいかを比べれば、財政であれば、どれほど良いのか悪いのかわかります。

 

基礎知識編をまとめると、

  • 財政再建とは、債務対GDP比を安定的に推移させること。
  • フローとストックを使い分けること。
  • グロスだけを見るのではなく、ネットを見ること。
  • ネットを見る際は、中央銀行を含めた統合政府で見ること。

以上のことを踏まえて、これから財政の数値を見ていきましょう。

 

今回はブログを作るにあたって、再度参考にした文献はありません。

「財政再建を問う-財政赤字よりも大切なこと」という143ページにわたる長い資料が2万viewを超えた記念に資料の解説ブログをしたいと思います。
概ね資料の目次に沿って解説していきます。
解説は不定期更新です。

今回は資料の8、9ページを解説していきます。

前回の記事「財政再建とは何だろうか? 」では財政再建、財政破綻について定義しました。基礎知識編その2としてフローストックについて解説します。
財政再建について話をするとき、フローについて話したいのか、ストックについて話したいのか区別できない人がいます。

 

フロー:一定期間での状態の変化量

ストック:一時点での存在量

 

経済に結びつけましょう。

フローの数字はGDPです。
GDPは四半期、暦年、年度(会計年度)で指標が出されます。

四半期は4月から9月までとか。暦年は2016年1月から12月とか。年度は2016年4月から2017年3月までとか。

 

ストックの数字は国富です。

国富と言ってもGDPよりも馴染みが深いわけではないし、そもそもそんな指標があるのかと思う人もいると思いますが、実は「国民経済計算」にちゃっかり載っています。

国富をざっくり説明すると正味資産です。非金融資産と対外純資産の合計値ですね。

因みに、平成27年度末は3290兆円の国富があると計算されています。名目GDPが532兆円ですので、フローの6倍以上の資産を持っているということですな。

 

話がそれましたが表にまとめるとこんな感じです。

財政を考えるうえで、フローの目標は何であって、ストックの目標は何であるのかを考える必要がありそうです。

やみくもにPB黒字化とフローの目標を掲げても、最終的にストックをどうしたいのかを明らかにしないとゴールが見えません。

ブランシャールの定義によれば、債務対GDP比を安定的に推移させれば良いわけです単年度のフローの数字に注目するのではなく、長い視点を持つ必要があります

財務省は2020年度までにPB黒字化2021年度以降に債務対GDP比の安定的引き下げというフローとストックの目標を掲げています。何をもって財政再建をしたと言えるのかは不明確です

例えば、PB黒字化は何%以上必要なのか

債務対GDP比が安定的な引き下げられた数値は何%か

ゴールがいったいどこなのかわからないといつまでたっても財政再建を言い続けることになります。

因みに、EUに加盟するには財政収支対GDP比-3%、債務対GDP比60%の条件をクリアしなければなりません。

 

以上がフローとストックの話です。
まるで財政再建派みたいなブログかもしれませんが、ご安心を。

次回のブログまで基礎知識編なのでもうしばらくの辛抱です。

 

参考文献

財務省「日本の財政関係資料(平成27年9月)Ⅳ.財政健全化に向けた取組み」
http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/201509/201509_4.pdf

内閣府「国民経済計算」
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html

「財政再建を問う-財政赤字よりも大切なこと」という143ページにわたる長い資料が2万viewを超えた記念に資料の解説ブログをしたいと思います。
概ね資料の目次に沿って解説していきます。
解説は不定期更新です。

 

さて、世界中どこでもそうですが、財政再建の名をかたらずして経済を語れないという風潮があります。財政を立て直すために歳出カット増税などの緊縮財政から、経済成長による税収の回復などなど。

私のような庶民からすると、「そもそも財政再建って何ぞや」ということを思う方も少なくないかと思います。

財政再建ってなんだろうか?と思いつく限り挙げてみます。

  • 債務を全て完済すること。
  • 財政収支を黒字にすること。
  • プライマリーバランスを黒字すること。
  • 名目GDP成長率が名目利子率を上回ること(ドーマー条件を満たすこと)。
  • 債務残高対GDP比率を収束させること。

私が思いつく限りではありますが、それ以外の意見も以上の5つに尾ひれがついて様なものだと思います。
財政再建を定義しないままに話を進めても話があちこちに飛んでしまいますので、ここで定義してしまいましょう。

 

財政再建=財政の維持可能性

 

つまり、「財政の維持可能性を保証できるような財政運営をして行きましょう」ということです。

財政破綻しないように財政運営しましょう」ということでもあります。

じゃあ、財政破綻を定義しなければならなくなります。

 

ラインハートとロゴフの共著である『国家は破綻する』には以下のように定義されています。

  • 政府が対外債務または国内債務またはその両方の返済を怠ること。

財政破綻とは「債務の返済ができなくなること」ということになります

債務を借換し続けられなくなったら財政破綻とも言えますね。

 

次に、IMFのチーフエコノミストであるオリビエ・ブランシャールは以下のように定義しています。

  • 政府債務の対GDP比を安定的に推移させながら、現在の財政政策態度を維持できるとき、財政は維持可能である。

税率を⼀定にしたままで、債務対GDP比が発散する状態を財政破綻ということです。これをブランシャールの定義といいます。

図示すると以下のようになります。

債務対GDP比率が上昇しすぎるといつか破綻するかもしれないという仮定の話です。

例えば、債務対GDP比が1万%を超えたら流石にヤバいかもしれません。じゃあ、何%くらいがちょうどいいんですか?という話になりますが、ここではおいておきましょう。

 

おさらいすると、

  • 財政再建とは財政の維持可能性を保証するような財政運営を行うこと。
  • 財政破綻とは債務の返済が滞ること(借換できなくなること)。
  • 財政破綻とは債務対GDP比が発散すること。

今回は資料の7ページまでです。

次回はフローとストック、グロスとネットなどについて書きます。

 

以下は参考文献です。