テンペスト @METライブビューイング | Mevrouwのブログ。。。ときどき晴れ
久々にMETライブビューイング。
テンペストのアンコール上映@アムステルダムツキンスキー劇場

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作曲・指揮:トーマス・アデス
演出:ロベール・ルパージュ
出演:サイモン・キーンリーサイド(プロスペロー)、オードリー・ルーナ(妖精アリエル)、イザベル・レナード(ミランダ)、アラン・オーク(カリバン)、イェスティン・デイヴィーズ(トリンキュロー)、トビー・スペンス(アントーニオ)、アレック・シュレイダー(フェルディナンド)、ジョン・デル・カルロ(ゴンザロ)

若手作曲家トマス・アデスがキーンリーサイドを主役にと思い描き作曲したオペラ。
キーンリーサイドとしては、オレにこれ歌えるのか?と驚いたというが、
脱いでもすごいでしょ、という俺様キャラの彼にとって、
自分のために作られたオペラというのは悪い気持ちはしないでしょう。

シェイクスピアの原作とはちょびっと違うがほぼ同じ筋。

絶海の孤島に住むプロスペローと娘のミランダ。
実はプロスペローはナポリ王国支配下の都市ミラノの大公だったが、
弟のアントーニオに裏切られ失脚。
娘と二人で命からがら王の腹心ゴンザロに助けられて船で島に逃げたのだ。
島に住んでいた魔女の威力に魅せられ魔法を研究し身につけたプロスペロー。
やがて魔女が死に、彼女が捕まえていた妖精アリエルを手下にする。
ナポリ王一行と弟が船で出たことを知り、
プロスペローはアリエルに嵐を起こさせ船を難破させる。

漂着した王の息子フェルディナンドはミランダとひと目で恋に落ちる。
ミランダは父に背き、フェルディナンドと一緒に逃げる。

いっぽう、魔女の息子カリバンはケダモノの姿ながら、
ミランダといつかは結婚しプロスペローを追い出してやろうと思っていた。
道化のトリンキュローたちをそそのかし、プロスペロー暗殺を企てるが、
全く手に負えないまま逃げ去る。

復讐のみしか考えないプロスペローだったが、
娘がフェルディナンドと恋に落ち、親元を離れていくのを呆然と見る。
讒言をいれ自分を追放したナポリ王は息子のフェルディナンドとはぐれ、
溺れ死んだものと思い嘆き悲しんでいる。

プロスペローが王たちの元に姿を表すと、
王は自分の最愛の息子を失ったのは天罰であろうから許してくれと、
プロスペローに乞う。
プロスペローは、おまえの子は無事で自分の娘と結婚したいらしいと告げる。
喜ぶ王。
プロスペローはナポリできっと良い結婚式をあげてやってくれと頭を下げる。
そして復讐劇は終わったからと、裏切った弟にも許すと告げたが
弟のアントニオ自身はその恥辱のなかで生きるのは辛すぎる、と去っていく。
アリエルも去り、一人になったプロスペローはどこへともなく去る。

やはりひとりきりになったカリバンが現れ、
みんな何処へ行ってしまったのだ。
あれはみな、このカリバンのユメだったのだろうか、とひとりごつ。

前年度のMET プロダクションのEnchanted Islandも、
テンペストをもとにした楽しいバロックオペラだったが、
今回は現代曲。

キーンリーサイドが主役で、
もろ肌脱いで、左肩に軍服をひっかけてでずっぱりではあるが、
案外歌は印象に残らず。
ただ、演技は渋すぎるほど光っており、
さすがに作曲家に惚れられる男だなと思う。

圧巻なのはアリエルのオードリー・ルナ。
名前からしてアヤシイ彼女は、
このオペラでは存分な活躍。
機械のような高音、
爬虫類のようなカラダの動き、
ポールダンサーのようなしなやかさで、
文字通り人間離れしていた。
このヒトがフツーの美人だったら間違いなくお姫様役に引っ張りだこだろうな。


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そして、ゴンザロが「イマジン」のような歌を歌うのが、
なかなかに若い作曲家らしくてよろしいなと思った。
歌がもう少し上手ければさらによいのだけど、、、。

ラストになり、実はこのオペラの主役はカリバンではないかと思いいたる。
彼の最後の歌。
醜い姿で孤独で、かつ頭も働かないことを自覚している不幸。
全てはオレの夢だったのだろうか、と、呆然と歌うのだが、
これがなかなかよかった。
現代曲ながら、しみじみと響く。
歌手がEnchanted Islandのときのルカ・ピサロニだったらなあ、
とか、贅沢なことを思ってしまった。


このオペラのなかでは珍しいデュエット。
まるでミュージカル南太平洋みたい。