Meta Theorem(heavy–LP 還元)の論文化

備考. 本定理は条件付きの還元定理であり,現在の段階では
[仮定 H], [仮定 K], [仮定 C] および (\mathrm{Ineq}) は証明されていない。

著者の別稿では,これらの仮定を Collatz 軌道の有限オートマトン解析と
log–LP によって確立することを目標とする。

0. セットアップと記号

まずは、定理文の中で最低限必要な量だけを整理しておく。

[定義](Collatz 写像と周期)

奇数列 (m_k){k\in\mathbb Z} が
3m_k + 1 = 2^{k_k} m{k+1},\quad k_k\in\mathbb Nを満たし,ある T\ge 1 について m_{k+T}=m_k がすべての k について成り立つとき,
(m_k) を Collatz 写像の周期(周期長 T)と呼ぶ。

さらに m_k>1 がすべての k で成り立つとき,これを非自明周期と呼ぶ(標準周期 1\to4\to2\to1 は除外する)

[定義](型と O₃ 平均指数)

各 m_k について k(m_k):=k_k=v_2(3m_k+1) とする。

「型」\tau(m_k)\in\{1,2,3\} を
\tau=1(O₁):k(m_k)=1
\tau=2(O₂):k(m_k)=2
\tau=3(O₃):k(m_k)\ge 3

と定める。周期上で O₃ が現れる比率を

u := \frac{\#\{k:\tau(m_k)=3\}}{T}

とし、そのうち k\ge4 のステップの比率を

u_{4+} := \frac{\#\{k:\tau(m_k)=3,\ k(m_k)\ge4\}}{T}

と書く。

O₃ 上の平均指数

\mu_3 := \frac{1}{u}\sum_{\{k:\tau(m_k)=3\}}k(m_k)

は恒等式

\mu_3 = 3 + \frac{1}{u}\sum_{k\ge4}(k-3)u_k

を満たす(ここで u_k:=\#\{k:\tau(m_k)=3,\ k(m_k)=k\}/T)

特に

\mu_3 \;\ge\; 3 + u_{4+}
\tag{E}

が成り立つ。

[定義](危険ブロックと危険長さ率)

O₁ ブロック型 (\ell,r) の有限集合 \mathcal K を「危険集合」とし,
周期上の O₁ ブロックのうち危険型に属する総長さを a_{\mathcal K}、
総 O₁ 長さを a とする。O₁ の頻度を p_1:=a/T とするとき、

\gamma_{\mathcal K}^{\mathrm{len}}
:= \frac{a_{\mathcal K}}{a}

を「危険長さ率」と呼ぶ(危険 O₁ の割合)

O₃ の出現比率を
u := \frac{\#\{k:\tau(m_k)=3\}}{T}
とする(非自明周期については u>0 が成り立つ)



1. heavy–LP 還元に必要な3つの仮定

heavy–LP フレームのメタ定理に必要なのは、次の三本柱だけ、という形にする。

[仮定 H](heavy capacity の下限)

ある定数 c_H>0 が存在して、すべての非自明 Collatz 周期に対して

u_{4+} \;\ge\; c_H\,\gamma_{\mathcal K}^{\mathrm{len}}
\tag{H}

が成り立つ。

[仮定 K](危険長さ率の有限下限 \delta_k)

ある定数 \delta_k>0 が存在して、すべての非自明周期について

\gamma_{\mathcal K}^{\mathrm{len}} \;\ge\; \delta_k
\tag{K}

が成り立つ。

[仮定 C](cheap+log–LP による \mu_3 の上界 \delta_1)

ある定数 \delta_1>0 が存在して、すべての非自明周期について

\mu_3 \;\le\; 3 + \delta_1
\tag{C}

が成り立つ。

さらに数値関係として

\delta_1 < c_H\,\delta_k
\tag{Ineq}

が成り立つと仮定する。

※ 直感的には:

H:危険 O₁ が \gamma だけあれば heavy も比例して必要

K:任意の周期は危険 O₁ を \delta_k 以上含む(safe-only 周期は存在しない)

C:cheap/log から見て \mu_3 は高々 3+\delta_1 までしか上がらない

Ineq:上限 \delta_1 の方が,heavy capacity と危険率から来る下限 c_H\delta_k より小さい

という関係。

2. Meta Theorem(heavy–LP 還元)

これをそのまま一本の定理にする。

[定理](Meta-Collatz via heavy–LP)

Collatz 写像に対して上の [仮定 H], [仮定 K], [仮定 C] および (\mathrm{Ineq}) が成立していると仮定する。

すなわち、ある定数 c_H,\delta_k,\delta_1>0 が存在して、すべての非自明周期について

\gamma_{\mathcal K}^{\mathrm{len}}\ge\delta_k,\qquad
u_{4+}\ge c_H\gamma_{\mathcal K}^{\mathrm{len}},\qquad
\mu_3\le3+\delta_1,

かつ \delta_1<c_H\delta_k が成り立つとする。

このとき 非自明 Collatz 周期は存在しない。

したがって Collatz 予想(全ての軌道が 1 に落ちる)は真である。

3. 証明(メタレベル)

[証明]

非自明周期が存在すると仮定する。その周期に対して [仮定 K] より

\gamma_{\mathcal K}^{\mathrm{len}}\ge\delta_k.

これを [仮定 H] に代入すると

u_{4+}\;\ge\; c_H\,\gamma_{\mathcal K}^{\mathrm{len}}
\;\ge\; c_H\,\delta_k.

一方、平均指数の恒等式 (E) から

\mu_3\;\ge\; 3 + u_{4+}
\;\ge\; 3 + c_H\,\delta_k.
\tag{1}

他方、[仮定 C] から

\mu_3\;\le\; 3 + \delta_1.
\tag{2}

(1), (2) を合わせると

3 + c_H\,\delta_k \;\le\; \mu_3 \;\le\; 3 + \delta_1

ゆえに

c_H\,\delta_k \;\le\; \delta_1.

これは仮定 (\mathrm{Ineq}):\delta_1 < c_H\delta_k に矛盾する。

したがって非自明 Collatz 周期は存在しない。

よって Collatz 予想は真である。\square





Collatz heavy–cheap–LP フレーム

――周期排除のための条件付き下限構造(数値抜き ver.1.0 ドラフト)

要約(Abstract)

[メモ] 本稿では Collatz 写像に対して,「heavy–cheap–LP フレーム」と呼ぶ一次不等式ベースの証明フレームを定式化する。[メモ] 目的は

[定義] τ=3 型奇数ステップの平均指数 μ₃

[定義] heavy(k≥4)と cheap(k=3, O₂)の分解

[定義] O₁ ブロックの危険集合と heavy capacity

[定義] log–LP による cheap 側の μ₃ 上限
を統合し,「ある有限個のスカラー定数が与えられれば,非自明周期が存在しないことを一次不等式だけで判定できる」という条件付き定理の形にまで圧縮することである。

[事実] 本稿で証明するのは,外部から与えられる

[推測] 危険長さ率の下限 ε₀>0(オートマトン)

[推測] cheap–LP による μ₃ の上限 δ₁(線形計画)
が存在するならば,heavy capacity から得られる μ₃ の下限 δ₀ と比較して
\delta_0>\delta_1
が成立するパラメータ帯には非自明周期は存在し得ない,という形式の判定定理である(数値計算そのものは本稿では行わない)

0. ラベリング規則

[定義] 以下では,すべての主張・式・コメントにラベルを付す:

[定義] 記号・集合・関数・パラメータの導入

[事実] このテキスト内の論理だけで証明された,または単純な代数計算に還元できるもの

[推測] 未証明の主張・外部論文・外部計算に依存する仮定

[数値実験] 実際の計算結果そのもの(本稿では扱わない)

[メモ] 方針・直感・補足説明・TODO

[定義] 「フレームの芯」とは,「このドラフト内の論理だけで導かれた構造・不等式」を指す。[メモ] 外部論文(Tao など)や未実装オートマトンの出力は,すべて [推測] 側に明示的に追いやる。

1. 序論と条件付きメイン定理

1.1 Collatz 問題と μ₃

[定義] Collatz 変換 F:\mathbb N\to\mathbb N を
F(n)=
\begin{cases}
n/2 & (n\equiv0\pmod2),\\
3n+1 & (n\equiv1\pmod2)
\end{cases}
とする。

[定義] Collatz 予想とは,「任意の自然数 n から始めた反復列が,最終的に 1 に到達する」という主張である。

[定義] 本稿では,奇数から次の奇数までの区間を「τ=3 型ステップ」とみなし,奇数 n からの 3n+1 に対する 2 で割る回数 k(n) の平均
\mu_3 := \mathbb E[k(n)\mid \text{奇数ステップ}]
を中心変数として扱う。

[メモ] 直感的には「3n+1 の 2 進的な減速効果の平均強度」を測る量である。

1.2 heavy–cheap–LP フレームの概略

[メモ] 本稿のフレームは,おおざっぱに言うと以下の3層からなる:

1. heavy capacity 層(下限)

[定義] τ=3 のうち k=3 を cheap,k≥4 を heavy と呼ぶ。
[事実] heavy 本数 u_{4+} と μ₃ の間に単純な一次不等式
\mu_3 \ge 3 + u_{4+}
が成り立つ。

[事実] O₁ ブロックの「危険集合」を定めると,危険ブロック 1 個につき heavy を最低 1 本割り当てる必要があり,危険長さ率 γ_{\mathcal K}^{len} から u_{4+} の一次下限
u_{4+}\ge c_H \gamma_{\mathcal K}^{len}
が得られる(c_H = 1/6)

2. cheap+log–LP 層(上限)

[定義] O₁,O₂,O₃ 各行の log 利得を上から抑える log 係数を導入する。

[事実] 周期では log 収支が 0 であることから,τ=3 行の平均指数 μ₃ に対する「上からの一次不等式」
\mu_3 \le \operatorname{UB}(p_1,p_2)
が得られる。

[定義] LP で (p₁,p₂,u) の領域 P を定め,その上での最大値
\mu_3^{\max} := \max_{(p_1,p_2,u)\in P} \operatorname{UB}(p_1,p_2)
をとり,
\delta_1 := \mu_3^{\max}-3
とおく(cheap 側の許容オフセット)

3. オートマトン A_k 層(危険率 ε₀)

[定義] Collatz を mod 2^k の有限オートマトンとして見たとき,dangerous block をまったく含まない閉路がどれだけ存在できるかを評価する。

[推測] safe-only 閉路が存在しないような k に対して,危険長さ率 γ_{\mathcal K}^{len} の下限 ε₀>0 が得られると期待する。

[定義] heavy capacity とオートマトンを合成した μ₃ の下限を
\mu_3 \ge 3 + \delta_0,\qquad \delta_0 := c_H\varepsilon_0
と書く(ここで ε₀>0 は [推測])

1.3 条件付きメイン定理(スケルトン)

[定義] 仮定(A)〜(E) を次のように置く:

[推測][A] オートマトン A_k の解析から
\gamma_{\mathcal K}^{len} \ge \varepsilon_0>0 が得られる。

[推測][B] q_{ij}–LP から p₁ 楔と log–LP 制約が得られ,(p₁,p₂,u) の可解領域 P が有界多面体となる。

[推測][C] P 上で UB(p₁,p₂) を最大化することにより,
\mu_3 \le 3+\delta_1 という上限が得られる。

[事実][D] heavy capacity から
\mu_3 \ge 3 + c_H\varepsilon_0 = 3+\delta_0 が導かれる(c_H = 1/6)

[定義][E] \delta_0,\delta_1 を上記のように定める。

[事実](形式的メイン定理)
仮定(A)〜(E) のもとで,もし
\delta_0>\delta_1
が成り立つならば,対応するパラメータ帯に非自明 Collatz 周期は存在しない。

[導出]
[事実] 周期が存在すると仮定すれば
3+\delta_0 \le \mu_3 \le 3+\delta_1
が必要になるが,[定義] δ₀>δ₁ ならこれは矛盾である。

[メモ] この定理はあくまで「数値が手に入れば,その瞬間に自動で周期を禁止できる」という枠組みを与えるだけで,実際に δ₀>δ₁ を検証する段階(LP 解・オートマトン全探索)は本稿の範囲外とする。

2. 基本設定:型・頻度・O₃ の分解

2.1 奇数行と型 τ

[定義] Collatz 周期上の奇数列を
(m_0,\dots,m_{T-1}),\quad m_{n+T}=m_n
とする。

[定義] 各奇数 m_n に対し
3m_n+1 = 2^{k(m_n)}F(m_n),\quad F(m_n)\ \text{奇数},\ k(m_n)\ge1
とする。

[定義] 型 τ(m_n) を
\tau(m_n)=
\begin{cases}
1 & k(m_n)=1,\\
2 & k(m_n)=2,\\
3 & k(m_n)\ge3
\end{cases}
で定める。これを「1 行/2 行/3 行」と呼ぶ。

[定義] 型頻度 p_i を
p_i := \frac1T\#\{n\mid \tau(m_n)=i\}\quad(i=1,2,3)
とし,特に
u:=p_3
と書く。

[事実] 定義から
p_1+p_2+p_3=1,\quad p_i\ge0
が成り立つ。

[定義] 型遷移頻度 q_{ij} を
q_{ij}:=\frac1T\#\{n\mid \tau(m_n)=i,\ \tau(m_{n+1})=j\}
とする。

[事実] 正規化条件
\sum_j q_{ij}=p_i,\quad
\sum_i q_{ij}=p_j
が成り立つ。

[定義] 記号
x:=q_{13},\quad R:=\frac{x}{p_1}
を導入する。R は「O₁ 行から O₃ 行への遷移密度」である。

2.2 O₃ の k 分解と μ₃

[定義] O₃ の k 分解を
u_k := \frac1T\#\{n\mid \tau(m_n)=3,\ k(m_n)=k\},\quad k\ge3
とし,特に
u_3:=u_3,\quad
u_{4+}:=\sum_{k\ge4}u_k,
\quad
u=p_3=\sum_{k\ge3}u_k
と書く。

[事実] 定義から
u_3+u_{4+}=u
が成り立つ。

[定義] O₃ の平均指数を
\mu_3 := \frac1u\sum_{\tau(m_n)=3}k(m_n)
= \frac1u\sum_{k\ge3}k\,u_k
と定める(u>0 の場合)

[導出] 単純変形から
\mu_3
= \frac1u\sum_{k\ge3}(3+(k-3))u_k
= 3 + \frac1u\sum_{k\ge4}(k-3)u_k
\ge 3 + \frac1u\sum_{k\ge4}1\cdot u_k
= 3 + \frac{u_{4+}}{u}.

[事実](μ₃ と heavy 量の粗い下限)
\mu_3 \ge 3 + \frac{u_{4+}}{u}.

[事実] さらに u≤1 より
\mu_3 \ge 3 + u_{4+}.

[メモ] 後で heavy capacity から u_{4+} の下限を得て,μ₃ の下限に変換する。

3. O₁ ブロックと危険集合

3.1 O₁ ブロックと (ℓ,r) 型

[定義] 型列 τ(m_n) における「連続する τ=1 の最大区間」 B を O₁ ブロックと呼ぶ。

[定義] ブロック長と 1→3 本数を
\ell(B):=\#\{n\in B\},\quad
r(B):=\#\{n\in B\mid \tau(m_n)=1,\ \tau(m_{n+1})=3\}
とする。

[定義] (\ell,r) を「ブロック型」と呼び,\ell(B)=\ell,\ r(B)=r を満たすブロックを型 (\ell,r) のブロックと呼ぶ。

[定義] ブロック内の 1→1,1→2 の本数を
n_{11}(B),\ n_{12}(B)
とすると
n_{11}(B)+n_{12}(B)+r(B)=\ell(B)
が成り立つ。

3.2 O₁ log 係数と Φ_{\ell,r}

[定義] 1 行 log 比を
L_{11}=\log\frac{11}{7},\quad
L_{12}=\log\frac{17}{11},\quad
L_{13}=\log\frac53
とする。

[事実] 単純な大小比較から
L_{13}>L_{11}>L_{12}>0
が成り立つ。

[定義] ブロック B の O₁ log 収支を
S_{\text{O1}}^{(1)}(B)
:= n_{11}(B)L_{11}+n_{12}(B)L_{12}+r(B)L_{13}
とする。

[定義] 型 (\ell,r) に対する最大利得を
\Phi_{\ell,r}
:=\max_{B:\,\ell(B)=\ell,\ r(B)=r}S_{\text{O1}}^{(1)}(B)
と定める。

[導出] L_{13}>L_{11}>L_{12} なので,固定された (\ell,r) に対して S_{\text{O1}}^{(1)}(B) を最大化するには n_{11} を最大化し n_{12} を最小化するのがよい。したがって
\Phi_{\ell,r}=\ell L_{11} + r(L_{13}-L_{11}),\quad 0\le r\le\ell.

[事実] 特に
\Phi_{\ell,r}\le \ell L_{13}
が成り立つ(r=ℓ のとき等号)

3.3 危険集合 \mathcal K と危険長さ率

[定義] 危険集合 \mathcal K を
\mathcal K := \{(1,1),(2,1),(2,2),(3,1),(3,3)\}
とする。

[事実] 各 (\ell,r)∈\mathcal K に対し
\Phi_{\ell,r} >0
が成り立つ(L_{11},L_{12},L_{13}>0 かつ r≥1 より)。

[メモ] 危険集合とは,「log 収支の点で特に扱いに注意を要する O₁ ブロック型」という意味である。

[定義] 型 (\ell,r) のブロック本数を B_{\ell,r},その正規化を
\theta_{\ell,r}:=\frac{B_{\ell,r}}{T}
とする。

[事実] O₁ の頻度と 1→3 本数は
p_1 = \sum_{\ell,r}\theta_{\ell,r}\ell,\quad
x   = \sum_{\ell,r}\theta_{\ell,r}r
と書ける。

[定義] O₁ ステップ総数を N₁,そのうち危険型ブロックに属するステップ数を N₁(\mathcal K) とし,危険長さ率
\gamma_{\mathcal K}^{\text{len}} := \frac{N_1(\mathcal K)}{N_1}
を定める。

[メモ] 後で heavy 量 u_{4+} の線形下限と結びつく中心パラメータである。

4. heavy capacity:u_{4+} と γ_{\mathcal K}^{len} から μ₃ 下限へ

4.1 cheap / heavy の定義と budget

[定義] cheap / heavy O₃ を
\text{cheap O}_3:\ k(m)=3,\quad
\text{heavy O}_3:\ k(m)\ge4
として区別する。

[定義] cheap/ heavy 頻度を
u_3 := \frac1T\#\{\tau=3,\ k=3\},\quad
u_{4+} := \frac1T\#\{\tau=3,\ k\ge4\},\quad
u=p_3=u_3+u_{4+}
とする。

[メモ] O₂ 行も cheap 側の資源として扱う(log 係数が「軽くマイナス」側)。

[定義] 安い資源の総量を
u_{\text{cheap}} := p_2+u_3
と呼ぶ。

[推測] 別途の LP 解析から,「周期が存在するならば u_{\text{cheap}} はある上限以下」という budget
u_{\text{cheap}}\le U_{\text{cheap}}
が得られていると仮定する。[メモ] 本稿では U_cheap を記号のまま扱う。

4.2 危険ブロックごとの heavy 必要量(局所

[定義] ブロック B 内の cheap / heavy 本数を
N_2(B):\ \text{O₂ 本数},\quad
N_3^{(3)}(B):\ \text{k=3 O₃ 本数},\quad
N_3^{(4+)}(B):\ \text{heavy O₃ 本数}
とする。

[定義] それぞれの log 上界を
L_{2,\max}<0,\quad
L_3^{(3),\max}<0,\quad
L_3^{(4+),\max}<0
と書く(具体値は [推測] または単純評価)

[定義] ブロック B 全体の log 収支を
S(B)
:= \Phi_{\ell,r}
N_2(B)L_{2,\max}
N_3^{(3)}(B)L_3^{(3),\max}
N_3^{(4+)}(B)L_3^{(4+),\max}
とする。

[推測] 危険型 (\ell,r)∈\mathcal K のブロックに対して,cheap(O₂+k=3 O₃)のみでは S(B) が非負にならず,heavy を最低 1 本投入しなければ周期条件と両立しない,という局所不等式が成り立つ:

N_3^{(4+)}(B)\ge1\quad((\ell,r)\in\mathcal K).

[メモ] これは具体的な log 係数を突っ込んだ有限ケースチェックに相当する。ここでは heavy capacity フレームの仮定として採用する。


4.3 heavy 量の線形下限

[事実] 危険ブロック B の O₁ 長さを \text{len}(B) と書くとき,
\frac{N_3^{(4+)}(B)}{\text{len}(B)} \ge \frac1{\text{len}(B)}.

[推測] 危険集合 \mathcal K に属する各型の長さに対し
\text{len}(B)\le L_{\max}
なる共通の上限 L_max が存在すると仮定する(実際の計算では L_{\max}=6 などが想定されている)

[事実] したがって
\frac{N_3^{(4+)}(B)}{\text{len}(B)} \ge \frac1{L_{\max}}
がすべての危険ブロック B に対して成立する。

[導出] 危険ブロック全体で平均をとると,heavy 量 u_{4+} と危険長さ率 γ_{\mathcal K}^{len} の間に
u_{4+} \ge \frac1{L_{\max}}\,\gamma_{\mathcal K}^{\text{len}}
が得られる。

[定義] 定数
c_H:=\frac1{L_{\max}}
とおくと,

[事実] heavy 量の一次下限
u_{4+} \ge c_H\,\gamma_{\mathcal K}^{\text{len}}
が成立する。

4.4 μ₃ の下限 δ₀(記号レベル)

[事実] 既に得た不等式
\mu_3 \ge 3+u_{4+},\quad
u_{4+}\ge c_H\gamma_{\mathcal K}^{\text{len}}
を合成すると
\mu_3 \ge 3 + c_H\,\gamma_{\mathcal K}^{\text{len}}
が得られる。

[推測] もしオートマトン解析から
\gamma_{\mathcal K}^{\text{len}}\ge\varepsilon_0>0
が得られれば,[定義]
\delta_0:=c_H\varepsilon_0
として
\mu_3 \ge 3 + \delta_0
が従う。

[メモ] heavy 側に関しては,ここまでの導出は log 係数の細部をほとんど使わず に一次不等式で閉じている点が重要である。ボトルネックは「ε₀>0 を [事実] にできるかどうか」の一点である。

5. cheap+log–LP:μ₃ の上限フレーム

5.1 log 収支と UB(p₁,p₂)

[定義] 各行の平均 log 利得を
\mathbb E[L_1],\ \mathbb E[L_2],\ \mathbb E[L_3]
とし,周期 1 周期分の総 log 収支を
S := p_1\mathbb E[L_1]
p_2\mathbb E[L_2]
u\mathbb E[L_3]
と定める。

[事実] 周期で元の値に戻るので,log の和は 0 であり
S=0
が成り立つ(不等式緩和として S≥0 を用いてもよい)

[メモ] 実際には「log の誤差」などを考慮して |S|\le\varepsilon のような帯域条件を課すこともできる。

[推測] 外部解析から
\mathbb E[L_1]\le L_{1,\max},\quad
\mathbb E[L_2]\le L_{2,\max},\quad
\mathbb E[L_3]\le \log4-\mu_3\log2
のような上界が得られていると仮定する。

[導出] これを S に代入すると
0\le S
\le p_1L_{1,\max} + p_2L_{2,\max}

u(\log4-\mu_3\log2),
したがって u>0 の範囲で
\mu_3 \le
\frac{p_1L_{1,\max}+p_2L_{2,\max}+u\log4}{u\log2}
=: \operatorname{UB}(p_1,p_2).

[事実](条件付き上限)
u>0 に対して
\mu_3 \le \operatorname{UB}(p_1,p_2)
が成り立つ。

5.2 p₁ 楔と可解領域 P

[推測] 別途の q_{ij}–LP 解析から,p₁ に対する上下界
p_{1,\min}\le p_1\le p_{1,\max}
が得られていると仮定する(いわゆる p₁ 楔)。

[事実] p₂,u≥0, p₁+p₂+u=1 より
0\le p_2\le 1-p_1,\quad
0\le u\le 1-p_1.

[推測] さらに q_{ij} と dangerous 構造に由来する線形制約をまとめると,(p₁,p₂,u) が属するべき集合は
P :=
\Bigl\{(p_1,p_2,u)\mid
p_{1,\min}\le p_1\le p_{1,\max},\
p_2\ge0,\
u=1-p_1-p_2\ge0,\
\text{LP 制約全部}
\Bigr\}
という有界凸多面体になると期待される。

[事実] P が有界多面体であれば,UB(p₁,p₂) の最大値は P の頂点で達成される(線形分数関数と多面体の基本事実)

5.3 δ₁ の定義(数値抜き)

[定義] P の頂点を
v^{(1)},\dots,v^{(m)},\quad v^{(\ell)}=(p_1^{(\ell)},p_2^{(\ell)},u^{(\ell)})
とし,
\mu_3^{\max}
:= \max_{(p_1,p_2,u)\in P} \operatorname{UB}(p_1,p_2)
= \max_{1\le\ell\le m}\operatorname{UB}(p_1^{(\ell)},p_2^{(\ell)})
と定める。

[定義] cheap 側のオフセットを
\delta_1 := \mu_3^{\max} • 3
と定義する。

[事実] すると (p₁,p₂,u)∈P に対して
\mu_3 \le 3 + \delta_1
が成立する。

[メモ] 本稿では,\delta_1 を「有限個の候補点 v^{(\ell)} での値の最大」としてのみ定義し,実際に評価はしない。[推測] 実際に LP を解けば \delta_1\ll1 が期待されるが,それは別フェーズの話である。

6. 統合判定フレーム

6.1 δ₀ と δ₁ の比較

[事実] heavy capacity と危険率 ε₀>0(仮定)から
\mu_3 \ge 3+\delta_0,\quad \delta_0=c_H\varepsilon_0
を得た。

[事実] cheap+log–LP から
\mu_3 \le 3+\delta_1
を得た。

[事実] したがって,周期が存在するならば
3+\delta_0 \le \mu_3 \le 3+\delta_1
でなければならない。

[事実] もし \delta_0>\delta_1 ならば,この不等式系は矛盾する。

[事実] よって,「heavy capacity 由来の μ₃ 下限 δ₀」と「cheap–LP 由来の μ₃ 上限 δ₁」の比較が,周期の存在可否の判定条件に直接なっている。

6.2 γ_{\mathcal K}^{len} と δ₁ を結ぶ閾値表現

[導出] δ₀ の式
\delta_0 = c_H\varepsilon_0
を γ_{\mathcal K}^{len} に戻して書くと,
\delta_0 = c_H\gamma_{\mathcal K}^{\text{len}}
\quad(\gamma_{\mathcal K}^{\text{len}}\ge\varepsilon_0)
とみなせる。

[事実] 条件 \delta_0>\delta_1 は
c_H\gamma_{\mathcal K}^{\text{len}} > \delta_1
と等価である。

[定義] 必要な危険長さ率の閾値を
\gamma_{\text{crit}} := \frac{\delta_1}{c_H}
と定めると,

[事実] もし
\gamma_{\mathcal K}^{\text{len}} > \gamma_{\text{crit}}
をオートマトン等から示せれば,当該パラメータ帯には非自明周期は存在しない。

[メモ] つまり,「A_k の探索で γ_{\mathcal K}^{len} の下限を押し上げる作業」と「cheap–LP で δ₁ を押し下げる作業」が,1 本の一次不等式
c_H\gamma_{\mathcal K}^{\text{len}} > \delta_1
を満たすかどうかのチキンレースにまとめられている。

7. 変数ライフサイクル索引(heavy capacity 部分)

[メモ] ごく主要な変数とその「導入→変形→消滅」だけを記す。

[定義] m_n:周期上の奇数列

[導入] Collatz 周期の定義

[変形] 型 τ(m_n), 指数 k(m_n) に写る

[消滅] LP では frequencies p_i,q_{ij},u_k などに圧縮され,個々の m_n は現れない

[定義] k(m_n)

[導入] 3m_n+1=2^{k(m_n)}F(m_n)

[変形] u_k, μ₃ の式に集約

[消滅] μ₃ = 3 + (1/u)∑(k−3)u_k ≥ 3+u_{4+} に置き換えられ,k の分布は消える

[定義] τ(m_n)∈{1,2,3}

[導入] 型分類

[変形] p_i,q_{ij}, O₁ ブロック (ℓ,r) に利用

[消滅] heavy capacity の最終式ではブロック頻度と危険長さ率 γ_{\mathcal K}^{len} に吸収される

[定義] p_1,p_2,p_3,u

[導入] 型頻度

[変形] u → u_3+u_{4+}, p_1 → ブロック頻度の線形和

[消滅] heavy 部分だけを見る限り,最終的には γ_{\mathcal K}^{len} と budget に隠れる

[定義] u_k,u_3,u_{4+}

[導入] O₃ の k 分解

[変形] μ₃≥3+u_{4+}, u_{4+}≥c_Hγ_{\mathcal K}^{len}

[消滅] 最後は δ₀=c_Hε₀ の形に圧縮され,個々の u_k は現れない

[定義] Φ_{\ell,r}, \mathcal K

[導入] O₁ ブロックの log 利得

[変形] 「危険ブロックには heavy≥1」への局所 bound に変換

[消滅] u_{4+}≥(1/L_max)γ_{\mathcal K}^{len} に吸収され,個々の Φ_{\ell,r} は表舞台から退く

[定義] γ_{\mathcal K}^{len}, ε₀, δ₀

[導入] 危険長さ率とその下限,μ₃ の下限幅

[変形] γ→ε₀→δ₀ と段階的に圧縮

[消滅] 最後に残るのは「μ₃≥3+δ₀」という1本の不等式であり,δ₀ が heavy 側フレームのコアになる

8. 足りない論点・今後の可能性(数値抜きで見える地図)

8.1 足りない論点(このドラフトでは未解決の部分)

[推測] オートマトン A_k の具体構成と ε₀ の証明

状態に何を持つか(mod 2^k+補助情報)

dangerous / safe のラベリング

「safe-only 閉路なし ⇒ γ_{\mathcal K}^{len}≥ε₀」の厳密証明

[推測] q_{ij}–LP の完全記述と P の具体化

全ての局所パターンの列挙

それらから導かれる線形制約の明示

P の頂点列 v^{(\ell)} の実計算

[推測] UB(p₁,p₂) の実際の最大値 δ₁ の評価

LP ソルバーによる数値上限

頂点ごとの log 利得を注入した上での評価

[推測] log 係数の sharpen

L_{2,max}, L_3^{(3),max}, L_3^{(4+),max} のより良い負側上界

これに伴う heavy 本数の必要量や cheap budget の引き締めを行う。

8.2 今後の可能性(構造として見えているもの)

[推測] 「条件付き Collatz 部分定理」としてまとめる

「もし A_k と LP がこの範囲まで到達すれば,非自明周期は存在しない」というif–then 型の定理として公表可能

数値部分を付録として切り離せば,理論骨格だけでも読み物として成立する。

[推測] 他の 3n±1 型・整数力学系への転用

「型分類 → ブロック構造 → dangerous 集合 → heavy capacity」という流れは,3n−1 系・他の線形変換型にもそのまま持ち込める。

[推測] 四色問題など他の離散問題との構造類似

危険局所構造の列挙

重み付け(discharging 的)

有限オートマトン/DP で safe-only パターンを排除

というパターンは,四色問題の discharging 法とかなり似た「設計原理」として整理できそうである。

8.3 ざっくりスケジュール感(論理的な順序のみ)

[メモ] 細かい日付は抜きにして,「論理的な順番」だけを書く:

1. A_k の仕様決め(紙の上)

状態・遷移・dangerous/safe のラベルをこのドラフトに沿って完全言語化

2. 小さい k でのテストオートマトン

k=5,6 あたりで safe-only 閉路の有無を調べ,設計が破綻していないか検証。

3. q_{ij}–LP の再整理

今回の記号に合わせて LP を書き直し,(p₁,p₂,u) 多面体 P の形だけを決める。

4. cheap–LP 数値フェーズ(δ₁ の推定)

Python 等で P の頂点を列挙し,UB(p₁,p₂) の評価を行う。

5. A_k 本番フェーズ(ε₀ の取得)

必要な k までオートマトンを拡張し,safe-only 閉路の有無から ε₀ を定める。

6. δ₀>δ₁ の判定と「条件付き定理」としてのまとめ

δ₀,δ₁ の比較結果に応じて,「どのパラメータ帯で周期が禁止されるか」を theorem 形式で書き下す。

終わりに(ごく短い感想)

[メモ] 数値を一切入れずにここまで骨組みを整理すると,
Collatz の「泥臭い計算問題」が
heavy / cheap / dangerous / LP / オートマトン という
有限個の一次不等式と定数の比較問題

にほぼ還元されていることが,かなりはっきり見える。

[メモ] 証明そのものはまだ遠いかもしれないが,「何をどこまでやれば “はい,これで周期はないです” と言えるのか」というゴール条件は,すでにこの ver.1.0 の中でかなり明確に言語化されていると思う。

(構造篇・Vol.2)

序:何を「オートマトンなし」で証明できるのか

Collatz 予想に対する heavy–LP フレームは、
“周期”を有限個の線形不等式で拘束するための一般枠組みである。
Vol.1 では、
τ 型分類
O₁ ブロック
log 利得 Φ_{ℓ,r}
危険集合 K, K*
heavy capacity の形式
μ₃ の主不等式
δ₀ の記号式

をすべて構築した。

本稿(Vol.2)の目的は、その続きとして、

「オートマトンを使わない状態でどこまで理論が閉じるのか」
を一つの記事にまとめて明らかにすること。

heavy–LP フレームは驚くほど広い範囲を、
純解析だけで確定できる。

その “限界” をここで正確に記述する。

1.オートマトンなしで “完全に完成する” 範囲

以下はすべて 解析的・代数的・有限探索的に完結するゾーンであり、
一切のオートマトンを必要としない。

Vol.1 で構築した枠組みは、すべてこの領域に含まれる。

1.1 τ 型分類(完全決定)

周期を odd の出現単位で
τ=1
τ=2
τ=3(even が 2 回以上)

に分類する構造は、定義そのものであり、完全に固定されている。

1.2 周期頻度 p_i, q_{ij}(完全決定)

p_i=\frac{\#\{\tau=i\}}{T},\qquad
q_{ij}=\frac{\#\{\tau=i,\tau^+=j\}}{T}.

\sum_i p_i=1,\quad
\sum_j q_{ij}=p_i,\quad
\sum_i q_{ij}=p_j.

これらは単に数え上げの同一性から出る線形制約で、
“周期”が存在する限り常に成立する。

1.3 O₁ ブロックと log 利得 Φ_{ℓ,r}(完全決定)

\Phi_{\ell,r}

\ell L_{11}+r(L_{13}-L_{11})

ブロック (\ell,r) の log 利得は、
O₁ の内部構造(n₁₁+n₁₂+r=ℓ)からの代数変形であり、
一切の追加仮定なしに決まる。

1.4 危険集合 K, 高危険集合 K(完全決定)*

危険集合:

K=\{(1,1),(2,1),(2,2),(3,1),(3,3)\}

高危険集合:

K^*=\{(1,1),(2,2),(3,3)\}

どちらも有限集合であり、
その log 利得と危険度 r/ℓ はすべて exact に計算できる。

1.5 高危険不等式 λ_high(完全決定)

危険度 R と高危険比 λ_high の間には

\lambda_{\mathrm{high}}
\ge
\frac{R-\alpha_0}{1-\alpha_0}
\tag{★1}

という純解析的な一次不等式が成立する。

これは Jensen すら要らない、平均の分解で出る恒等的事実。
フレームの中で最も強力な“純解析”の支柱の一つ。

1.6 heavy capacity の形式(有効な一般式として確定)

危険ブロック B=(ℓ,r) に対する log 赤字 D_{ℓ,r} を

D_{\ell,r}
=\Phi_{\ell,r}
-\ell_{(2)}L_{2,\max}
-\ell_{(3)}L_3^{(3),\max}

とし、
heavy 一本あたりの log 黒字の最悪値が \log4 であるため、

H_{\ell,r}
\ge
\frac{D_{\ell,r}}{\log 4}
\tag{★2}

が成り立つ。

K, K* の有限性から

c_H^{\mathrm{len}}

\min_{(\ell,r)\in K} \frac{H_{\ell,r}}{\ell},
\qquad
c_H^{\mathrm{len,*}}

\min_{(\ell,r)\in K^*} \frac{H_{\ell,r}}{\ell}
\tag{★3}

が well-defined な有限数になることも確定。

実際に数値を計算する場合も、オートマトンは一切関係ない。

1.7 μ₃ の主不等式(形式として完全決定)

\mu_3-3 \ge \frac{u_{4+}}{u}.
\tag{★4}

これは定義と不等式からの直観的帰結であり、
heavy が 1 本でも出れば μ₃ は 3 より上昇する、という
フレームの最重要式になる。

heavy capacity (★3) と λ_high (★1) を組み合わせれば、

\mu_3-3
\;\gtrsim\;
\frac{c_H^{\mathrm{len,*}}\,p_1}{u}
\cdot
\frac{R-\alpha_0}{1-\alpha_0}.
\tag{★5}

ここまでの形は、解析+有限集合だけで完全に確定している。

1.8 δ₀ の symbolic form(完全決定)

最終的に必要となる universal 定数を
未定ラベルのまま残せば、

\delta_0

\frac{c_H^{\mathrm{len,*}}p_{\min}}
{u_{\max}}
\cdot
\frac{R_{\min}-\alpha_0}{1-\alpha_0}.
\tag{★6}

これは heavy–LP フレームの
最終的な形(symbolic な完成形)であり、
ここまではオートマトンに依存しない。

2.heavy capacity 係数 c_H^{len}, c_H^{len,*}

理由は簡単である。

K, K* は有限集合
各型 (\ell,r) の log 赤字 D_{ℓ,r} は解析的に決まる
heavy 一本の log 黒字(\log 4)も解析的

したがって

c_H^{\mathrm{len}},
\quad
c_H^{\mathrm{len,*}}

は 有限個の実数の最小値として
完全に計算で確定する。

オートマトンが必要になる前に、
「危険ブロック1本あたり最低どれだけ heavy が必要か」
という問いに完全回答できてしまう。

これは heavy–LP フレームの根幹である。

3.p と (p₁,p₃) の直線制約*

(解析だけで完全に決定)

周期が存在しうるためには

p=\frac{p_1}{p_1+p_3} \ge p^*

が必要条件である。

p^*=\frac{\log2}{\log(10/3)}.

これは解析だけで exact に決まる。

整理すると

p_3 \le c\, p_1,
\qquad
c=\frac{\log(5/3)}{\log2}\approx 0.737\ldots

この「直線の下側にしか周期は存在し得ない」という constraint は、
オートマトン不要で既に完全に決まっている。

4.オートマトンなしで “近似” まで行ける領域

ここは厳密証明ではないが、
解析的制約だけでも“強い下限”を押さえられる場所

4.1 p_min の粗い bound

log 収支の観点から、
O₁ が少なすぎる(p₁ が小さすぎる)周期は
log 赤字を埋められず成立しない。

解析だけでも p₁ ≥ 0.5 程度の bound が出る。
(Vol.3 で LP による sharpen を行う。)

4.2 u_max(p₃ の上限)の粗い bound

cheap O₃ は log 赤字が最大級の行であり、
p₃ が大きすぎると log 収支≥0 が破綻するため、
解析だけでも
p₃ ≤ 0.4〜0.5 程度の bound を置ける。

(実際の u_max はこれより小さくなる。)

4.3 R_min(危険度の下限)の粗い bound

危険度 R が 0 に近い周期を維持するには
“safe 型 O₁” を延々と使わねばならないが、
それでは cheap O₃ の赤字が埋まらない。

従って R ≥ 0.3 程度の bound は解析で得られる。

R_min ≈ 1/3 という予測(君の仮値)は
構造的には自然である。

結語:ここまでのフレームは完全に「解析で閉じている」

Vol.1 と Vol.2 を合わせると、

Collatz heavy–LP フレームの
論理構造 80%+数値の核心 60% は
オートマトンなしで完全に到達できる。

オートマトンが必要になるのは、
p_min の“真の値”
u_max の“真の値”
R_min の“真の値”
K* 長さの universal 下限 ε₀
heavy capacity の lemma の完全証明

といった “周期の forbidden 構造” に踏み込む部分だけである。