Hip-hopに憧れるけどケチくさいK-Pop | アカデミアからのぞくJ-POP, K-POP, HIP-HOP

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このブログではアカデミックな立場から(主にアメリカで)どのようにJPOP, KPOP, HIP-HOPが認識・議論されているかを文献なども紹介しながらお話ししていきます。のんびり書いています♪

こんにちは!

 

K-Pop(HYBE内の内紛)にて

浮上してきた作品「盗用」問題。

その「盗用」という概念に関して。

 

「大スター」というステータスには

誰もが憧れます。

K-Popアーティストたちもきっと

「大スター」になりたくて活動している

はず。

アメリカの大スターといえば

マイケル・ジャクソン。

マイケル・ジャクソンに影響されている

人も多いですよね。

マイケル・ジャクソンは兄弟グループで

活躍していた頃から

いわゆるモータウン・サウンドという、

黒人音楽ですが、視聴者を拡大目的での

白人視聴者にかなり寄せた

Pop musicですね。ポップスター。

黒人、白人そして世界中の人から

爆発的な人気を得て世界のトップアーティストに

なりました。このプロセスをK-Popが目につけない

はずがないです。

2023年の映画、マイケル・ジャクソンの

ドキュメンタリー『Thriller 40』の中でも

しっかり、K-Popが「マイケルの影響を受けている」

という話が出てきます。

BTSの「Dynamite」の振り付けの中で数箇所

マイケル・ジャクソンの振り付けを借用したものが

あるわけです。(あまりスポイルしたくないので、

詳しくは映画を見てくださいね。BTSが出てきますよ♪)

 

それでマイケル・ジャクソンのPD・関係者たちが

『BTSがマイケルのコレオを盗用した!』

と目くじらを立てて

騒いでいるのを今まで聞いたことがあるでしょうか?

いや、むしろ

「ほらね。マイケルはすごいだろう?

K-Popにもこんなに使われているんだよ」

と、自慢するくらいです。認めなさいよ、と。

指摘はするけれど、悔し涙を流しながら

「私の作品を盗んだ」とはならないのです。

 

なぜでしょうか。

 

 

ということで、本日は、

 

 

Hip-hopに憧れるけどケチくさいK-Pop

ということを少しお話しします。

アメリカで流行っているものを

取り入れるというのがK-Popの

傾向でもあるので、近年、

Hip-hopを取り入れることが

多くなっているK-Pop業界。

もちろん、ジャンル的には

Pop musicが主流なんですが、

Hip-hopの影響を受けているような

スタイリング、楽曲は多いです。

 

そこで、Hip-hopというハイブリッド

文化は「盗用」というようなコンセプトを

「極悪」なものとは見なさないということを

理解しなければなりません。

Hip-hop関連の記事にも書いていますが、

アメリカのブロンクスで生まれたHip-hop文化は

お金のない、何もない貧困層から生まれた

アンダーグラウンドカルチャーです。

お金がないから一から音楽を作る技術も学ぶ

機会も与えられなかった。

だから、すでにあるものを使って

パーティーを楽しんでいたら、

だんだん今の形ができてきたわけです。

 

音楽も、もともとあったものを

使って組み合わせたり、ビートを

変えたりして使っていました(サンプリング)。

ラップなどでよく見られる技法。

Hip-hop文化においてよくこの技法は使われます。

例えば・・・

これ。80年代に流行ったグループ、New Editionの曲。

"Can you stand the rain"

この音楽を勝手にリズムを変えて、

Lite Feetビートにアレンジ。

(注:Lite Feetは hip-hopダンスですが、ビートとリズムが常に一定です。)

 

Jayy Blackが踊るLite Feetバージョン。(テンポが速くなります)

ちなみに、Jayy Blackはこの界隈では知られた

プロのLite Feet ダンサーです。

こういうことは当たり前なんですね。

これを盗用とは見なさないのがこの文化の特徴です。

 

これは音楽だけではなくダンスもそうです。

サルサホップなど。

サルサやリンディーホップという

もともとあったものを取り入れて

それにアレンジを加えて今の形に

なりました。

それを、曲・ステップを盗んだ・・・とは

ならないですね。

 

借用においての足の引っ張り合いは

あまりないです。引用しまくりです。

お互いをそうやってサポートするのが

 hip-hopカルチャーです。

「盗用」と言い出すと全部盗用に

なっちゃいますね。

 

もちろん、学術論文での盗用、

(Plagiarism)といわれるものは

引用がなくあたかも自分が生み出したもの

のように書いてしまうと即効でクビで

無効になります。

が、どの論文も「完全な0からオリジナル」

は存在しません。

過去の研究をもとに適切に引用してそこに

改善・改良を加えて発表するものです。

それどころか過去の論文の引用なしで研究する

ことははっきり言ってできないです。

 

なので、ちょっと似ているから

「あいつは私を真似した」

と、言ったところでヒップホップ業界では

「器が小さい」

と吐き捨てられて終わりです。

引用をしていれば大体大丈夫です。

 

あとは、寛容になれるかどうか

だけでしょうね。

その方の器の問題となってきます。

 

K-Popも言ってみればHip-hopのような

ハイブリッドスタイルですね。

どこかから何かを引用したり

借用したりしての積み重ねで

作られた文化なわけで、何一つ

オリジナルなんてないわけですよ。

それを「あれは自分のものだ」と

いうと、印象としてケチくさい

となってしまいます。

 

Hip-hopスタイルを貫くなら

ケチくさいことを言わずに

『どうぞどうぞ使ってください』

のattitudeの方が余裕があって

かっこいいと思います。

 

それではまた。