JでもKでもない『XG』が世界に羽ばたく? | アカデミアからのぞくJ-POP, K-POP, HIP-HOP

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このブログではアカデミックな立場から(主にアメリカで)どのようにJPOP, KPOP, HIP-HOPが認識・議論されているかを文献なども紹介しながらお話ししていきます。のんびり書いています♪

こんにちは!

Your Advisor Mimiです♪

 

本日は、

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JでもKでもない『XG』が世界に羽ばたく?

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というテーマでお話ししていきたい

と思います。

 

世界をとりに行く!

 

このようなフレーズを

耳にすることがあります。

 

このフレーズを言う時、

アーティストの方は一体何を

イメージされるのかな、と

いつも思います。

 

XGALXというレーベルで

今年デビューをしたXG。

日本のAVEXのプロジェクトから

生まれたグループのようです。

 

このグループはとてもユニークな

方法で活動をしているなと思います。

メンバーは日本人ですが、

韓国で生活をし、KPOPのプラットフォーム

からデビューをしています。

やはりきたか、KPOPを強く意識する

傾向が今のJPOPには見られますね。

 

以前、AVEX会長の松浦さんが

「JPOPが、KPOPに負けたのは・・・」

というようなことをYouTubeで

発言されていました。

結局、日本の音楽業界においては、

「負けている」という認識

があるのかなと思います。

 

今の所、XGがリリースした曲は英語歌詞。

YouTubeなどのコンテンツを見ると

英語、韓国語、日本語で歌ったり、

ラップしたりとなかなか今までに

見たことのないやり方をされています。

 

私は夏に3年ぶりに日本に帰ったのですが、

そのとき、朝の番組にこの『XG』という

グループが出ているのを見ました。

「私たちは世界に向けて

頑張っているので・・・」

ということを、本人たちが話されている

ところも見ました。

 

で、気になっていたんです。

この方々にとって「世界へ」というのは

どういうことなんだろう・・・?

何をイメージされているのだろう・・・。

やっぱりビルボードチャートインなの??

 

KPOPの文化的な要素に関する

学術論文では、なかなか

厳しい評価をしている学者の方々も

いらっしゃいます。

アメリカ進出は単なるステップと言いつつも

アメリカ進出=世界進出が当然の

ように考えることが多いと思います。

それがいいのか悪いのかではなく、

結局、アメリカのポップカルチャー

(音楽)というものが、まるで

世界の基準のように認識されていることも

否定できないのです。それは、

ビルボードやグラミー賞を

受賞すれば「世界を取った」という

世間の認識となることからもわかります。

 

このヒエラルキーが、KPOPの中にもしっかりと

根付いている、というのです。

 

このことが何を意味するのか。

 

KPOPはアメリカで生まれた

EDM、ラップ、R&Bなどを

取り入れた音楽です。

ステージ衣装を含め、アメリカに

影響を強く受けていることは

否定できません。つまり、ここに

力や価値観の上下関係がある、

というのです。

韓国の要素よりも、アメリカの

要素に依存している、と。

やっぱり完全にアメリカからは

独立できないのだ、ということです。

またこうなったのには歴史的背景

や政治も関係していることも

指摘されています。

 

アメリカで売るんだからそうでしょ、

と単純に思うかもしれませんが、

だからこそ、アメリカを持ち上げないと

いけない(上)=オリジナル文化が

薄くなる(下)、ということです。

オリジナル文化を下げることで

力加減に偏りが出る、という

議論です。アメリカがボス。

この何が問題なのかというと、

例えばJPOPなら、「日本の価値」

というものをどう作品の中で

評価し、組み込むかというところです。

どこまで行ってもアメリカが上という

認識があるのなら「世界を取ったと

言えるのか」ということです。

 

やはりアメリカがボスという結論に

至るのか、何か新しい価値観が

生まれるのかは、今後の変化を追っていく

しかありません。

 

KPOPの始まりは、SM エンターテイメント

が、日本のアイドルシステムを模倣して

アイドルをトレーニングし、日本、アメリカへの

進出を図ったという論文があるのですが(Lu 2008)

そもそもは日本のポップカルチャーが

「日本らしさ」を捨てて

西洋にアピールしていった。

KPOPもここからアイデアを得た、

とも書いてあります。(書いてあるんでね・・汗)

(Lu, A.S. (2008) The many faces of internationalization in Japanese anime.)

(ちょっと苦々しくは感じますね・・・)

(ついでに、JPOPのゴールデンエイジは

1980年代〜90年代と言われています)

 

さて、「XG」の話に戻りますが、

インスタライブで、XGのプロデューサーを

されているサイモンさんのお話を聞きました。

とても興味深かったです。

アーカイブにまだ残っているはずです。

サイモンさんは日本人と韓国人のハーフで

芸能活動はKPOPアイドルとして

韓国でされていたそう。

生まれはアメリカ。

なるほど、だからXGが

このようにユニークな形で

売り出されているんですね。

このサイモンさんも、完全に人生を

プロデューサー業に捧げている印象です。

人生を捧げる覚悟がないとできない

お仕事ですね。

 

で、一番気になるところ。

どのような意図で、XGをプロデュースされている

のかというところですが、

 

「英語でするかどうかは悩みました」

ということです。

 

「英語にしたのは、

世界で多くの人が話している英語で、

より多くの人々に届けたいからです。

英語、韓国語(母国語の日本語)で

徹底的に発音をトレーニングした。

これから、どんな言語でも歌えるように

したい。」

 

なるほど、英語や韓国語以外にも

挑戦できる柔軟性もトレーニング

の中に組み込んでいるようです。

ただし・・・これはこれで賭けですね。

母国語ではない言語で勝負するのは

注意が必要です。発音がよければ

うまくいくかといえばそうでもないんです。

言語と文化はセットです。どちらが微妙に

欠けても伝わらなくなります。この微細な

バランスというのは目に見えないですが

人に伝わるものでとても重要です。

なんだかわからないけど面白い!となることも

あります。未知の世界です。

このようなことはサイモンさんが

一番わかっていらっしゃると思います。

失敗に終わる可能性もある。

が、やってみないとわからない

こともある。難しい判断の連続でしょうね。

 

「私は彼女たちが世界一のグループだと

思っています」

 

アーティストの可能性をとことん

信用する姿勢。素晴らしい姿勢だと

思いました。口先だけではなく、人生を

捧げてアーティストに信用してもらう

努力を自らできるプロデューサーで

なければならないということですね。

これがアーティスト生命に関わってくるからです。

サイモンさんの覚悟は伝わってきました。

彼が韓国語話者であり日本語話者である

こともポイントだと思いました。

今までありそうでなかったこと

ではないでしょうか。

これまでは日韓合同プロジェクト

のようなことはあっても、

プロデューサー本人の方に

日韓の要素が両方備わっているというのは

本当に貴重なことだと思います。

 

何か今までに見たことのない可能性を

感じます。(と、信じたい)

なんらかの結果が出るにはまだ少し

時間がかかるかもしれませんが、

今後もサイモンさんの発言とXGの

活動を注意深く見ていこうと思います。

 

では、また次回。

 

〜Your Advisor Mimi