旧DSソフトレビュー | アドベンチャーゲーム研究処

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アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【旧DSソフトレビュー】

 

采配のゆくえ

 

『采配のゆくえ』 65

 

 戦国時代の戦乱を大河的ではなく関ヶ原の合戦という局地的なドラマ(司馬遼太郎の『関ケ原』が元ネタと明言されているとはいえ)で描くという、ゲームではかなり珍しい調理方針をとっている代替性のなさが際立つ。基本システムが簡易SLGでストーリー的な落とし込み面が弱く「関ケ原の合戦を描くのはこのシステムなのか?」という疑念はかなりあるし、デザイン的に深度の浅い作りなので特に小早川秀秋が裏切るあたりまで話もゲームも平坦なのは短所なんだけど、戦国武将というナラティブな存在をキャラづくりへちゃんと落とし込んでいて、後半からドラマとしては割としっかりしたものになっているのも含め長所。企画的な失敗による値崩れと、まんま『逆転裁判』な見た目の悪影響が未だに足を引っ張ってる訳だけども、カジュアルとゲームデザインの放棄を混合した粗製品の多すぎるDSのオリジナル作品陣でも、ちゃんとシナリオは盛り上がるし、ほかのゲームではできない体験も提示できているので自分としては評価は高め。

 

東京トワイライトバスターズ ~禁断の生贄帝都地獄変~(特典なし)

 

『東京トワイライトバスターズ』 62

 

ADVというよりRTS的なものをシステムにしてるけども、ゲームデザインや世界観的にはおおざっぱな印象の作品。90年代当時でしか表現できないオカルト具合を楽しめるかが肝で、そういう意味ではDSでも唯一「本物のオカルト」が見れる作品ともいえるんだけど、それをやれるだけの尺と演出はきちんと確保されていて、唐突すぎる展開やカユイところへ微妙に手が届かない仕様を我慢できれば楽しめるソフトかなとは思う。DSソフトの中ではプレミア価格であることも焦点ではあるけど、そもそもPC版は配信で1000円くらいで遊べるという話で。UIもパソコン向けなので十字キーでやるよりはインタラクティブだろうとは思います。

 

theresia -テレジア- Dear Emile

 

『theresia dear Emile』 60

 

 DSで出たワークジャム作品では最もクオリティがあったと思われる作品。ゲームデザイン的にはやや単調かつ中だるみがあって凄くカッチリしているソフトではないんだけど、オールドスクールな脱出ゲームを母性からの解放というテーマに落とし込んでるシナリオ作りと演出を最も評価したい。ほかの(神宮寺三郎を含めた)フィーチャーフォンから持ってきました作品陣と比べても世界観とゲームプレイを一致させようという努力がちゃんと見えていて、なんだかんだ自社から生まれたIPとして気合を入れて作っていたんだなぁという印象で、その真摯さ込みで後期ワークジャムの代表作に挙げても良いんじゃないかな。

 

ナナシ ノ ゲエム

 

『ナナシノゲエム』 40

 

 未だに巷で溢れかえっている『リング』フォーマットのホラー。呪いのビデオ的なガジェットがゲームというのが特色だけど、まあドラマの組み立てはありきたりすぎてつまんないし、恐怖演出も行き当たりばったりでレトロゲーム演出を含めこのソフトならではというアイデンティティも感じないしで、申し訳ないけどノスタルジー以外で今やる必要は特にないんじゃないかなと。もう少しシナリオ構造が複雑だったり、人物描写に面白みがあれば救いはあった気もするけども。

 

ラストウィンドウ 真夜中の約束

 

『ラストウィンドウ 真夜中の約束』 57

 

 ゲーム媒体は地に足ついたものに対して大人であるという評価がされがちなんだけど、結局これってオジさんの日常ものが基軸になっていてフィクションとしての面白さが置いてきぼりにしている面はあるんじゃないかな。UIなど洗練化しても『ウィッシュルーム』ほどトーク面や舞台設定での楽しさは感じず、もともとクオリティの高かった画面作りやキャラ描写で1周には耐えるけど、クリア後に作品世界への思い入れは持てなかった。アプローチ的な失敗という印象の作品。CiNGの遺作ではあるけど、これ以前の『アナザーコードR』や『AGAIN 超心理捜査官』も共通してドラマとしての引きが弱かったかなと思います。

 

探偵・癸生川凌介事件譚 仮面幻影殺人事件

 

『探偵癸生川涼介事件譚 仮面幻影殺人事件』 50

 

 アプリと同じでやりたいことは最終盤のどんでん返しなんだろうけど、真相を後ろへ後ろへと持って行った結果、後半までストーリーを引っ張るだけのプロットが提示できておらず、ゲームプレイとしてはただ狭い世界の痴話げんかを聞いて回っているだけという印象は強い。肝心のオチも青臭すぎて共感できないのはよく言われていることだし、なんか言っても今更でしょう。パッケージ規模の仕掛けを作ろうという気概も、アップ描写が多いのが気になるもののDS作品としては珍しく映像を作ろうという意志も感じるので、悪い作品とまでは言わないけど、やはり構成的な問題で退屈な印象に落ち着いてるかなと。

 

ゴースト トリック

 

『ゴーストトリック』 70

 このビジュアルありきなゲームシステムにしても、溢れんばかりな犬猫おやじへの情愛にしてもそうなんだけど、恐らく巧舟の趣味性が最も出た作品。全面2Dポリゴンなんて大掛かりなことをしてる割に内容は純粋にパズルをしてるぶん、ストーリーとゲームに密接性は認められないので、お話勝負なのは間違いないけども、(ファンとしては言いにくいところではあるが)10数時間引っ張るにはトリックが大したものじゃないのがネック。それだけに世界観なりキャラクターなりゲームの試みなりが好みと合うか、つまり巧舟への親和性によって作品との距離感が決まる。

 

名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう2人の名探偵

 

『名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう二人の探偵』 58

 御手洗潔だってホームズと対決してしまうこんな時勢なのだから、そういうめぐり合わせだってあってもおかしくないんだろうけど、「その発想ありき」なので世界観の統一が全く取れていないのが突貫工事を感じずにはいられない。とはいえクロスオーバーした時点で完結してしまいがちなコラボ企画にしてはきちんと己の料理をしており、パッケージとしての印象はしっかり残る作りにはなっている。シナリオ単体で見ればもう少し評価は高いはずだが、コマンド選択型とはいえコマンドがただ選ぶもの以上の意味を持たせれていなかったり、犯行トリックも事件発生前から解ってしまうレベルだったりで、ゲームとして平坦にも程があり、テキストを読ませる媒体の域を脱せていないのが評価を落とす原因になっている。

 

名探偵コナン ファントム狂詩曲 - 3DS

 

『名探偵コナン ファントム狂詩曲』 53
 

 バグとフリーズが良く指摘されるソフトだけど、それ以上に気になるのは構成的に中盤が抜けていて打ち切りマンガみたいに最終話になっている点で、恐らくシナリオ構想はあったけど予算的に力尽きたんじゃないかなという印象でフィニッシュしている。プレイヤーに解かせるトリックは思いのほか発展性があって楽しく作られているけど、ひとつのストーリー、ひとつのパッケージとしてまとまってるのは前作『マリオネット交響曲』のが上で最後の最後まで物足りなさがついて回った作品。

 

探偵 神宮寺三郎DS 赤い蝶

 

『探偵 神宮寺三郎DS 赤い蝶』 56

 ハートフル化への批判を受けハード路線へ回帰しつつ、「やくざ」もほぼ出てこないのは当時のファンからの批判を受けてからだろうけど、展開や人物造形がステレオタイプ依存でコミュニケーション的な面白さが薄く結局ファンタジーに陥るワークジャム神宮寺の病巣を解決するまでは至ってない。流石にDSでのノウハウが蓄積され探偵ゲームとして楽しめるレベルまで持ってきているので、長編・短編ともに一定の水準を満たしたDS以降のシリーズ内で最もまとまっているパッケージではある、というのは巷の評価で定着してる通り。DS内では最も評価の高い作品ではあるけど、これ以上の点数がつけれないのは、やはり簡素化された金太郎あめ演出が神宮寺三郎の路線と合っていない(その作品を印象付けるような没入感が提供できていない)ことと、何より良識ファンタジーすぎて実在感が希薄なのが原因です。

 

サクラノート ~いまにつながるみらい~(特典無し)

 

『サクラノート いまにつながるみらい』 34

 

 チュートリアルを終えたあたりで思い入れ皆無な世界観に対する設定集をズラッと見せてくる時点で察せれるけど、基本的に「会議室でおじさんたちが年甲斐もなく盛り上がった」ところで完結しちゃっているソフト。そもそも20年前の特撮(つまり親世代の価値観)が再放送をきっかけに子ども内でブームになんて展開は、自分の価値観を子どもに押し付けてくる悪い大人の発想であり、多かれ少なかれ同じような思考が始めから終わりまで付きまとってきていて、その気持ち悪さがエンディングで最高潮に持ってこられるのは悪用されたプロの技術というものでしょう。作品として演出力の不足でプロットが伝わってこないとか、補完機能がどうでも良い小話ばかりで凄い退屈とかそういう指摘もできるけど、それ以前にこれをやりたいなら商用ベースは止そうよと。

 

マイアミクライシス

 

『マイアミクライシス』 41

 

 「ここでこの場面が欲しいから、こういうシチュエーションで」というオーダーに従ったんだろうけど、それは流石にあり得ないでしょな展開が1から10までを占める作品。演出レベルがDSオリジナルにしてフィーチャーフォン移植とどっこいなのはお察しだけど、ライターはどういうテンションでテキストを作ったのかだけは興味を引く珍作なので、5時間くらいで終わるの込みで適正価格(~980円)なら買ってもいいかな。あの終わり方含めて面白がれるマインドがあれば前提ではあるけど。

 

 

エル ザ プロローグ トゥ DEATH NOTE ~螺旋の罠~

 

『L the ProLogue to DEATH NOTE 螺旋の罠』 49

 

 『THE爆弾処理班』より爆弾処理する回数が多いゲーム。アイテムを使いながら解体するゲームとして作られているが、レベル概念があるため、後半に行くほどアイテムを使わず爆弾の秘孔をつきながらごり押しで解除するレベル至上主義へ行きつくこととなり、作りとしてはハクスラに近い気がしなくもない。ゲーム内で制限時間が設定されているが、後半になるほどシビアで、場合によっては冒頭からやり直しになるのに既読スキップなしなのはフォローの余地なし。ストーリー的には良心的な方なので、もったいなくはある。

 

有罪×無罪

 

『有罪×無罪』 61

 

 今となっては地味でビジュアルや現実的な展開が加点対象になっちゃってる作品だけど、テキスト面は意外に現実よりエンターテイメントを重視している印象で、その面での面白さを求めた結果があのオチなんじゃないかなとは思う。リアリティ側であるなら、もう少し社会派寄りにした方がよかった気もするけど、まあそこが(『逆転裁判』影響化のカジュアルな推理システムとライトユーザーへの訴求が求められた)DS市場の限界なのかなとも思う。まともにやれば周回前提だけどUIが未整備、というのも如何にもDSなんだけど、これ出た当時でもこの水準は2周は遅れてるんだよね。本格的な裁判員ゲームは今でもインディーズで出る可能性はあるだろうけど、そういう題材の中でエンタメ要素をちゃんと成立させてるからこそ今でも評価が高いわけだし、それが商業メーカーから出ている意義でもあるんじゃないかな。

 

SIMPLE DSシリーズ Vol.48 THE 裁判員 ~1つの真実、6つの答え~

 

『THE裁判員』 58

 

 パッケージオリジナルでのSIMPLEシリーズでは最終盤(本作がDSでは最終作。以降はDLが主戦場となり、インディーズと食い合いで定番以外はアイデンティティを失っていく。)ということもあって低価格帯シリーズの予算規模から考えるとかなり作りこまれた作品。ゲームでは無視されがちなイデオロギー的な部分を汲んだシナリオバリエーションや、画面も間が持つ程度の演出が確保されている点を評価したい。ただフィクションとして捉えると、テキスト全体から作り手の自意識の範囲外に対する興味のなさが透けて見えて基本的には自分には合わなかったかな。ゲームデザイン的には情報収集がメインのところになるんだけど、裁判員間でのトークがないので収集しないといけない情報の予測がしづらく、理不尽感が強いのも残念。

 

 

クロス探偵物語1 前編

 

 

『クロス探偵物語』 74

 

 90年代の後半に発売された作品ではあるけど、文脈的には80年代の探偵ADVに見られた「展開の発見」(つまりフィールド上で何度も同じところを探し新しい展開を見つけるタイプのフラグ立て)が主軸になっていて、この当時でもそこそこ古めかしい作りなんじゃないかな。基本的に作業扱いされるアプローチではあるんだけど、マッハシークと自称した軽快なコマンドへのレスポンス、神長豊によるウィットに富んだキャラクター陣、東祥高による繰り返しに耐えるBGM、挫折しない程度のゲームバランス、そして劇中の私服が毎日変わってることからも解るようにグラフィックスのカット数や画面変化への拘りが本来発生するストレスや映像的な飽きを軽減し「フラグ立てに本来あった魅力」を最大限まで引き出していたと思われる。後半の3D捜査パートが入ってきたあたりでゲームプレイの流れが停滞してしまっており、前半に魅力とされる要素が凝縮されているので、自分としては前編78点、後編70点くらいの裸感。これ系がIPとして成立する程度の個をもった上でパッケージ規模でリリースされたのは、最近だと『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』のリメイクが出てはいるんだけど、この時代が最終カーブという印象は否めず、90年代のこの時点を更新する作品がないからこそ『2』が長らく求められているんじゃないかなと思わなくもない。

(コマンド選択の総当たりでも、スペックが上がり作業的プレイへの批判が増えるにつけフィールド上でフラグを探すタイプの作品は減少してゆき、次にすべき行動がはっきりした「キャラの自意識をロールプレイングする」没入感を重視する作品が増えていくこととなる。まあ『クロス探偵物語』自身がコマンドの最小手を募集するキャンペーンやってたように、『殺意の階層』『ブルーシカゴブルース』『MISSING PARTS』的な時間制限のもとで次の行動を予測しながらコマンドを選ばせるアプローチもあったんだけど、「展開を発生させる」ための分岐を主軸にしたアプローチで、コマンドを用いていてもコマンド総当たりとはデザイン自体が違うんじゃないかなというのが自分の判断。よくコマンド選択をノベルゲーム化するように求める主張も見かけるけど、分岐やマルチシナリオを軸とした没入が軸となるノベルゲームではアプローチ方針自体が異なり、他ジャンルで言えばJRPGがARPGになるレベルでの方針転換と考えられ、実現性がないとは言わんけど『burst error.EVE the first』のように本来の楽しさがスポイルされる可能性は潜んでるんじゃないかなと思います。)

 

【コメント】

前回から続いてのB面記事になります。取り上げた作品全部レビューは流石に無理ですね。