DSのADVを(入手困難になる前に)救いたい | アドベンチャーゲーム研究処

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アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【概要】

任天堂のe-shopが終わっちゃうので、3DSを中心に多分パッケージに需要が集まって

自分の好きな作品や思い入れのある作品の購入が難しくなる可能性があります。

個別でこのソフトが値上がりします!みたいな話ではなく、

自分の基準で保管したいソフトは買っておいた方が良いかもね。という記事。

 

【オールドユーザーよ、聞け】

 

 2007年を中心にニンテンドーDSでADVがブーム化したのも気づけば15年が経過。2354本とされる旧DSも現役を退いて10年以上が経過し市場に出回っているパッケージの絶対数も減少しており、何よりそのパッケージを取り扱う小売店の棚数自体が縮小していった結果、ここ数年でDSを含めた(特に初代PS~DSあたりの世代の)レトロソフトの値段は上昇傾向にある。

 またそのゲームソフト数に対してダウンロード環境はWiiUでごく一部が配信されたっきりで、その売り場であるe-shop(WiiU・3DS向けのオンラインショップ)も2022年度末で閉店。さらに任天堂自身からDSソフトをサルベージする気配が全くしない現状、良作とされる作品陣や、昔楽しんだソフトを再度遊ぶというのは徐々に難度が上がってゆく…というのは想像するに容易な状況と言えるだろう。

 

 このバックボーンに加え、コロナ禍になってからせどり商材としてレトロゲームがターゲットとなった時期もあるため、最盛期と比べるとだいぶ落ち着いてきたとはいえ、現時点でもDSソフトの市場価格はコロナ前と比べて明らかに荒らされており、

発売当初はそんなに評価を受けてなかった作品や、高評価とはいえ値段は常識の範囲内だったソフト達が唐突かつ理不尽なプレミア化を果たしていってしまっている。

 市場価格は取引成立しなければ徐々に下がってくるだろうし、マニアのニーズが少なくなれば値段が落ち込むソフトはあるかと思われるが、それを現状どのソフトが落ちるかなど想像するのはほぼ不可能だろう。

 

ニンテンドーDSi LL ダークブラウン【メーカー生産終了】

ニンテンドーDSが発売されたのが2004年12月、最後のソフトである『特命戦隊ゴーバスターズ』が発売される2012年9月まで実働7年半稼働していたハードとされる。『逆転裁判』の普及や脳トレブームによるカジュアル層の流入で市況的に盛り上がったこともあり、プレイヤーにあまり技量を要求しないADVが大量にリリースされていたのも特徴で、恐らく00年代以降では最もこのジャンルのパッケージソフトが発売されたハードと思われる(同世代のPSPもノベルゲームがかなり発売されたが、10万本クラスで売れる作品は『ダンガンロンパ』『シュタインズ・ゲート』『うたの☆プリンスさまっ♪』くらいで、ノベルゲームの移植市場としては機能していたが、ADVの売れないハードと言われていた)。逆に次世代の3DSではカジュアル層がスマートフォンへ移行してしまった結果、シリーズものは何作か出たもののADVは商業的に縮小されていく流れとなった。

 

そもそも入手困難になるソフトとはどんなものだろうか?

旧来の家庭用ゲームで入手困難となれば高額、プレミア化してゆくことになり、その条件としては

 

①出荷数が少ないこと

②代替性が低くマニア向けの需要が高いこと

③権利関係で再販が困難であること

 

の三項目に当てはまるかが見極めポイントとなっていたかと思う。

 

 コロナ禍以前からDSでは上記3条件に当てはまっていた『theresia dear emile』『どき魔女ぷらす』『キモかわe』『八つ墓村』『キミの勇者』『魔女になる。』などプレミア化したソフトは存在していたが、コロナ禍以降はフリマアプリが普及し、上述の繰り返しになるけどレトロゲームが”せどり”(需要のある作品を小売りで購入してネット販売する行為。手数料が間に入るため価格を小売りで買う時点より高めに設定することとなり、流行するとショップの在庫がなくなってくため市場価格が上がっていく)のターゲットとなった経緯もあって『東京トワイライトバスターズ』『AnotherTime AnotherReaf』『いかもの探偵』など1,000円以下で取引されていたソフトが急激に値段が上がってプレミア化の仲間入りしており、その他でももともと一定の知名度があった『有罪×無罪』『探偵神宮寺三郎 赤い蝶』『探偵 藤堂龍之介の事件譚』あたりも価格が定価以上まで上昇。『サクラノート』『マイアミクライシス』『落シ刑事』など明らかにクオリティ面で問題のあった作品まで価格帯が以前の2~3倍の水準まで上がってきてしまっており、小売店がまだ数の多かった頃は出荷数が少なくてもニーズがなければ在庫リスク扱いで1,000円以下に収束していく従来の動きは成立せず、在庫を抱える受け皿が少なくなったのと併せ出荷規模~3万本クラスなら最早なにが入手困難になるか不明という状況に陥っていったとみられる。

 

 大手メーカーでも『ゴーストトリック』(カプコン)『ラストウィンドウ』(任天堂)『ナナシノゲエム』(スクエニ)など発売後に大幅な値下がりをしたわけでもなくある程度値段を維持していたソフトは、販売元がしっかりしており出荷量もある程度確保されていたバックボーンがある為、本来なら定価を超えるようなことはまずなかった(『カービィのエアライド』のように何十万規模で出荷したもののプレミア化した稀有な例や、出荷量が少なければ販売元がしっかりしていても入手困難となることはあるので、旧来であっても必ずそうとは言い切れません)のだが、これらも徐々に値段の上昇が見られる。もちろん『ウィッシュルーム』『采配のゆくえ』『タイムホロウ』『ザックとオンブラ』『西村京太郎サスペンス』あたりの大手~中堅クラスから発売された作品は、出荷量がかなり稼げていた当時の市況もあるので、状態に拘らなければソフトは確実に手にできるため数百円程度で確保できる環境に変わりはないとは思われる。

 

ゴースト トリック

『ゴーストトリック』は8万本のセールスで、現在の市場価格(4000円弱)になるような出荷規模ではないんだけど、源流にある『逆転裁判』シリーズ自体が止まってしまった関係で掘り返し需要が高まったかと思われる。同じように『ダイダロス』でド派手にやらかし実質的にシリーズ停止へ追い込まれている『探偵 神宮寺三郎』もファンから好評で比較的値段を保ってる程度だった『赤い蝶』が掘り返され値段が1万円近くまで上がっていたりする。同じような経緯をもつ3DS『Ghost of the Dusk』も、気づけば定価近くまで価格上昇しているのでe-shop閉店後は入手難度は更に上がっていくとみられる。

 

 どれにしても現状プレミア価格のソフトだからといって、出荷数が極端に少なく現物でなければ意味をなさないコレクター需要のもの(例えばプレミアソフトとして有名な『秋山仁の数学ミステリー秘宝インドの炎を追え!』はムック本の付録として書店のみの流通となっており、小売店がソフトを発注し売れなければ値下げしながら販売されていくゲームと販売するルール自体が異なって、本扱いなので売れ残りは販売元へ返本され”定価で売れた数しか出回らなかった”と考えられ、通常のゲームソフト以上に市場へ出回る数が絞られてしまったバックボーンがある)を除けば、リマスター化などで再商品化がかかると値段は落ち着くため、結局どれが高値維持かなんてのを読み切ることは不可能と思われる。また、Wiiがブレイクした当時もGCソフトが値上がり傾向だったのが、現在では比較的落ち着いているのを見てもわかるように、需要側も有限である以上はプレミア化の絶対数が上限なく増えることは考え難く、クオリティ面で弱い作品は時間の経過とともに値段も低下する可能性があるので、今高値でもどうしても欲しいというものを除けば様子を見てみるのも手なんじゃなかろうかと。

 

という経緯もありまして、比較的値段が上がっていないソフトを念頭にしながら、

 

①自分の思い入れのあるソフトを確保していこう。(回顧)

②今でもサルベージして遊べば楽しめるものは手に取ってみよう。(布教)

 

という趣旨へ行きつくわけですね。

 

【では、どんな傾向の作品が入手困難になる可能性があるのか?】

 

.魅力に代替性が認められないパターン

 

 後々出世したクリエイターにファンがついて過去作に遡りたいという需要が生まれる、発売当初に高評価を受けたものの権利関係で再販がかからず後々ニーズが生まれた…などの経緯で需要の天井を突破するパターン。有名なのはPS『夕闇通り探検隊』で、もともと評価は高いもののPS後期の作品で出荷数は少なく、原作者との権利関係から再販は絶望視されたこともあり、プレミアソフトとして知名度が高くその相乗効果もあって値段が上がり続けている。

 このタイプはソフトのコンセプトや作家性が前に押し出されるケースが多く、ゲーム機そのものが進歩(つまりテクノロジー的な進歩)しても”魅力とされるものの代替が不可である”ことがニーズの根本にある。もちろん、出荷数が確保されていれば再販が絶望視されていても必ずしも入手困難になるわけではない。例えば『クロス探偵物語』も神長豊の作家性という”代替性のない人気”があり(恐らく権利関係で)アーカイブス化の経験は一度もないが、00年代初頭に廉価版が2000円で販売された関係で市場に一定数のソフトが出回って値段が上昇したことはない。

 DSでもカルト系のクリエイターが関わっている『ツキビト』(『女神転生』立ち上げ時のスタッフである鈴木一也氏が企画、すでにプレミア化済みで入手困難)や『THE裁判員』『探偵 癸生川涼介事件譚 仮面幻影殺人事件』『湯けむりサスペンス』などは代替性のない作品かと思われるが、クリエイターの個が強すぎるのに反してゲームデザインが化石なのも多々見られるので、ここはユーザー側の好き好きで保管やプレイは判断したほうが良いと思う。

 

探偵・癸生川凌介事件譚 仮面幻影殺人事件

『探偵 癸生川涼介事件譚 仮面幻影殺人事件』

 フィーチャーフォンで配信された原作を含め、Switchでシリーズが復刻されていることもあって、DSのソフトを補完する必要性は特にはないと思うけど、Switch版は書き割りでアングルを取り入れてるDS版の方が個人的には好き。20年以上前の単価の低いところとはいえ、累計400万DLを記録しているタイトルが触れることさえ難しいという状況が7~8年くらい続いていたと思うと、やはりダウンロード市場って保全性でかなり問題ありなんだなと。e-shopが終わればアークシステムワークスの『脱出アドベンチャー』シリーズなんて新規プレイがほぼ不可能になるわけだし。

 

SIMPLE DSシリーズ Vol.48 THE 裁判員 ~1つの真実、6つの答え~

『THE裁判員~1つの真実、6つの答え~』

 SIMPLEシリーズも廉価で販売された関係で『THE推理』『THE鑑識官』など出荷的に数万規模のものもあるが、Vol.数を重ねるごとに変化球が多くなるのが特徴でそれに合わせ出荷数も少なくなる傾向にある。DSについては定番ものと並行して変化球やニッチ向けのタイトルが多く発売(Vol.3の時点で『THE虫取り王国』だしね)されており、『THE 装甲機兵ガングラウンド』『女子高生逃げる!心霊パズル学園』(こちらはSUCCESの仕掛けた別廉価ゲームのシリーズ)などプレミア化した例もみられる。この時期のDSはADVブームだったこともあってSIMPLEシリーズはトムキャットシステムズを中心にADVを多数展開しており、後半に進むほどクオリティ面でもブラッシュアップが進んだこともあって、この『THE裁判員』はSIMPLE DS文脈の集大成と言える完成度になってる。

 

.キャラクターゲーム

 

 版権もののADVは”原作世界の拡張媒体”の一つである面が確実にあり、「ゲーム的にはちょっと…」と思っても気づけば入手困難になっていることが多く、ゲーム的な出来不出来とは離れたところにあるので、そもそも保管性・プレイする優先度ともに高いのか書いてる側として疑問符は正直ある。先に挙げた『夕闇通り探検隊』とセットでプレミアソフトの代表例とされる『serial experiments lain』(統合失調症と思しき少女たちの主観を通して、90年代後半の自意識過剰な世界が楽しめるカルトアニメが原作。GYAO!とかでたまに配信されることがある。)も、原作となるアニメがカルト的な人気があり”本編以外に拡張して楽しみたい”というファンの受け皿となったからここまで高値(7万円オーバー)となっていると考えられ、ゲームとして遊ぶとしてもかなり人を選ぶと思われる。

 ということで原作ありきになりがちな版権ものだが、原作(アニメ)を中心としたメディアミックスの周辺展開という立ち位置なのでわざわざ再販されることは滅多になく、あってもアーカイブスというより「ファミリーコンピュータ ジャンプ」のようなワンパケになった場合や、現行機に新作が出た際の初回特典のような変化球的なリリースとなることが多いため、オリジナル版を確保が基本線となってくる。ただし入手困難になるのはマニアックゆえに出荷数が絞られたものが主となり、例えばDS内では出荷過多でワゴンの常連だった『DEATH NOTE 螺旋の罠』や『踊る大捜査線THE GAME』などは、如何に原作が再度ブレイクしたとしても入手困難になる…といったことはまずないだろう。同じような理由で『名探偵コナン』のようなビッグIPも通常であれば入手困難にはならないんだけど、実は後半の作品になると出荷を大してしていなかったりもする。

 またDS市場では電子書籍が普及する以前ということもあり、ADVとデジコミの中間地点のような作品も一定数展開されたのも特徴となっており、今となってはDSでする意味があるのかわからないものもあれば、DS電撃文庫のように原作に沿いながらゲーム性もある程度入れていく作品もあったりして、完全に新規でゲームを掘り起こす場合は、ある程度は事前に調べてからの判断も必須になってくるだろう。

 つまりこの項目であれば、自分の好きだったIPの版権ゲームがあれば買っておくべきOR興味のあるシステムの作品が見つかればファン向けを覚悟して確保を、となる。

 

名探偵コナン ファントム狂詩曲 - 3DS

『名探偵コナン』

 権利関係的に再販は難しそうな上に関わっているクリエイターも後年著名となった『名探偵コナン&金田一少年の事件簿』なんかは、企画や出来的に保管性はありそうだけど、入手困難になるほど出荷絞ってるわけじゃない(ランキング内だと7.3万本)。そもそもゲームの出来も後世代となるが3DS『名探偵コナン マリオネット交響曲』『ファントム狂詩曲』の方が高く、特に後者は縹けいか氏(後に『ファタモルガーナの館』を制作)がシナリオを手がけているため保管性はこっちの方がある気はする。

 

DS電撃文庫ADV バッカーノ!(特典無し)

『DS電撃文庫』

 DS中期に発売された電撃文庫に演出を入れたデジタルな読み物…かと思いきや、分岐やサブシナリオなどシステム的に少し手の入ったものも出ている。例えば熱中日和の開発した『BACCANO!』はDSでは珍しい群像劇によるザッピングシステムに挑戦しているんだけど、アニメ素材を分解してゲームとして再構築した内容なため、システム的な体裁は整っていても唐突な分岐やシナリオ構成的な没入感の欠如など踏み込むんだ途端に粗が見え始める典型的な版権ものゲームでもある。DSの場合は版権もので良作ADVはあまりなかったイメージが強いが、非ゲーム層をターゲットにした作りこみの面で弱い作品が多かったのが原因なのかも。

 

3.ハード後期に発売された作品

 

 ゲームハードにサイクルという寿命がある以上、後期になるほどスペックの相対的な低下やガジェットに対しユーザーは飽きで需要は下がり、メーカーも次世代への準備に移ったりそもそも次世代機が世に出た状況でのリリースとなるため、出荷する量が絞られ良作さえも埋もれる傾向がある。有名なのが多いのはファミコンで『メタルスレイダーグローリー』『タイムツイスト』『赤川次郎の幽霊列車』などがあげられ、その後もPS2世代くらいまで遡っても入手困難率はどのハードも後期になるほど上がると思われる。

 DSの場合は07年ごろがピークで、後半になるとフィーチャーフォンで流行ったMobage・GREEに代表されるソーシャルゲーム

(06年~から成長曲線を描き、10年代以降はスマートフォンへの移行に失敗し縮小路線へ)とスマートフォン(10年~成長曲線を描き、DSの特色だったカジュアルユーザーが奪われる形となった。3DSが『モンスターハンター』などシリーズものを中心とした”既存の遊び”が多数派となり、かつて岩田聡社長が打ち出した「ゲーム人口の拡大」というお題目とは逆方向に突き進んでしまった大元の原因と思われる)に可処分時間が奪われて、10~12年ごろの作品は出荷数的に絞られていくこととなる。もちろん最盛期の頃もリリース数が多いため、受注がつかず気づかぬうちに埋もれたソフト(『theresia』『キミの勇者』はこのパターン)もあるが、時期よりも作品の内容やコンセプトに寄るところが大きいので、入手困難になる理由が予測しやすく、ここでの確保基準とは別軸での判断になるだろう。

 

東京トワイライトバスターズ ~禁断の生贄帝都地獄変~(特典なし)

『後期発売のソフト』

ゲームの開発期間はDSクラスであってもピンキリではあるが、中小規模や新興メーカーから発売された作品はリリース優先で1年未満のケースが多数あったと想像される。後期はそういった粗製乱造タイプは少なくなり、開発元がDSで何ステップか踏んでノウハウを築いている作品OR最盛期に発売しようとしたが延期で後期になってしまった作品が多めになってくる。前者は『どき魔女ぷらす』『赤い蝶』などで、後者の代表例はDS中期に発表されながら何度も延期を繰り返し後期発売となってしまった『東京トワイライトバスターズ』が挙げられ、比較的ファンから評価を受け、後世が掘り起こすと優先的にプレイ対象となるため、入手難度も相対して上がってしまう傾向にある。

 

【コメント】

アンケート取ったので作成した記事ですが、めちゃくちゃ尻すぼみですな。

こちら立ち位置的にA面となります。