アドベンチャーゲーム研究処

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アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
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$アドベンチャーゲーム研究処-アドベンチャーゲームの値打ち
アドベンチャーゲームの短文レビュー集。見解をパッと見たい方向けの記事。
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【概要】

前世代機からマルチプラットフォーム化が進んだうえに、国内市場の主戦場だった携帯機も3DSからSwitchというハイブリットハードへ移行、PSVitaは撤退してしまった関係で、ある程度知名度のあった中規模シリーズも現行世代でプレイするのが困難となりつつあるため、そういった過渡期で遊ぶのが今後さらに難しくなりそうなシリーズを今のうちに偲んでおこうという記事です。

ルール的にはPS4以降のハードでシリーズ最新作が遊べない、くらいでよろしくお願いします。

 

喪われつつあるのはこのブログだろって?ははは、確かに。

 

【プレイ環境が喪われつつあるアドベンチャーゲームシリーズを偲ぼう】

 

かまいたちの夜 輪廻彩声 - PSVita

『サウンドノベルシリーズ』

初出:『弟切草』(1992年3月7日)

最終作:『かまいたちの夜 輪廻彩声』(2017年2月16日)

 

 厳密には『428 封鎖された渋谷で』がPS4・Steamで発売され定期的にセールもされているので、シリーズへのアクセス自体は難しくないんだけども、そのほかのシリーズ作は全部まとめて現行機で遊ぶ方法が存在しない。特にマスターピースであり最も高い知名度を誇った(=商業的なハードルをクリアしやすい)『かまいたちの夜』が現行機で一切遊べない、というのはかなり厳しい状況だろう。

 プレイ環境が整わない要因は、ちゃんとした新作を出していた90年代~00年代は、SFC~PS3というファーストパーティがアーカイブスをほぼ放棄している期間と丸被りしている影響ももちろんあるが、リマスターなどで再販をかけても、そもそもノベルフォーマットが氾濫しすぎて、金をかけてるわりにサウンドノベルとノベルゲームでの違いが伝わりづらい、というのが大きいかと思われる。そもそもサウンドノベルは当時流行っていた角川ホラーや本格ミステリが母体なので、キャラクターが主軸になっている現在のADV市場とニーズとかみ合っておらず、その辺は元チュンソフトのADV文脈が海外で評価・セールスを得ている打越鋼太郎ディレクションシリーズに合流している現状から見ても社内の立ち位置が何となく想像できるところではある。

 サウンドノベルと言えば、分岐による体験軸はもちろんのこと、テキストと同期した多数のカットや臨場感を高める音響など、しっかり予算を組んだ演出による没入感、というのがアイデンティティにあるわけだけども、最終作となっている『かまいたちの夜 輪廻彩声』はリメイク元の『かまいたちの夜』の骨格は同じものを使いながら視覚的な演出はスケールダウンしたものとなっており、シリーズとして存在意義が認められるレベルのカネを角川書店が出す気がないというのも、期待感を削ぐ一因か。

 つまり私が言いたいことは、「新作はもう無理なんだろうけど、商業的なミッションこなせるだろうから『かまいたちの夜』トリロジーパックを出してください」ってことですね。

 

MISSINGPARTS the TANTEI stories Complete - PSP

『MISSING PARTS THE TANTEI STORIES』

初出:『MISSING PARTS PARTⅠ』(2002年1月17日)

最終作:『MISSING PARTS the complite』(2012年11月29日)

 

 DCで発売され、『クロス探偵物語』や『シルバー事件』と同じく売れなかった良作として知られた『MISSING PARTS』シリーズも、最終移植がPSPなこともあってプレイする環境が消失していくソフトのひとつと言えるでしょう。

 開発元だったF.O.G.は宗清社長の逝去に伴い日本一ソフトウェア傘下→解散でソフトハウス内のブランド化してしまっており、シナリオも完結しているので続編的な作品の可能性は限りなくゼロとみられる。そもそも、後継作としてスタッフが共有している『一柳和』シリーズ(こちらもプレイ環境が消失しているけど、『MISSING PARTS』より優先される可能性は低い)があるため、メーカーも続編は不要と判断をしたと言える。

 現行世代への復刻については、日本一ソフトウェアが自転車操業移植に積極的なメーカーでPS2~PSP世代だった『流行り神』をつい最近リマスター化しており、(新川社長は辞めちゃったけど)経営陣も宗清社長と親交のあった世代が残っているので作品として消失してしまう現状を鑑みて候補に挙がってくる可能性はあるかと思われる。知名度はあり一定数のファンもいるシリーズではあるけども、そのファンが多く見積もっても(発売日に定価で買うとなると)2~3000人くらいなのがリマスター化最大のネックか。

 

 

SIMPLE2500シリーズ ポータブル Vol.3 THE どこでも推理~IT探偵:全68の事件簿~ - PSP

トムキャットシステム開発シリーズ(『THE推理』『THE鑑識官』)

初出:『SIMPLE1500シリーズ Vol.59 THE推理 〜IT探偵:18の事件簿〜』(2001年4月26日)

最終作:『SIMPLE DLシリーズ Vol.23 THE 鑑識官 〜File.2 緊急出動!落ちたホシを追え!〜』(2013年11月27日)

 

 『黒後家蜘蛛の会』を下敷きにした短編ミステリの『THE推理』と、それを中編化させていった『THE鑑識官』、世界観を共有した作品も展開されたこのシリーズも3DSへの『THE鑑識官DS』移植に付属された追加エピソードが最終作。低価格帯で構造的に込み入ったことはしていないカジュアルかつ気軽なADVであることが売りだったんだけども、短編ミステリ(というより推理クイズ)っぽいカジュアルゲームというジャンルはスマホとSwitch向けにフリー~低価格帯で発売されており、それらと比べればシナリオやキャラクターの強度は当然こちらが上ではあるものの、商業的なアイデンティティはかなり奪われていると思われる。

 開発元のトムキャットシステムズも大久保社長の逝去に合わせて解散済みで、同じテイストの作品は生まれ得ない状況となっており、クリエイティブ・商業両面でかなり不利な状況となっているのは間違いないが、かつてパッケージが5万本規模を捌いた実績はあるので、「探偵・癸生川涼介」がリバイバルされたように世代が一周すれば復活の目はないこともない気もする。肝心な作家性(=代替のなさ)が薄めで、販売元のD3パブリッシャー自体がSIMPLEシリーズをテーブルゲーム以外は放棄している現状、アーカイブスコレクションみたいな感じでサルベージする気があるか?というと、今はなさそうだけどね。

 

PSソフト トワイライ トシンドローム ~探索編~

『トワイライトシンドローム』シリーズ

初出:『トワイライトシンドローム 探索編』(1996年3月1日)

最終作:『トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説』(2008年7月24日)

 

 90年代中盤~後半に発生した学園オカルトブームに乗る形で、日常の延長線上に都市伝説を捉えた「肝試し系ホラーADV」として登場した『トワイライトシンドローム』シリーズも、最新作である『禁じられた都市伝説』に至るまでパッケージ以外で展開したことがなく、関連作品を含めて値段は軒並み高騰、プレイ環境を整えるのも年々難しくなっている。初代ディレクター(須田剛一さんはこの人の後任)が自身の手がけた過去作に権利主張をしている関係で、特に初期作は再販が絶望視されているものの、このシリーズの最後の商品展開はネットで遊べるパチンコ台(2011~12年)で比較的新しめなこともあり、『トワイライトシンドローム』というIPの権利はスパイクチュンソフトが持っていると思われる。シリーズとして停滞したのはスパイク以降の作品は評価が低く、最盛期は30年近く前でファン層も高齢とくれば、商業的な理由で新作を出す判断には繋がっていないと予想するのは容易でしょう。(チュンソフト込みならJホラーIPは『弟切草』も所持してるわけだしね…)

 ただ、『トワイライトシンドローム』にしろ『夕闇通り探検隊』にしろ、今プレイするとテキストや設定よりロード時間や演出のテンポ感に明らかな時代遅れが生じており、アーカイブス的な再販よりも初代をベースにしたリブート的なものの方が作品的な意義はあるんじゃないかと思われる。思われるけども、やっぱり権利関係がね…。

 この作品は等身大なティーンエイジャーと日常感覚への拘りが、ホラーとしての現実感を強める効果があったので、現代的な設定に置き換える違和感より、そこを突き詰めることができるのか?という点が再商品化では最大のネックであり、それこそ『再会』以降の低評価の要因でもある。直近ではインディーズでも一応その手のアプローチはあるんだけど…とりあえずこの記事を見て、そして貴方が感じたこと、それがすべてだと思います。

 

銃声とダイヤモンド - PSP

『SCEパブリッシングゲーム』

 

 シリーズじゃないんだけども、前世代機のファーストパーティ関係では最大のトピックというか、現状として新作・再販ともに期待感ゼロな状況なので…。

 SCEと言えばPS~PS2時代の『やるドラ』系譜やPSPでの『銃声とダイヤモンド』『遠隔捜査』『トリックロジック』などADVを一定数出していたメーカーだったんだけども、今はそういった「日本市場で採算をとるのが前提のソフト」は一切出ない状況となっている、のは周知のとおり。原因はPSVita失敗に伴い日本向けソフトのパブリッシング事業をほぼ撤退したことで、2016年にSCEからSIEとなったタイミングで本社機能がアメリカへ移管したのもあって、今のSIEにとって日本市場は「市場のひとつ」であっても「その市場に特化したソフトを出す対象」とはなっていない。まあこの辺りは、PlayStation Japanスタジオを閉鎖(名目的にはTeamASOBIに統合)したり、ローカライズの仕様を統一するために日本文化として定着している決定ボタンのUIを変更したり、最初にユーザーに情報を届ける自社広報が英文の翻訳したものだったり…なんてことが平気で起こったりしている以上、SIE側が何を発信しようと「日本軽視」の言い逃れはしようがないでしょう。

 ファミ通で卒業記事が出る程度にはPS~PSPの頃の人材は退社済みで、日本向けのソフトメーカーとしての機能は殆ど残っていない(主導したジム・ライアンが社長を辞め日本人社長になろうとも、そもそも人材も文化もなくなってしまっているので、何かするとしてもコンソールに出戻りしたあとのコナミみたいな再出発をすることになる)ため、SCE時代の日本発の作品は、『ロコロコ』や『パタポン』のようなかつて国際的に評価されたものを除けば、会社内では過去資産以下のIPとされていると思われる。PS4前期・PSVitaまでは日本に向けて展開していた関係で、Vitaのオンラインショップが機能している限りはプレイ環境が整えられるのが唯一の救いだが、いつ終わってもおかしくないだけに確保したい人は早めにDLしたほうがいいかもしれない。

 

 

TRICK×LOGIC Season1 - PSP

SCE時代のADVって出来自体はだいたい佳作範囲のものしかないんだけど、ソフトラインナップの充実というミッションも担っていたのである程度の予算感の企画がそろっていて、システムは真似れても大きな予算は割けないインディーや採算性を優先してしまうサードパーティーではカバーできない企画力はあったんだよね。特にPSP時代の『銃声とダイヤモンド』と『TRICK×LOGIC』は復刻の価値あり。表面的な演出ではなくゲームプレイに食い込んだ演出の没入感や、作家を招いた本格的なパズラーとしての推理体験(『春ゆきてレトロチカ』はここが致命的にダメだった)は時代を超えた希少性ありだと思う。

 

【コメント】

喪われている意味では、CSよりもPCの(エロ)ゲームの方が深刻ではありますが。

パックスソフトニカ系では何度も復活し続けていた『ふぁみこん昔話』は、

任天堂がSwitch世代のアーカイブスにADVを入れる気ないようなので

今回の候補になりかけましたが、

ネタがなくなったら突然入れてくる可能性もないことはないかなと思ったので省きました。

【旧DSソフトレビュー】

 

采配のゆくえ

 

『采配のゆくえ』 65

 

 戦国時代の戦乱を大河的ではなく関ヶ原の合戦という局地的なドラマ(司馬遼太郎の『関ケ原』が元ネタと明言されているとはいえ)で描くという、ゲームではかなり珍しい調理方針をとっている代替性のなさが際立つ。基本システムが簡易SLGでストーリー的な落とし込み面が弱く「関ケ原の合戦を描くのはこのシステムなのか?」という疑念はかなりあるし、デザイン的に深度の浅い作りなので特に小早川秀秋が裏切るあたりまで話もゲームも平坦なのは短所なんだけど、戦国武将というナラティブな存在をキャラづくりへちゃんと落とし込んでいて、後半からドラマとしては割としっかりしたものになっているのも含め長所。企画的な失敗による値崩れと、まんま『逆転裁判』な見た目の悪影響が未だに足を引っ張ってる訳だけども、カジュアルとゲームデザインの放棄を混合した粗製品の多すぎるDSのオリジナル作品陣でも、ちゃんとシナリオは盛り上がるし、ほかのゲームではできない体験も提示できているので自分としては評価は高め。

 

東京トワイライトバスターズ ~禁断の生贄帝都地獄変~(特典なし)

 

『東京トワイライトバスターズ』 62

 

ADVというよりRTS的なものをシステムにしてるけども、ゲームデザインや世界観的にはおおざっぱな印象の作品。90年代当時でしか表現できないオカルト具合を楽しめるかが肝で、そういう意味ではDSでも唯一「本物のオカルト」が見れる作品ともいえるんだけど、それをやれるだけの尺と演出はきちんと確保されていて、唐突すぎる展開やカユイところへ微妙に手が届かない仕様を我慢できれば楽しめるソフトかなとは思う。DSソフトの中ではプレミア価格であることも焦点ではあるけど、そもそもPC版は配信で1000円くらいで遊べるという話で。UIもパソコン向けなので十字キーでやるよりはインタラクティブだろうとは思います。

 

theresia -テレジア- Dear Emile

 

『theresia dear Emile』 60

 

 DSで出たワークジャム作品では最もクオリティがあったと思われる作品。ゲームデザイン的にはやや単調かつ中だるみがあって凄くカッチリしているソフトではないんだけど、オールドスクールな脱出ゲームを母性からの解放というテーマに落とし込んでるシナリオ作りと演出を最も評価したい。ほかの(神宮寺三郎を含めた)フィーチャーフォンから持ってきました作品陣と比べても世界観とゲームプレイを一致させようという努力がちゃんと見えていて、なんだかんだ自社から生まれたIPとして気合を入れて作っていたんだなぁという印象で、その真摯さ込みで後期ワークジャムの代表作に挙げても良いんじゃないかな。

 

ナナシ ノ ゲエム

 

『ナナシノゲエム』 40

 

 未だに巷で溢れかえっている『リング』フォーマットのホラー。呪いのビデオ的なガジェットがゲームというのが特色だけど、まあドラマの組み立てはありきたりすぎてつまんないし、恐怖演出も行き当たりばったりでレトロゲーム演出を含めこのソフトならではというアイデンティティも感じないしで、申し訳ないけどノスタルジー以外で今やる必要は特にないんじゃないかなと。もう少しシナリオ構造が複雑だったり、人物描写に面白みがあれば救いはあった気もするけども。

 

ラストウィンドウ 真夜中の約束

 

『ラストウィンドウ 真夜中の約束』 57

 

 ゲーム媒体は地に足ついたものに対して大人であるという評価がされがちなんだけど、結局これってオジさんの日常ものが基軸になっていてフィクションとしての面白さが置いてきぼりにしている面はあるんじゃないかな。UIなど洗練化しても『ウィッシュルーム』ほどトーク面や舞台設定での楽しさは感じず、もともとクオリティの高かった画面作りやキャラ描写で1周には耐えるけど、クリア後に作品世界への思い入れは持てなかった。アプローチ的な失敗という印象の作品。CiNGの遺作ではあるけど、これ以前の『アナザーコードR』や『AGAIN 超心理捜査官』も共通してドラマとしての引きが弱かったかなと思います。

 

探偵・癸生川凌介事件譚 仮面幻影殺人事件

 

『探偵癸生川涼介事件譚 仮面幻影殺人事件』 50

 

 アプリと同じでやりたいことは最終盤のどんでん返しなんだろうけど、真相を後ろへ後ろへと持って行った結果、後半までストーリーを引っ張るだけのプロットが提示できておらず、ゲームプレイとしてはただ狭い世界の痴話げんかを聞いて回っているだけという印象は強い。肝心のオチも青臭すぎて共感できないのはよく言われていることだし、なんか言っても今更でしょう。パッケージ規模の仕掛けを作ろうという気概も、アップ描写が多いのが気になるもののDS作品としては珍しく映像を作ろうという意志も感じるので、悪い作品とまでは言わないけど、やはり構成的な問題で退屈な印象に落ち着いてるかなと。

 

ゴースト トリック

 

『ゴーストトリック』 70

 このビジュアルありきなゲームシステムにしても、溢れんばかりな犬猫おやじへの情愛にしてもそうなんだけど、恐らく巧舟の趣味性が最も出た作品。全面2Dポリゴンなんて大掛かりなことをしてる割に内容は純粋にパズルをしてるぶん、ストーリーとゲームに密接性は認められないので、お話勝負なのは間違いないけども、(ファンとしては言いにくいところではあるが)10数時間引っ張るにはトリックが大したものじゃないのがネック。それだけに世界観なりキャラクターなりゲームの試みなりが好みと合うか、つまり巧舟への親和性によって作品との距離感が決まる。

 

名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう2人の名探偵

 

『名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう二人の探偵』 58

 御手洗潔だってホームズと対決してしまうこんな時勢なのだから、そういうめぐり合わせだってあってもおかしくないんだろうけど、「その発想ありき」なので世界観の統一が全く取れていないのが突貫工事を感じずにはいられない。とはいえクロスオーバーした時点で完結してしまいがちなコラボ企画にしてはきちんと己の料理をしており、パッケージとしての印象はしっかり残る作りにはなっている。シナリオ単体で見ればもう少し評価は高いはずだが、コマンド選択型とはいえコマンドがただ選ぶもの以上の意味を持たせれていなかったり、犯行トリックも事件発生前から解ってしまうレベルだったりで、ゲームとして平坦にも程があり、テキストを読ませる媒体の域を脱せていないのが評価を落とす原因になっている。

 

名探偵コナン ファントム狂詩曲 - 3DS

 

『名探偵コナン ファントム狂詩曲』 53
 

 バグとフリーズが良く指摘されるソフトだけど、それ以上に気になるのは構成的に中盤が抜けていて打ち切りマンガみたいに最終話になっている点で、恐らくシナリオ構想はあったけど予算的に力尽きたんじゃないかなという印象でフィニッシュしている。プレイヤーに解かせるトリックは思いのほか発展性があって楽しく作られているけど、ひとつのストーリー、ひとつのパッケージとしてまとまってるのは前作『マリオネット交響曲』のが上で最後の最後まで物足りなさがついて回った作品。

 

探偵 神宮寺三郎DS 赤い蝶

 

『探偵 神宮寺三郎DS 赤い蝶』 56

 ハートフル化への批判を受けハード路線へ回帰しつつ、「やくざ」もほぼ出てこないのは当時のファンからの批判を受けてからだろうけど、展開や人物造形がステレオタイプ依存でコミュニケーション的な面白さが薄く結局ファンタジーに陥るワークジャム神宮寺の病巣を解決するまでは至ってない。流石にDSでのノウハウが蓄積され探偵ゲームとして楽しめるレベルまで持ってきているので、長編・短編ともに一定の水準を満たしたDS以降のシリーズ内で最もまとまっているパッケージではある、というのは巷の評価で定着してる通り。DS内では最も評価の高い作品ではあるけど、これ以上の点数がつけれないのは、やはり簡素化された金太郎あめ演出が神宮寺三郎の路線と合っていない(その作品を印象付けるような没入感が提供できていない)ことと、何より良識ファンタジーすぎて実在感が希薄なのが原因です。

 

サクラノート ~いまにつながるみらい~(特典無し)

 

『サクラノート いまにつながるみらい』 34

 

 チュートリアルを終えたあたりで思い入れ皆無な世界観に対する設定集をズラッと見せてくる時点で察せれるけど、基本的に「会議室でおじさんたちが年甲斐もなく盛り上がった」ところで完結しちゃっているソフト。そもそも20年前の特撮(つまり親世代の価値観)が再放送をきっかけに子ども内でブームになんて展開は、自分の価値観を子どもに押し付けてくる悪い大人の発想であり、多かれ少なかれ同じような思考が始めから終わりまで付きまとってきていて、その気持ち悪さがエンディングで最高潮に持ってこられるのは悪用されたプロの技術というものでしょう。作品として演出力の不足でプロットが伝わってこないとか、補完機能がどうでも良い小話ばかりで凄い退屈とかそういう指摘もできるけど、それ以前にこれをやりたいなら商用ベースは止そうよと。

 

マイアミクライシス

 

『マイアミクライシス』 41

 

 「ここでこの場面が欲しいから、こういうシチュエーションで」というオーダーに従ったんだろうけど、それは流石にあり得ないでしょな展開が1から10までを占める作品。演出レベルがDSオリジナルにしてフィーチャーフォン移植とどっこいなのはお察しだけど、ライターはどういうテンションでテキストを作ったのかだけは興味を引く珍作なので、5時間くらいで終わるの込みで適正価格(~980円)なら買ってもいいかな。あの終わり方含めて面白がれるマインドがあれば前提ではあるけど。

 

 

エル ザ プロローグ トゥ DEATH NOTE ~螺旋の罠~

 

『L the ProLogue to DEATH NOTE 螺旋の罠』 49

 

 『THE爆弾処理班』より爆弾処理する回数が多いゲーム。アイテムを使いながら解体するゲームとして作られているが、レベル概念があるため、後半に行くほどアイテムを使わず爆弾の秘孔をつきながらごり押しで解除するレベル至上主義へ行きつくこととなり、作りとしてはハクスラに近い気がしなくもない。ゲーム内で制限時間が設定されているが、後半になるほどシビアで、場合によっては冒頭からやり直しになるのに既読スキップなしなのはフォローの余地なし。ストーリー的には良心的な方なので、もったいなくはある。

 

有罪×無罪

 

『有罪×無罪』 61

 

 今となっては地味でビジュアルや現実的な展開が加点対象になっちゃってる作品だけど、テキスト面は意外に現実よりエンターテイメントを重視している印象で、その面での面白さを求めた結果があのオチなんじゃないかなとは思う。リアリティ側であるなら、もう少し社会派寄りにした方がよかった気もするけど、まあそこが(『逆転裁判』影響化のカジュアルな推理システムとライトユーザーへの訴求が求められた)DS市場の限界なのかなとも思う。まともにやれば周回前提だけどUIが未整備、というのも如何にもDSなんだけど、これ出た当時でもこの水準は2周は遅れてるんだよね。本格的な裁判員ゲームは今でもインディーズで出る可能性はあるだろうけど、そういう題材の中でエンタメ要素をちゃんと成立させてるからこそ今でも評価が高いわけだし、それが商業メーカーから出ている意義でもあるんじゃないかな。

 

SIMPLE DSシリーズ Vol.48 THE 裁判員 ~1つの真実、6つの答え~

 

『THE裁判員』 58

 

 パッケージオリジナルでのSIMPLEシリーズでは最終盤(本作がDSでは最終作。以降はDLが主戦場となり、インディーズと食い合いで定番以外はアイデンティティを失っていく。)ということもあって低価格帯シリーズの予算規模から考えるとかなり作りこまれた作品。ゲームでは無視されがちなイデオロギー的な部分を汲んだシナリオバリエーションや、画面も間が持つ程度の演出が確保されている点を評価したい。ただフィクションとして捉えると、テキスト全体から作り手の自意識の範囲外に対する興味のなさが透けて見えて基本的には自分には合わなかったかな。ゲームデザイン的には情報収集がメインのところになるんだけど、裁判員間でのトークがないので収集しないといけない情報の予測がしづらく、理不尽感が強いのも残念。

 

 

クロス探偵物語1 前編

 

 

『クロス探偵物語』 74

 

 90年代の後半に発売された作品ではあるけど、文脈的には80年代の探偵ADVに見られた「展開の発見」(つまりフィールド上で何度も同じところを探し新しい展開を見つけるタイプのフラグ立て)が主軸になっていて、この当時でもそこそこ古めかしい作りなんじゃないかな。基本的に作業扱いされるアプローチではあるんだけど、マッハシークと自称した軽快なコマンドへのレスポンス、神長豊によるウィットに富んだキャラクター陣、東祥高による繰り返しに耐えるBGM、挫折しない程度のゲームバランス、そして劇中の私服が毎日変わってることからも解るようにグラフィックスのカット数や画面変化への拘りが本来発生するストレスや映像的な飽きを軽減し「フラグ立てに本来あった魅力」を最大限まで引き出していたと思われる。後半の3D捜査パートが入ってきたあたりでゲームプレイの流れが停滞してしまっており、前半に魅力とされる要素が凝縮されているので、自分としては前編78点、後編70点くらいの裸感。これ系がIPとして成立する程度の個をもった上でパッケージ規模でリリースされたのは、最近だと『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』のリメイクが出てはいるんだけど、この時代が最終カーブという印象は否めず、90年代のこの時点を更新する作品がないからこそ『2』が長らく求められているんじゃないかなと思わなくもない。

(コマンド選択の総当たりでも、スペックが上がり作業的プレイへの批判が増えるにつけフィールド上でフラグを探すタイプの作品は減少してゆき、次にすべき行動がはっきりした「キャラの自意識をロールプレイングする」没入感を重視する作品が増えていくこととなる。まあ『クロス探偵物語』自身がコマンドの最小手を募集するキャンペーンやってたように、『殺意の階層』『ブルーシカゴブルース』『MISSING PARTS』的な時間制限のもとで次の行動を予測しながらコマンドを選ばせるアプローチもあったんだけど、「展開を発生させる」ための分岐を主軸にしたアプローチで、コマンドを用いていてもコマンド総当たりとはデザイン自体が違うんじゃないかなというのが自分の判断。よくコマンド選択をノベルゲーム化するように求める主張も見かけるけど、分岐やマルチシナリオを軸とした没入が軸となるノベルゲームではアプローチ方針自体が異なり、他ジャンルで言えばJRPGがARPGになるレベルでの方針転換と考えられ、実現性がないとは言わんけど『burst error.EVE the first』のように本来の楽しさがスポイルされる可能性は潜んでるんじゃないかなと思います。)

 

【コメント】

前回から続いてのB面記事になります。取り上げた作品全部レビューは流石に無理ですね。

【概要】

任天堂のe-shopが終わっちゃうので、3DSを中心に多分パッケージに需要が集まって

自分の好きな作品や思い入れのある作品の購入が難しくなる可能性があります。

個別でこのソフトが値上がりします!みたいな話ではなく、

自分の基準で保管したいソフトは買っておいた方が良いかもね。という記事。

 

【オールドユーザーよ、聞け】

 

 2007年を中心にニンテンドーDSでADVがブーム化したのも気づけば15年が経過。2354本とされる旧DSも現役を退いて10年以上が経過し市場に出回っているパッケージの絶対数も減少しており、何よりそのパッケージを取り扱う小売店の棚数自体が縮小していった結果、ここ数年でDSを含めた(特に初代PS~DSあたりの世代の)レトロソフトの値段は上昇傾向にある。

 またそのゲームソフト数に対してダウンロード環境はWiiUでごく一部が配信されたっきりで、その売り場であるe-shop(WiiU・3DS向けのオンラインショップ)も2022年度末で閉店。さらに任天堂自身からDSソフトをサルベージする気配が全くしない現状、良作とされる作品陣や、昔楽しんだソフトを再度遊ぶというのは徐々に難度が上がってゆく…というのは想像するに容易な状況と言えるだろう。

 

 このバックボーンに加え、コロナ禍になってからせどり商材としてレトロゲームがターゲットとなった時期もあるため、最盛期と比べるとだいぶ落ち着いてきたとはいえ、現時点でもDSソフトの市場価格はコロナ前と比べて明らかに荒らされており、

発売当初はそんなに評価を受けてなかった作品や、高評価とはいえ値段は常識の範囲内だったソフト達が唐突かつ理不尽なプレミア化を果たしていってしまっている。

 市場価格は取引成立しなければ徐々に下がってくるだろうし、マニアのニーズが少なくなれば値段が落ち込むソフトはあるかと思われるが、それを現状どのソフトが落ちるかなど想像するのはほぼ不可能だろう。

 

ニンテンドーDSi LL ダークブラウン【メーカー生産終了】

ニンテンドーDSが発売されたのが2004年12月、最後のソフトである『特命戦隊ゴーバスターズ』が発売される2012年9月まで実働7年半稼働していたハードとされる。『逆転裁判』の普及や脳トレブームによるカジュアル層の流入で市況的に盛り上がったこともあり、プレイヤーにあまり技量を要求しないADVが大量にリリースされていたのも特徴で、恐らく00年代以降では最もこのジャンルのパッケージソフトが発売されたハードと思われる(同世代のPSPもノベルゲームがかなり発売されたが、10万本クラスで売れる作品は『ダンガンロンパ』『シュタインズ・ゲート』『うたの☆プリンスさまっ♪』くらいで、ノベルゲームの移植市場としては機能していたが、ADVの売れないハードと言われていた)。逆に次世代の3DSではカジュアル層がスマートフォンへ移行してしまった結果、シリーズものは何作か出たもののADVは商業的に縮小されていく流れとなった。

 

そもそも入手困難になるソフトとはどんなものだろうか?

旧来の家庭用ゲームで入手困難となれば高額、プレミア化してゆくことになり、その条件としては

 

①出荷数が少ないこと

②代替性が低くマニア向けの需要が高いこと

③権利関係で再販が困難であること

 

の三項目に当てはまるかが見極めポイントとなっていたかと思う。

 

 コロナ禍以前からDSでは上記3条件に当てはまっていた『theresia dear emile』『どき魔女ぷらす』『キモかわe』『八つ墓村』『キミの勇者』『魔女になる。』などプレミア化したソフトは存在していたが、コロナ禍以降はフリマアプリが普及し、上述の繰り返しになるけどレトロゲームが”せどり”(需要のある作品を小売りで購入してネット販売する行為。手数料が間に入るため価格を小売りで買う時点より高めに設定することとなり、流行するとショップの在庫がなくなってくため市場価格が上がっていく)のターゲットとなった経緯もあって『東京トワイライトバスターズ』『AnotherTime AnotherReaf』『いかもの探偵』など1,000円以下で取引されていたソフトが急激に値段が上がってプレミア化の仲間入りしており、その他でももともと一定の知名度があった『有罪×無罪』『探偵神宮寺三郎 赤い蝶』『探偵 藤堂龍之介の事件譚』あたりも価格が定価以上まで上昇。『サクラノート』『マイアミクライシス』『落シ刑事』など明らかにクオリティ面で問題のあった作品まで価格帯が以前の2~3倍の水準まで上がってきてしまっており、小売店がまだ数の多かった頃は出荷数が少なくてもニーズがなければ在庫リスク扱いで1,000円以下に収束していく従来の動きは成立せず、在庫を抱える受け皿が少なくなったのと併せ出荷規模~3万本クラスなら最早なにが入手困難になるか不明という状況に陥っていったとみられる。

 

 大手メーカーでも『ゴーストトリック』(カプコン)『ラストウィンドウ』(任天堂)『ナナシノゲエム』(スクエニ)など発売後に大幅な値下がりをしたわけでもなくある程度値段を維持していたソフトは、販売元がしっかりしており出荷量もある程度確保されていたバックボーンがある為、本来なら定価を超えるようなことはまずなかった(『カービィのエアライド』のように何十万規模で出荷したもののプレミア化した稀有な例や、出荷量が少なければ販売元がしっかりしていても入手困難となることはあるので、旧来であっても必ずそうとは言い切れません)のだが、これらも徐々に値段の上昇が見られる。もちろん『ウィッシュルーム』『采配のゆくえ』『タイムホロウ』『ザックとオンブラ』『西村京太郎サスペンス』あたりの大手~中堅クラスから発売された作品は、出荷量がかなり稼げていた当時の市況もあるので、状態に拘らなければソフトは確実に手にできるため数百円程度で確保できる環境に変わりはないとは思われる。

 

ゴースト トリック

『ゴーストトリック』は8万本のセールスで、現在の市場価格(4000円弱)になるような出荷規模ではないんだけど、源流にある『逆転裁判』シリーズ自体が止まってしまった関係で掘り返し需要が高まったかと思われる。同じように『ダイダロス』でド派手にやらかし実質的にシリーズ停止へ追い込まれている『探偵 神宮寺三郎』もファンから好評で比較的値段を保ってる程度だった『赤い蝶』が掘り返され値段が1万円近くまで上がっていたりする。同じような経緯をもつ3DS『Ghost of the Dusk』も、気づけば定価近くまで価格上昇しているのでe-shop閉店後は入手難度は更に上がっていくとみられる。

 

 どれにしても現状プレミア価格のソフトだからといって、出荷数が極端に少なく現物でなければ意味をなさないコレクター需要のもの(例えばプレミアソフトとして有名な『秋山仁の数学ミステリー秘宝インドの炎を追え!』はムック本の付録として書店のみの流通となっており、小売店がソフトを発注し売れなければ値下げしながら販売されていくゲームと販売するルール自体が異なって、本扱いなので売れ残りは販売元へ返本され”定価で売れた数しか出回らなかった”と考えられ、通常のゲームソフト以上に市場へ出回る数が絞られてしまったバックボーンがある)を除けば、リマスター化などで再商品化がかかると値段は落ち着くため、結局どれが高値維持かなんてのを読み切ることは不可能と思われる。また、Wiiがブレイクした当時もGCソフトが値上がり傾向だったのが、現在では比較的落ち着いているのを見てもわかるように、需要側も有限である以上はプレミア化の絶対数が上限なく増えることは考え難く、クオリティ面で弱い作品は時間の経過とともに値段も低下する可能性があるので、今高値でもどうしても欲しいというものを除けば様子を見てみるのも手なんじゃなかろうかと。

 

という経緯もありまして、比較的値段が上がっていないソフトを念頭にしながら、

 

①自分の思い入れのあるソフトを確保していこう。(回顧)

②今でもサルベージして遊べば楽しめるものは手に取ってみよう。(布教)

 

という趣旨へ行きつくわけですね。

 

【では、どんな傾向の作品が入手困難になる可能性があるのか?】

 

.魅力に代替性が認められないパターン

 

 後々出世したクリエイターにファンがついて過去作に遡りたいという需要が生まれる、発売当初に高評価を受けたものの権利関係で再販がかからず後々ニーズが生まれた…などの経緯で需要の天井を突破するパターン。有名なのはPS『夕闇通り探検隊』で、もともと評価は高いもののPS後期の作品で出荷数は少なく、原作者との権利関係から再販は絶望視されたこともあり、プレミアソフトとして知名度が高くその相乗効果もあって値段が上がり続けている。

 このタイプはソフトのコンセプトや作家性が前に押し出されるケースが多く、ゲーム機そのものが進歩(つまりテクノロジー的な進歩)しても”魅力とされるものの代替が不可である”ことがニーズの根本にある。もちろん、出荷数が確保されていれば再販が絶望視されていても必ずしも入手困難になるわけではない。例えば『クロス探偵物語』も神長豊の作家性という”代替性のない人気”があり(恐らく権利関係で)アーカイブス化の経験は一度もないが、00年代初頭に廉価版が2000円で販売された関係で市場に一定数のソフトが出回って値段が上昇したことはない。

 DSでもカルト系のクリエイターが関わっている『ツキビト』(『女神転生』立ち上げ時のスタッフである鈴木一也氏が企画、すでにプレミア化済みで入手困難)や『THE裁判員』『探偵 癸生川涼介事件譚 仮面幻影殺人事件』『湯けむりサスペンス』などは代替性のない作品かと思われるが、クリエイターの個が強すぎるのに反してゲームデザインが化石なのも多々見られるので、ここはユーザー側の好き好きで保管やプレイは判断したほうが良いと思う。

 

探偵・癸生川凌介事件譚 仮面幻影殺人事件

『探偵 癸生川涼介事件譚 仮面幻影殺人事件』

 フィーチャーフォンで配信された原作を含め、Switchでシリーズが復刻されていることもあって、DSのソフトを補完する必要性は特にはないと思うけど、Switch版は書き割りでアングルを取り入れてるDS版の方が個人的には好き。20年以上前の単価の低いところとはいえ、累計400万DLを記録しているタイトルが触れることさえ難しいという状況が7~8年くらい続いていたと思うと、やはりダウンロード市場って保全性でかなり問題ありなんだなと。e-shopが終わればアークシステムワークスの『脱出アドベンチャー』シリーズなんて新規プレイがほぼ不可能になるわけだし。

 

SIMPLE DSシリーズ Vol.48 THE 裁判員 ~1つの真実、6つの答え~

『THE裁判員~1つの真実、6つの答え~』

 SIMPLEシリーズも廉価で販売された関係で『THE推理』『THE鑑識官』など出荷的に数万規模のものもあるが、Vol.数を重ねるごとに変化球が多くなるのが特徴でそれに合わせ出荷数も少なくなる傾向にある。DSについては定番ものと並行して変化球やニッチ向けのタイトルが多く発売(Vol.3の時点で『THE虫取り王国』だしね)されており、『THE 装甲機兵ガングラウンド』『女子高生逃げる!心霊パズル学園』(こちらはSUCCESの仕掛けた別廉価ゲームのシリーズ)などプレミア化した例もみられる。この時期のDSはADVブームだったこともあってSIMPLEシリーズはトムキャットシステムズを中心にADVを多数展開しており、後半に進むほどクオリティ面でもブラッシュアップが進んだこともあって、この『THE裁判員』はSIMPLE DS文脈の集大成と言える完成度になってる。

 

.キャラクターゲーム

 

 版権もののADVは”原作世界の拡張媒体”の一つである面が確実にあり、「ゲーム的にはちょっと…」と思っても気づけば入手困難になっていることが多く、ゲーム的な出来不出来とは離れたところにあるので、そもそも保管性・プレイする優先度ともに高いのか書いてる側として疑問符は正直ある。先に挙げた『夕闇通り探検隊』とセットでプレミアソフトの代表例とされる『serial experiments lain』(統合失調症と思しき少女たちの主観を通して、90年代後半の自意識過剰な世界が楽しめるカルトアニメが原作。GYAO!とかでたまに配信されることがある。)も、原作となるアニメがカルト的な人気があり”本編以外に拡張して楽しみたい”というファンの受け皿となったからここまで高値(7万円オーバー)となっていると考えられ、ゲームとして遊ぶとしてもかなり人を選ぶと思われる。

 ということで原作ありきになりがちな版権ものだが、原作(アニメ)を中心としたメディアミックスの周辺展開という立ち位置なのでわざわざ再販されることは滅多になく、あってもアーカイブスというより「ファミリーコンピュータ ジャンプ」のようなワンパケになった場合や、現行機に新作が出た際の初回特典のような変化球的なリリースとなることが多いため、オリジナル版を確保が基本線となってくる。ただし入手困難になるのはマニアックゆえに出荷数が絞られたものが主となり、例えばDS内では出荷過多でワゴンの常連だった『DEATH NOTE 螺旋の罠』や『踊る大捜査線THE GAME』などは、如何に原作が再度ブレイクしたとしても入手困難になる…といったことはまずないだろう。同じような理由で『名探偵コナン』のようなビッグIPも通常であれば入手困難にはならないんだけど、実は後半の作品になると出荷を大してしていなかったりもする。

 またDS市場では電子書籍が普及する以前ということもあり、ADVとデジコミの中間地点のような作品も一定数展開されたのも特徴となっており、今となってはDSでする意味があるのかわからないものもあれば、DS電撃文庫のように原作に沿いながらゲーム性もある程度入れていく作品もあったりして、完全に新規でゲームを掘り起こす場合は、ある程度は事前に調べてからの判断も必須になってくるだろう。

 つまりこの項目であれば、自分の好きだったIPの版権ゲームがあれば買っておくべきOR興味のあるシステムの作品が見つかればファン向けを覚悟して確保を、となる。

 

名探偵コナン ファントム狂詩曲 - 3DS

『名探偵コナン』

 権利関係的に再販は難しそうな上に関わっているクリエイターも後年著名となった『名探偵コナン&金田一少年の事件簿』なんかは、企画や出来的に保管性はありそうだけど、入手困難になるほど出荷絞ってるわけじゃない(ランキング内だと7.3万本)。そもそもゲームの出来も後世代となるが3DS『名探偵コナン マリオネット交響曲』『ファントム狂詩曲』の方が高く、特に後者は縹けいか氏(後に『ファタモルガーナの館』を制作)がシナリオを手がけているため保管性はこっちの方がある気はする。

 

DS電撃文庫ADV バッカーノ!(特典無し)

『DS電撃文庫』

 DS中期に発売された電撃文庫に演出を入れたデジタルな読み物…かと思いきや、分岐やサブシナリオなどシステム的に少し手の入ったものも出ている。例えば熱中日和の開発した『BACCANO!』はDSでは珍しい群像劇によるザッピングシステムに挑戦しているんだけど、アニメ素材を分解してゲームとして再構築した内容なため、システム的な体裁は整っていても唐突な分岐やシナリオ構成的な没入感の欠如など踏み込むんだ途端に粗が見え始める典型的な版権ものゲームでもある。DSの場合は版権もので良作ADVはあまりなかったイメージが強いが、非ゲーム層をターゲットにした作りこみの面で弱い作品が多かったのが原因なのかも。

 

3.ハード後期に発売された作品

 

 ゲームハードにサイクルという寿命がある以上、後期になるほどスペックの相対的な低下やガジェットに対しユーザーは飽きで需要は下がり、メーカーも次世代への準備に移ったりそもそも次世代機が世に出た状況でのリリースとなるため、出荷する量が絞られ良作さえも埋もれる傾向がある。有名なのが多いのはファミコンで『メタルスレイダーグローリー』『タイムツイスト』『赤川次郎の幽霊列車』などがあげられ、その後もPS2世代くらいまで遡っても入手困難率はどのハードも後期になるほど上がると思われる。

 DSの場合は07年ごろがピークで、後半になるとフィーチャーフォンで流行ったMobage・GREEに代表されるソーシャルゲーム

(06年~から成長曲線を描き、10年代以降はスマートフォンへの移行に失敗し縮小路線へ)とスマートフォン(10年~成長曲線を描き、DSの特色だったカジュアルユーザーが奪われる形となった。3DSが『モンスターハンター』などシリーズものを中心とした”既存の遊び”が多数派となり、かつて岩田聡社長が打ち出した「ゲーム人口の拡大」というお題目とは逆方向に突き進んでしまった大元の原因と思われる)に可処分時間が奪われて、10~12年ごろの作品は出荷数的に絞られていくこととなる。もちろん最盛期の頃もリリース数が多いため、受注がつかず気づかぬうちに埋もれたソフト(『theresia』『キミの勇者』はこのパターン)もあるが、時期よりも作品の内容やコンセプトに寄るところが大きいので、入手困難になる理由が予測しやすく、ここでの確保基準とは別軸での判断になるだろう。

 

東京トワイライトバスターズ ~禁断の生贄帝都地獄変~(特典なし)

『後期発売のソフト』

ゲームの開発期間はDSクラスであってもピンキリではあるが、中小規模や新興メーカーから発売された作品はリリース優先で1年未満のケースが多数あったと想像される。後期はそういった粗製乱造タイプは少なくなり、開発元がDSで何ステップか踏んでノウハウを築いている作品OR最盛期に発売しようとしたが延期で後期になってしまった作品が多めになってくる。前者は『どき魔女ぷらす』『赤い蝶』などで、後者の代表例はDS中期に発表されながら何度も延期を繰り返し後期発売となってしまった『東京トワイライトバスターズ』が挙げられ、比較的ファンから評価を受け、後世が掘り起こすと優先的にプレイ対象となるため、入手難度も相対して上がってしまう傾向にある。

 

【コメント】

アンケート取ったので作成した記事ですが、めちゃくちゃ尻すぼみですな。

こちら立ち位置的にA面となります。