トルストイ・原作、かすや昌宏・絵、渡洋子・文『くつやの まるちん』
マルチンは、一生懸命に仕事をしながらも、奥さんと子どもに先立たれ、いつもどこか寂しい気持ちで、靴屋を営んで暮らしていました。
ある日、聖書を読み始めたマルチン。
すると、夢の中でキリスト様の声が聞こえました。
「マルチン、マルチン。あした行くから待っておいで。」
次の日、マルチンは朝から窓の外ばかり気になっていました。
「本当にイエス様は来てくれるのだろうか。」
マルチンは胸がいっぱいになりました。
マルチンが、窓の外を見ていると、
雪かきに疲れたおじいさん、
冷たい北風に吹かれる中、赤ちゃんと一緒のお母さん、
りんごを盗もうとした男の子と、男の子に怒り心頭のおばあさん
が、次々にやってきました。
マルチンは、そんな人たちを家に招き入れ、雪かきのおじいさんに暖かい食事をふるまい、赤ちゃんと一緒のお母さんに寒さをしのぐ上着を渡し、リンゴを盗ろうとした男の子にリンゴをあげ、怒るおばあさんに男の子を赦してやるようにお願いしました。
みんなが帰っていったあと、
マルチンは、棚から聖書を取り出して、昨日の続きを読もうとしました。
その時、急に、マルチンは、ふと誰かがいるような気がしました。
すると、雪かきのおじいさん、赤ちゃんと一緒のお母さん、リンゴを盗ろうとした男の子とおばあさんが現れ、にっこり笑いながら言いました。
「マルチン、マルチン。お前は、私に気がつかなかったのか。」
「誰に?」
「マルチン、私が分からなかったのか。あれはみんな私なんだよ」。
マルチンは叫びました。
「夢ではなかったんだ。本当に、本当に、ワシはイエス様にお会いできた」。
マルチンの心は、喜びでいっぱいになりました。
(おしまい)
知り合いのクリスチャンの方からプレゼントしていただいた絵本。
いつも読むたびにじーんとします。