サッチャー元首相亡くなる(後輩として)
サッチャー元首相が亡くなりました。
実は、Oxfordでは、彼女と同じSomerville College(学生は学部を問わずどこかのCollegeに必ず属す)にいました。
ノーベル化学賞受賞者ドロシー・ホジキンが彼女のチューター(同大学では毎週一回教員=tutorが個人指導をし、tutorialと呼ぶ。私も現在民法の授業で取り入れている)だった。ホジキン以外もインディラ・ガンジーもこのカレッジにいた。
私が在学していたとき(1992ー1993年)は、「女性初の首相を出したことに誇りをもっているでしょう?」とnaiveにも、当時住んでいた院生寮公共スペースで友達(何人かとは今でも誕生カードとかやりとりしいる)にきくと、みな困ったような顔をして、「大学の予算を大幅に減らしたし、保守的で女性が困るようなことをした。きっと大金持ちと結婚したので高額でシッターを雇えるから働く女の大変さもわからないのよ。だから、歴代首相の中で唯一名誉博士号をもらっていない卒業生なのよ。」と評判は悪かった。
Margaret Thatcher Conference Centreを作るときも、名前を入れるのに反対した人がたくさんいた。(確か、はじめはDorothy Hodgkin & Margaret Thatcher Conference Centreとするという案だったのでは?でも結局彼女一人の名を冠することになった)
でも、カレッジでは半旗にして追悼の意を表している。カレッジからきたレターの一部を以下に。(カレッジが保守化したのでなく偉大な卒業生への礼節なのだと思いたい)
また、彼女のカレッジへの直筆レター
http://www.some.ox.ac.uk/CMS/files/Thatcher%20Letter%20open%2019790001.pdf
Baroness Thatcher (Chemistry, 1943) has died today, aged 87
08 Apr 2013
It is with great sorrow that we have learned of the death of Margaret Thatcher, Baroness Thatcher of Kesteven, this morning at the age of 87.
Baroness Thatcher, then Margaret Hilda Roberts, arrived at Somerville College in 1943 to study Chemistry. Raised in modest circumstances above her father's shop in Grantham, the young Margaret impressed her teachers with her passion for scholarship. Her tutor at Somerville was Dorothy Hodgkin, to date the only British woman to have won a Nobel Prize for science (in her case, Chemistry). Margaret's academic work was strong, and College records show that she was recommended for several grants and prizes, and an Exhibition. She also became President of the Oxford University Conservative Organisation.
Since her graduation in 1947, Somerville continued to enjoy a warm relationship with Baroness Thatcher; she was elected to an Honorary Fellowship of the College in 1970. She maintained a particularly close friendship with our former Principal Daphne Park. It is largely thanks to the visionary fundraising activities of Baroness Park that the College was able to build its Margaret Thatcher Conference Centre, which was officially opened by her in 1991. Further successful fundraising campaigns led us to establish The Margaret Thatcher Fund, which now incorporates several exciting initiatives.
Somerville College sets students from all backgrounds on paths to future success. We are immensely proud to have educated Britain's first - and so far only - female Prime Minister and one of the most internationally significant statespeople of the twentieth century. On this sad day, we pay tribute to the truly pioneering spirit that propelled her to the pinnacle of British political, and public, life.
奥田英朗『噂の女』
ハズレがないと全部読んでいる作家の一人。
一人の悪女の生き様を周囲の人間の目を通して描く10個の章からなる小説。
主人公の21歳から27歳までが描かれる。
ヒロインの内面がけして描かれないところ、章と章の間で何が起こったか読者の想像に任せるところは東野圭吾『白夜行』にも通じる。
作品の完成度はさすがだが、作者が『最悪』『無理』などでも描いてきた地方都市(奥田の出身地でもある岐阜が舞台)の閉塞感やしがらみにしばられた不正や狎れ合いが罷り通る現実への痛切な告発が一貫している。
(私の学部は地域の政策などを研究しているので、私は地方都市の問題を抉ったものとして学生に『無理』を読むことを勧めている)
また、ジェンダーの視点からも秀逸である。
ヒロインの短大の同級生のセリフ
「平凡な結婚をして、子供を二人産んで、小さな建売住宅を買って、家事と育児とローンに追われて、田舎の女はそういう人生の船にしか乗れんやん。でも糸井さんは、女の細腕で自分の船を漕ぎ出し、大海原を航行しとるんやもん。金持ちの愛人を一人殺すぐらい、女には正当防衛やと思う」
「世界中どの国でも、女に殺される男の数より、男に殺される女の数の方がはるかに多いやん。やったら方りうもバランスを取るべきやと思う。女が男の百倍殺されとるなら、女が男を殺しても、罪の重さは百分の一やて。」
確かに、地方都市ってこんなに腐っているのかと驚かされる。
①警察は幹部が異動する度に餞別と称して大金を地域から徴集(そのかわりに駐車違反のお目こぼし等がある)
←これは横山秀夫の『64』にも出てきた。
②市営住宅の半分は市役所職員等のコネで決まる。職員の口利き料は10万円。
③公共事業の受注の談合は当たり前
④カルチャースクール・料理教室の講師は親戚の教育委員のコネでしかも親族のスーパーの売れ残りの悪くなった食材を使う。
等々。
これらを登場人物は全員「田舎で生きるということはこういうことだ」と諦めている。
私にはとてもできない。
ヒロインの美幸は、④については直談判して講師を代えさせたり、知り合いの女性を食い逃げした男にヤクザの弟を使ってヤキを入れたり、何より男を食物にする生き方自体が、こうした男中心の腐敗に大きくnoを突きつけているようにも見える。
それが、ほかの悪女ものと一線を画す痛快さになっている。
ただ、短大時代に大きく変貌した彼女だが、そのきっかけに一体何があったのか、出てくると思ったらこなかったのでそこは残念。
ちなみに全部読んでいる(読む方針の)作家は下記
三島由紀夫
笙野頼子
桐野夏生(グロテスク最高)
奥田英朗
角田光代(八日目の蝉最高)
貫井徳郎(乱反射最高)
津村記久子(女性会社員小説の白眉)
群ようこ(無印シリーズ最高)
平安寿子
林真理子(白蓮れんれんを読んでから)
湊かなえ
全部ではないが大体読んでいる
芥川
夏目
川端
鴎外
太宰治
横溝正史(金田一モノと由利モノは全部)
姫野カオルコ(エッセイは全部)
酒井順子
西村賢太(なぜかクセになる)
諏訪哲史(アサッテの人は三島と似た世界観、実際ファンだそうだ)
東野圭吾(玉石混交)
中村うさぎ
岸本葉子(教養の見田ゼミの先輩)
有川浩
伊坂幸太郎
ナンシー関
これから全部読もうかと思っている
中島京子(FUTONがすばらしかった)
奥泉光(桑潟ものは抱腹絶倒、笑いすぎて電車で読めない。シューマンの指はなぜこのミスの一位でなかったか不思議)
横山秀夫(受賞作より、64、震度ゼロがすごい)
一人の悪女の生き様を周囲の人間の目を通して描く10個の章からなる小説。
主人公の21歳から27歳までが描かれる。
ヒロインの内面がけして描かれないところ、章と章の間で何が起こったか読者の想像に任せるところは東野圭吾『白夜行』にも通じる。
作品の完成度はさすがだが、作者が『最悪』『無理』などでも描いてきた地方都市(奥田の出身地でもある岐阜が舞台)の閉塞感やしがらみにしばられた不正や狎れ合いが罷り通る現実への痛切な告発が一貫している。
(私の学部は地域の政策などを研究しているので、私は地方都市の問題を抉ったものとして学生に『無理』を読むことを勧めている)
また、ジェンダーの視点からも秀逸である。
ヒロインの短大の同級生のセリフ
「平凡な結婚をして、子供を二人産んで、小さな建売住宅を買って、家事と育児とローンに追われて、田舎の女はそういう人生の船にしか乗れんやん。でも糸井さんは、女の細腕で自分の船を漕ぎ出し、大海原を航行しとるんやもん。金持ちの愛人を一人殺すぐらい、女には正当防衛やと思う」
「世界中どの国でも、女に殺される男の数より、男に殺される女の数の方がはるかに多いやん。やったら方りうもバランスを取るべきやと思う。女が男の百倍殺されとるなら、女が男を殺しても、罪の重さは百分の一やて。」
確かに、地方都市ってこんなに腐っているのかと驚かされる。
①警察は幹部が異動する度に餞別と称して大金を地域から徴集(そのかわりに駐車違反のお目こぼし等がある)
←これは横山秀夫の『64』にも出てきた。
②市営住宅の半分は市役所職員等のコネで決まる。職員の口利き料は10万円。
③公共事業の受注の談合は当たり前
④カルチャースクール・料理教室の講師は親戚の教育委員のコネでしかも親族のスーパーの売れ残りの悪くなった食材を使う。
等々。
これらを登場人物は全員「田舎で生きるということはこういうことだ」と諦めている。
私にはとてもできない。
ヒロインの美幸は、④については直談判して講師を代えさせたり、知り合いの女性を食い逃げした男にヤクザの弟を使ってヤキを入れたり、何より男を食物にする生き方自体が、こうした男中心の腐敗に大きくnoを突きつけているようにも見える。
それが、ほかの悪女ものと一線を画す痛快さになっている。
ただ、短大時代に大きく変貌した彼女だが、そのきっかけに一体何があったのか、出てくると思ったらこなかったのでそこは残念。
ちなみに全部読んでいる(読む方針の)作家は下記
三島由紀夫
笙野頼子
桐野夏生(グロテスク最高)
奥田英朗
角田光代(八日目の蝉最高)
貫井徳郎(乱反射最高)
津村記久子(女性会社員小説の白眉)
群ようこ(無印シリーズ最高)
平安寿子
林真理子(白蓮れんれんを読んでから)
湊かなえ
全部ではないが大体読んでいる
芥川
夏目
川端
鴎外
太宰治
横溝正史(金田一モノと由利モノは全部)
姫野カオルコ(エッセイは全部)
酒井順子
西村賢太(なぜかクセになる)
諏訪哲史(アサッテの人は三島と似た世界観、実際ファンだそうだ)
東野圭吾(玉石混交)
中村うさぎ
岸本葉子(教養の見田ゼミの先輩)
有川浩
伊坂幸太郎
ナンシー関
これから全部読もうかと思っている
中島京子(FUTONがすばらしかった)
奥泉光(桑潟ものは抱腹絶倒、笑いすぎて電車で読めない。シューマンの指はなぜこのミスの一位でなかったか不思議)
横山秀夫(受賞作より、64、震度ゼロがすごい)
あなたは荒ぶる神だ、そうに違いない。


ほぼ1年ぶりの更新である。閲覧してくださる人が毎日いるというのがありがたくまた申し訳ない。吉田敦彦の『日本神話の深層心理』を読んでまた関連妄想してしまったことがあるので書いておく。
大国主神が一緒に国づくりをしていたスクナヒコナ(先日鳴り物入りでスタートして視聴率で大コケしたドラマ『Going My Home』に出てくる妖精クーナはこの神様らしい。是枝監督の『歩いても歩いても』はものすごく良かったのだが。出来の良い長男が命懸けで助けた海で溺れていた少年[これがまた医師だった息子とは比ぶべくもないだめっぽさで救われない]を罰のように毎年命日に来させる母親のやるせなさ、嫁姑のチクチクした喧嘩とか、愚痴とか、ちゃっかりしたきょうだいへの思いとか、けして綺麗事でない人間や家族の営みがリアリティをもって描かれていて最高だった)に去られた後、出雲の国で大物主に出会い、
「あなたはいったい誰なのですか?」と問うと、
「私はあなたの幸魂(さちみたま)・奇魂(くしみたま)だ」と答えた。
国づくりは大物主が助けていたというのである。
(日本書紀)
また、古事記によると、大物主は、大国主神に自分を御諸山に祭れといい、それが現在の三輪山、大神神社である。
これは三島の『豊饒の海』に影響を与えていないだろうか?
三島自身が解説しているように、第一巻『春の雪』は和魂、第二巻『奔馬』は荒魂を描いたものだという。
また、『春の雪』で主人公松枝清顕は、滝で親友本多繁邦から「あなたは荒ぶる神だ、そうに違いない」といわれる不思議な夢を見る。
夢日記に書かれたそれらの夢はすべて実現するが、実際に第二巻『奔馬』で、清顕の生まれ変わりである飯沼勲が大神神社で行われた剣道の御前試合のあと、奥の院に行く途中の滝で水浴びしているところに、大阪控訴院判事の本多が院長の代理で臨席したあと行き合う、というかたちで再現されたのである。
私はこのエピソードが大好きで、2008年、夫と大神神社の奥の院に登り、途中その滝も見た。思ったより小さな滝で、ここで本当に大勢の剣道部員が禊をしたのかと疑うほどだった。結構ハードな登山になったが、三島も登ったと思うと感無量だった。
写真は一切撮ってはいけない(この前後に世界ふしぎ発見でもやったがやはり映像はだめだった)ので、入口の写真をお見せします。
第二巻『奔馬』では、同じ機会に本多は奈良の率川神社の百合祭りにも出て「こんな美しい祭りを見たことはない」という。これも調べて見に行った(会員になると中で見せてくれるので会費を払って会員になった)。
本多は奈良ホテルに泊まったという件があるので、奈良ホテルに行って「三島が泊まったそうですが」と聞いたら、支配人が「こちらは不勉強ですみません。せめてものお詫びに皇族の泊まる特別室をお見せします」といって案内してくれた。
京都、奈良などの名所はほとんど行っているのに、こうやって解説をちゃんと書こうと思うとつい億劫でそのままになってしまうが、少しずつ紹介していきたいと思いますのでよろしくお願いします。