(1)自閉情緒学級と知的学級
特別支援学級には自閉症・情緒障害学級(自閉情緒学級)知的障害学級(知的学級)があります。
静岡市の作成したリーフレットには以下のような記載があります。
「特別支援学級には、自閉症・情緒障害学級と知的障害学級があります。自閉症・情緒 障害学級では対人関係やコミュニケーションが苦手な部分をもつお子さんが、知的障害 学級では知的発達がゆるやかで学年相応の学習に学びにくさをもつお子さんが学んで います。」
PowerPoint プレゼンテーション (shizuoka.lg.jp)
これでは漠然としているので、もう少し詳しい記載を文科省のホームページから拾ってきましょう。
(2)知的学級
文部科学省のホームページには以下のような記載があります。
知的障害とは
知的障害とは、一般に、同年齢の子供と比べて、「認知や言語などにかかわる知的機能」の発達に遅れが認められ、「他人との意思の交換、日常生活や社会生活、安全、仕事、余暇利用などについての適応能力」も不十分であり、特別な支援や配慮が必要な状態とされています。また、その状態は、環境的・社会的条件で変わり得る可能性があると言われています。
特別支援学級
知的障害に応じた教育的対応
知的障害特別支援学級は、日常生活において使用される言葉を活用しての会話や身近な日常生活動作にはほとんど支障がない子供が対象となりますが、学習によって得た知識や技能が断片的になりやすく、実際の生活の場面の中で生かすことが難しいという知的障害の特性は、知的障害特別支援学級に在籍する子供にもみられます。そのため、特別支援学校(知的障害)と同様に、実際の生活場面に即しながら、繰り返して学習することにより、必要な知識や技能等を身に付けられるようにする継続的、段階的な指導を行っています。
障害の程度
知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通に軽度の困難があり日常生活を営むのに一部援助が必要で、社会生活への適応が困難である程度のもの
(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)
教育課程
知的障害特別支援学級は、小学校、中学校の学級の一つであり、小学校、又は中学校の目的及び目標を達成していく学級です。ただし、子供の障害の状態等に応じて、特別の教育課程を編成して指導できるようにしており、各教科等の他に、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な自立活動を取り入れ、例えば、物事がうまくいかない際に気持ちを落ち着けて取り組むことができるようになることや言葉や支援機器を介した他者との円滑なコミュニケーションの方法等に関する指導を行っています。
また、子供の障害の状態等を考慮の上、各教科の目標や内容を下学年の教科の目標や内容に替えたり、各教科を前述した特別支援学校(知的障害)の各教科に替えたりするなどして、子供の実態に応じた教育課程を編成して指導しています。
(3)どこからどこまでが知的障害
知的障害はe-ヘルスネットでは以下のように説明されています。
この説明は医療側が考える「知的障害」の診断基準だと思ってください。
知的障害(精神遅滞) | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
「知的障害とは
知的能力障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学校や経験での学習のように全般的な精神機能の支障によって特徴づけられる発達障害の一つです。
発達期に発症し、概念的、社会的、実用的な領域における知的機能と適応機能両面の欠陥を含む障害のことです。すなわち
「1. 知能検査によって確かめられる知的機能の欠陥」と
「2. 適応機能の明らかな欠陥」が
「3. 発達期(おおむね18歳まで)に生じる」と定義されるものです。
中枢神経系の機能に影響を与える様々な病態で生じうるので「疾患群」とも言えます。
有病率は一般人口の約1%であり、年齢によって変動します。
男女比はおよそ1.6:1(軽度)~1.2:1(重度)です。
知的機能は知能検査によって測られ、平均が100、標準偏差15の検査では知能指数(Intelligence Quotient, IQ)70未満を低下と判断します。
しかしながら、知能指数の値だけで知的障害の有無を判断することは避けて、適応機能を総合的に評価し、判断するべきです。
重い運動障害を伴った重度知的障害を「重症心身障害」と表記することもあります。
適応機能とは、日常生活でその人に期待される要求に対していかに効率よく適切に対処し、自立しているのかを表す機能のことです。たとえば食事の準備・対人関係・お金の管理などを含むもので、年長となって社会生活を営むために重要な要素となるものです。」
IQの数値で機械的に判断するのではなく、IQが60代でも日常生活でその人が自立して生活できるレベルなら、「知的障害とは呼ばない」と診断基準では定義されているのです。
IQの目安は「70未満」とされる場合と「70以下」される場合がありますが、これらの範囲には「約2%」の人が含まれます。しかし、IQが70未満でも日常生活に困らない人がいるので、知的障害の有病率は「約1%」とされているのです。
(4)現状の知的学級には知的障害でない子がたくさんいる
ですから、機械的に「IQが70以下(70未満)だから、貴方は知的障害学級で学ぶのが良いです」などの発言を聞くと、「ちょっと待ってください」と言いたくなってしまいます。
いわんや、「IQ70代の人が知的学級に在籍している」のを見ると、苦々しく感じます。
私にはこれらの現実は、「教育の失敗」だと感じられます。
このような子どもたちが生じないように、制度設計や運営をすべきだと思うのです。
このような現状を「仕方がないこと」と諦めないでほしいと思うのです。
財政サイドや市民に現状を説明し、改善を目指してほしいのです。
こちらの記事もご参照ください。
自閉情緒学級と知的学級①(自閉情緒学級) | ADHDの小児科医が伝えたいこと (ameblo.jp)