《妄想物語》はじめては ほろにがく③【hr side】 | みんなちがってみんないい

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田中圭くんを中心に
過去や現在大好きなもの
日常の中で思う事
発達障害の息子の事
そして
おっさんずラブ春牧onlyで
二次創作を書いています

大好きなものを大切にして
自分と違うものにも
目を向けてみる

皆違って皆いい
好きなものを好きと言おう

だいたい俺が、酢豚にパイナップルなんて話をしたのは、この前、百貨店のバレンタインコーナーを見た衝撃からだ。

今までバレンタインコーナーなんて立ち寄った事も、ましてやチラ見した事もなかった。

こんなに種類があるんだな……。
しかも、値段も安いものから高いものまで……。
えっ?6粒しか入ってないのに5000円!!!
嘘だろ………。

甘いとか苦いとか、そんな単純なものじゃなかった。


抹茶やきな粉等を使った【和】チョコぉ?

すげぇ~、なんか惑星みたいなチョコある。
これ、すごくね?
何でこんな複雑で綺麗なチョコ作れんの???

猫とか犬のチョコもあるな……
チワワのチョコあったら、迷わずそれにするんだけどな♪♪♪

てか、チョコレートだけじゃなくて
ファナンシェ?ブラウニー?フォンダンショコラ?
これ……何がどう違うんだ???

わっかんねぇぇぇ~っ!

見れば見るほど目移りして、どれがいいんだか、さっぱりわからなくなった。

どれも買いてぇ~
てか、選べねぇ~
凌太…どんなの好きなんだろ……。
聞かなきゃわかんねぇな……。

めくるめくチョコの誘惑に、少しクラクラしながら、バレンタインコーナーから抜け出そうとしたら、最後に目に飛び込んできたカラフルなチョコがあった。

ドライフルーツチョコ?
まるごとのイチゴや輪切りのオレンジのドライフルーツをチョコでコーティングされている。
見本は、半分に切って断面を見せていて、とても綺麗で可愛いチョコだった。
宝石みたいだな……。

凌太は、朝食と夕食に必ずフルーツを出すから、フルーツ好きなのはわかってるけど、チョコとドライフルーツって、好き嫌いあるかもな…。

凌太に探りを入れたいと思ったあげく、出てきた言葉が、酢豚にパイナップルだ。

でもなんか、いまいち凌太の好みが聞き出せなかった……。

あれから、何回かバレンタインコーナーを覗いたが、悩むばかりで今一つ決め手に欠ける。

チョコレートは、ガーナの板チョコくらいしか知らないし、それが一番美味しいと思ってる俺には、難しすぎる選択だ。




『どうすればいいんだぁぁ~!』

『何、この世の終わりみたいに叫んでいるんだ。』

『た、武川さん!!!』


今日は2月しては、少し暖かくて、久々に屋上で一人ご飯を食べていた。一人だと思って、考えるのに夢中になって、いつの間にか考えている事を思わず声にしてたらしい。


『武川さん、何でこんな所に?』

『今日は少し暖かいから、誰もいないだろうと思って屋上に来たんだがな。』


武川さんは、俺の座っているベンチに座って、グイグイくっついてきた。あいかわらず、距離が近いな武川さんって。


『なんだぁ、コンビニのおにぎりか。どうした?牧と喧嘩でもしたのか?』

『喧嘩なんてしてませんよ!!!』

『フッ、俺と付き合ってた頃は、毎日欠かさず弁当作ってくれたがな。』

『武川さんと付き合ってた頃は、まだこんなに仕事が忙しくなかっただけです!!!』

『ハハッ、何ムキになってるんだ。』


武川さんが煽ってくるからだ……。
たぶん俺より凌太の事を知っている人だろう。
唯一勝てない相手となると、認めたくないが武川さんだけだと思っている。


『わかってるよ……。それで、何を悩んでたんだ?』

『えっ?』

『さっき、なんか叫んでただろう。』

『あ……。』


そういえば、凌太の好み……、付き合ってた武川さんなら知ってるだろうな。


『武川さん、凌太ってどんなチョコレートが好きですか?』

『ん?あぁ…バレンタインか。……さぁな。俺は和菓子の方が好きだからな。牧にチョコレートなんて贈った事はない。』

『そうなんですか?』

『だいたい元カレに聞くような事か?』

『あ……すみません。』


そうだよな…。俺、何聞いてんだ。
すると、武川さんは立ち上がって俺に背を向けて言った。


『お前のそういう所だよな……。俺がお前に敵わない所は。』

『え?』

『俺がもっと、あいつの前で素直になれてたら……。』

『武…川さ……ん?』


武川さんが急に振り向いて、俺のネクタイを強く掴んで、グイっと引き寄せた。
至近距離で武川さんの細くした目が、鋭く俺を睨んだ。


『牧の事、絶対幸せにしてくれ。泣かせたらタダじゃおかん。』

『は、はい。』

『……さっさと食べろ。もうすぐ、休憩時間終わるぞ。』

『あっ…。』


武川さんは、少し表情を柔らかくして、戻っていった。


凌太は本社にいるから、舞子さんやマロの冷やかしが無い限り、凌太の事を話すことはない。
まして、武川さんと凌太の話をしたのは、ほとんどなかったけれど、武川さんにとって凌太は今でも特別なんだろう……。

だから、武川さんの熱に触れると俺は焦ってしまう。

考えてみれば、凌太が好きだと気づく前から、俺は武川さんの存在にザワザワしてたような気がする。

俺は一体……いつから、凌太の事好きだったんだろう……。



………俺、ほんとに馬鹿だよな。
遠回りし過ぎたんだよな……。



つづく