《妄想物語》はじめては ほろにがく②【mkside】 | みんなちがってみんないい

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田中圭くんを中心に
過去や現在大好きなもの
日常の中で思う事
発達障害の息子の事
そして
おっさんずラブ春牧onlyで
二次創作を書いています

大好きなものを大切にして
自分と違うものにも
目を向けてみる

皆違って皆いい
好きなものを好きと言おう

今日は久しぶりに春田さんと休みの日が一緒だった。

中々、春田さんがベッドから離してくれず、9時くらいにやっと解放されて、朝ごはんを作った。
久しぶりに和食にしようと、3日前にみそ漬けにした鮭を焼いて、ほうれん草の胡麻和えと、マッシュポテトのチーズ焼きを作り、りんごを添えた。
ほんとはマッシュポテトのチーズ焼きを朝から?という感じだが、春田さん用に作ったようなものだ。完全な和食だと物足りなそうな顔をするから…。


『今日は魚かぁ~。』


分かりやすく、不服そうな声。
春田さんがテーブルに座ってから、マッシュポテトのチーズ焼きを出す。


『おっ!ポテトのチーズ焼きじゃん!!!凌太わかってるぅ~。』


もう少しで40歳なのに、あいかわらず味覚がお子ちゃまだな。そろそろ、胃もたれとかしてくる年齢なんだけど……。


『こういうのないと、食った気しないんだよな。』


しかも、この人、食べる時にすごく幸せそうな笑顔になるんだよな……。
だから、つい俺も、求められているものを一品作ってしまう……。
駄目だよな……。極力油使わないで焼いてるけど…。


『凌太!この鮭もうめぇ~♪凌太って、天才だな。』


俺は、嬉しさを噛み殺して淡々と言う。


『ほうれん草も食べてください。』

『え~~、やだぁ。てか、凌太もポテト食べろよ。』

『朝から油ものはいいです。…てか、話をすり替えない!』

『へへっ、バレたか。』


いたずらな顔をして、結局ほうれん草も全部平らげる春田さんが……憎めない。


朝食を片付け終わった頃には、もう10時半前になっていた。それから、洗濯や部屋の掃除を春田さんと分担してやる。



シンガポール勤務が、去年の3月に終わり、4月に日本に帰ってきてから、春田さんと一緒に住むようになった。

ただ、俺は本社勤務、春田さんは営業所勤務で、休みが一緒にならない事も多いし、帰宅時間もバラバラだ。

でも、気持ちに嘘をついて別れたり、日本と海外で遠距離だったりした日々に比べれば、今の状況なんて、大した事ではないと感じる。

毎日、顔を合わせて、挨拶できる幸せ…。

それに春田さんは、最初のルームシェアの時とは違う。

俺より早く帰ってくる事が多い春田さんは、掃除や洗濯物畳みやお風呂掃除など、出来る事をやってくれるようになった。

料理も何回かやってくれたのだが、あまりにもセンスが無くてひどいので、それだけは断っているけど…。

でも、少し協力してくれるだけでも助かるし、やろうとしてくれる気持ちがうれしい。


『結婚したんだから、2人で協力しあって生活していくもんだろ?まぁ…不器用で出来ない事もあるけど…。』


いつか不安になったその言葉も、今は素直に聞ける。
春田さんが、ちゃんと考えてくれてる事に気づけたから……。



幸せな時間……なのだが、今日の休みは出来れば、1人になりたかった。

なんだか、思った通りに行かなくて、そわそわしていた。

ここの所、仕事が終わるのが遅くて、8時を過ぎる事がほとんどで休みの日に食材をまとめて買って、1週間分の夜のおかずを作り置きしていた。

朝は申し訳ないけれど、中々作れなくなってしまって、トーストだけだったり、酷いとコンビニで買って食べてもらう事も多くなった。

でも春田さんも、休みの日が一緒になると、買い物に付き合ってくれて、それだけでも、立派なデートになる。


『凌太ぁ~、そろそろ、買い出しに行くかぁ?』

『あっ、…うん。』


だけど……、今日の休みは、一緒になりたくなかった。
今日しか休みの日ないんだけどな……。
春田さんがいると、買いたいものを見に行く事も出来ない。
明日からまた大きな仕事が入ってる……。仕事が終わってから、百貨店に寄れる時間あるかな……。
あー何でもっと早く用意しなかったんだろう…。
俺と春田さんにとって、初めてのバレンタインなのに……。
忙しさと疲れで、珍しく大切な事を後回しにしてしまった。いつもなら、こんな事やらかさないのに…。


『なぁ、凌太ぁ。なんか怒ってる?』

『えっ?別に…怒ってないです。』

『そうかぁ?なんか今日、考え事してるような顔してるからさ。』


春田さんに言われて、ドキッとした。


『そんな事ないですよ。』

『ほんとにぃ~っ?』


春田さんの憎たらしい顔と言い方に少しイラッとした。
キスでもしようかと思ったけど、何か見透かされそうな気がして、代わりに春田さんの伸び縮みする頬を両手でぐしゃぐしゃにつねった。


『痛ててててぇ!なんだよ、凌太。』

『いつも、しつこいんですよ!!!』

『へ?…すみません……。』


春田さんは、しゅんとしてしまった。
そんな春田さんが可愛くて、思わず笑ってしまった。


『何笑ってんだよ!』


そう言いながら、春田さんの頬をつねっていた俺の両手を掴んで、俺の目を見つめた。


『なんか悩んでたら、すぐ言えよ…?俺……馬鹿だから、わかんないからな……。』


春田さんは、言い終えた後、ちょっと苦笑いして目を伏せた。

春田さん、勘違いしてる?
違う……俺、悩んでる訳じゃなくて……。
言いたかったけど、口をつぐんだ。

だって、これはサプライズじゃなきゃ、
意味がないんだ……。



つづく