《妄想物語番外編》町の小さな写真館④ | みんなちがってみんないい

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田中圭くんを中心に
過去や現在大好きなもの
日常の中で思う事
発達障害の息子の事
そして
おっさんずラブ春牧onlyで
二次創作を書いています

大好きなものを大切にして
自分と違うものにも
目を向けてみる

皆違って皆いい
好きなものを好きと言おう

『みゆ!かみが乱れたから、こっちにおいで!』

『はぁい!』


そして、髪を直しながら、
美優に耳打ちしました。


『みゆ、今度は、スタートって言われて、お兄ちゃん達が美優のほっぺに近づいてきたら、すぐ、座って。創一くんと凌太くんに、チューされないゲームだよ!』

『そういちくんとりょうたくんに、ちゅーされない、ゲームね!わかったぁ!』


美優は、二人の元に戻りました。

夫が2人に嘘の説明をしました。


『はい、今度は、最初からみゆにキスしないで。スタートしてから、みゆにキスして!連写で撮って、いい写真使うから!』

『はい!』

『じゃあ、みゆ!言われた通りに!』 

『あっ!……はぁい!』

『じゃあ、用意らスタート!』


創一くんと凌太くんは、
少し離れた所から、
美優の頬にキスをする為に
ゆっくりと近づいていきました。

美優にだいぶ近づいた所で、
私は真正面を見ている美優に
小さく手を上げました。

美優がそれを見て、思い切り頭を下げました。


『えっ???』

『うわぁ!』


こちらの思惑通り、
創一くんの唇が凌太くんのおでこに
触れました。

2人とも思わぬ状況に、唖然としている中、
美優は、跳び跳ねて喜んでいます。


『やったぁ!じぃじ、だいせいこう!!!』


私も申し訳ないと思いながら、
事の経緯を説明しました。


『ごめんなさいね!ウェディングフォトらしいのを、1枚撮りたくて。』


夫も謝罪しました。


『悪かったね。これで撮影は終了だよ。』


創一くんは、まだ少し放心状態で、
凌太くんは、顔が赤くなっていました。


撮影が終わり、今度は私が創一くんに付き、
夫が凌太くんに付き、着替えを手伝いました。


『ごめんなさいね。気分を害してないかしら?』


私の問いに、創一くんは、笑いながら
手をバタバタさせて否定しました。


『いいえ!大丈夫です!気にしないでください!正直、俺は、ウェディングフォトというものがわかってなくて…、逆に大丈夫でしたか?』

『大丈夫。とてもいい写真が撮れました。』

『よかった……。凌太とたくさん写真を撮れて、俺は嬉しかったです!』

『そう。よかった…。』


創一くんって、なんか、おひさまみたいな人です。
素直で真っ直ぐで、
凌太くんの事を大好きな気持ちには、
間違いなく曇りがありませんでした。


今日1日、創一くんと凌太くんの側にいたのに、
対照的な2人が
最後まで解けないままでした。


その時、夫は、凌太くんの手伝いをしていました。



……………………


『今日は、悪かったね。』

『あっ…いえ!』

『あまりやりたくなかったかな…?』

『あ……いえ………。俺なんかと…幸せな写真撮ってもいいのかな…と……思って…。』

『………そっか。君は、私達夫婦と、少し似た環境なのかもしれないね。』

『えっ…?』

『でも、大丈夫だよ。写真は、人の本当の気持ちをちゃんと写してくれるんだ。』

『………?』




………………………


美優は、娘が迎えに来て、先に帰りました。

辺りはもう、少し薄暗くなっていました。
創一くん、凌太くんもそれぞれ着替えて、
玄関先に出てきました。


『長い時間、お疲れ様。みゆとも遊んでもらって、ありがとう。』

『いいえ、こちらこそ。元旦にお仕事させて、すみません!』

『大丈夫。私達にお正月もお盆もないから。明日も別のカップルの予約が入っているんだ。』

『そうなんですか。大変ですね。それにしても、みゆちゃん、かわいいですね……。』


創一くんと私達夫婦で話している間、
凌太くんは、少し遠目で私達を見ていました。


『じゃあ、そろそろ宿に戻ります。ほんとにありがとうございました。』

『こちらこそ。』


その時でした。


『あ!あの……。』


凌太くんが、物憂げな顔をしながら、
私達に話しかけました。


『はい?』

『あ……いえ…。』


言葉を飲み込んでうつむいてしまいました。
創一くんも凌太くんの事を気にしています。


『凌太…?どうした?』


その時、夫が私にとても小さい声で、
耳打ちしました。


『きっと、私達と一緒だよ。』


夫の耳打ちで、なんとなく、
凌太くんの気持ちが、少し想像出来たのです。

そう思った時、自然と自分の過去を
言葉にしていました。





つづく