《妄想物語》A HAPPY NEW YEAR ⑧ | みんなちがってみんないい

みんなちがってみんないい

田中圭くんを中心に
過去や現在大好きなもの
日常の中で思う事
発達障害の息子の事
そして
おっさんずラブ春牧onlyで
二次創作を書いています

大好きなものを大切にして
自分と違うものにも
目を向けてみる

皆違って皆いい
好きなものを好きと言おう

寝てなかったからか、
あっという間に眠ってしまった。

ふと目を覚ますと、
前の席には、誰もいなくなっていた。

しまった!!!
みゆちゃんは、すでに降りてしまっていたようだ。みゆちゃんにバイバイ出来なかったな…。

仕方ない…。

みゆちゃん、可愛かったな…。


『あっ、春田さん。起きたんですね。』


凌太は、トイレに行ってたようだ。


『みゆちゃん、いつの間にか、降りてましたね。』

『うん…、バイバイ出来なかった。可愛かったな、みゆちゃん。』

『…………そうですね。』



ようやく、バスは由布院駅に着き、タクシーに乗り込み、目的の宿に着いた。

9時半に東京を出て、湯布院に着いたのは、
4時過ぎだった。


『遠かったなぁ…。』

『そうですね。』

『疲れた……、早く風呂入りてぇ~』



しかし、プレゼントしてもらった宿は、
俺の想像を軽く越えていた。

入り口から、丸い砂利を敷き詰めた庭園が
広がっていた。

大股で歩いていた歩幅が、少し狭くなるくらい
上品に振る舞わなければ
いけないような気になる。


『春田さん、出る手と足が、一緒になってますよ。』

『えっ、あっ、あぁ。』

『何、緊張してるんですか?』

『だってさぁ~、俺、こんなとこ、来たことないも~ん。だいたいさぁ~、恋人と温泉旅行とかも行った事ないし。』

『そうなんだぁ…♪』

『ん?今、馬鹿にしただろ!』

『別にぃ。』


凌太が何か嬉しそうにしていた。



『おかえりなさいませ。お待ちしておりました。』


宿の仲居さんに部屋に通された。
部屋に入って、圧倒された。


『うわぁ!すげぇ!!!』


キングサイズのベッドが並んで2つ、
そしてそこから見える外の景色。


『全面ガラス張りじゃん!』


思わず、外に出る。


『すげぇ!外に露天風呂!』


部屋にいちいち、感動していると
仲居さんが、温かい落ち着いた声で
説明してくれた。


『当旅館は、全室、大人の方、お二人様限定の宿になっております。』


お二人様限定の宿?


『お二人様の空間を、大切にしていただきたいという、コンセプトの元、御部屋には、時計とテレビを置いておりません。是非、ゆっくりおくつろぎください。部屋には、小さな内風呂。そしてお外にはお二人様専用の少し広い露天風呂がございますので、今の時期は、少し寒いと思いますが、是非、ご利用ください。それと、この御部屋限定でございますが、初日の出を御覧いただける特別な御部屋となっておりますので、どうぞ。』


初日の出!!!
すごい……な。
天空不動産の皆、すごい部屋を取ってくれたんだな。

てか、お二人様限定の宿なんてあるの?

知らないことばかりだな。


だいたい…誰かとお泊まり旅行なんて、初めてだもんな。

横にいる凌太を一目観て、
ちょっとドキドキした。

急に意識してしまう。


『今、5時過ぎですが、お食事の時間は、どういたしますか?6時から9時まで、30分単位で決めれますが。』


ご飯の話を聞いてから、急にお腹空いた。

そういえば、今日、移動が多くて、何も食べてなかったな。


『凌太!お腹空いた!』

『何も食べてませんでしたね。じゃあ、6時でお願いします。』

『承知致しました。では、もうしばらくお待ちください。6時になったら、玄関から向かって左側のお食事処においでください。ちなみにお食事も、完全個室になっておりますので。』


食事も個室かぁ。


ほんとにこの宿って
二人の時間を大切にしてくれるんだな。


仲居さんが帰り、部屋に二人になった。


やっと……二人きり…。

荷物の整理や部屋の備品の確認をして
落ち着かない凌太を
後ろから抱きしめた。


『凌太ぁ…。』

『あ…春田さ……。』

『やっと、二人きりだな。』


後ろから、凌太の首筋にkissした。


『あっ、…春田さん、もうご飯だから!』

『いいじゃん!』

『駄目です!まだ…。』


そんな色気のある事言われたら、余計に襲いそうになるんだけど。


しかし、
凌太は、俺の腕をすり抜けて、部屋を出ていった。


『凌太!ちょっと待って!』


俺も慌てて、凌太を追いかけた。



食事処の個室の部屋に通され、
前菜5種、もずく酢タピオカ入り、
ウニ豆腐、刺身盛り合わせ、
天ぷら盛り合わせ、豆乳豚しゃぶ鍋、デザートが
順番に出された。

俺にとっては、ちょっとお上品過ぎる物が多くて
食った気がしない……。


全ての料理が出され、
仲居さんが来なくなってから
思わず、ふぅーっと息を吐いた。


『春田さん、肩ガッチガチですよ。』

『慣れないもの食べて、緊張したわ。』

『でも、美味しかったですね!』

『そうかぁ~?俺は、凌太の唐揚げの方が、美味しいけど。』

『シーっ!春田さん、聞こえるから。』

『でも俺、今からでも凌太の唐揚げ、食べれる。』

『わかりました。じゃあ、旅行から帰ったら、作りますから。』

『えっ、ほんとに?旅行から帰っても、凌太、日本にいるの?』

『はい。12日までいます。』

『マジで!やった!めっちゃ家に帰りたくなってきた!』

『何でだよ!旅行楽しめ!』

『だってさぁ…俺達、普通に暮らした時間、少ないじゃん…。』


当たり前の日常を送る事は、中々出来なかった。

やっと二人の想いが通じた時には、
俺の上海行きは、決まっていたし、
上海から帰って、
やっと一緒に過ごせると思ったら、
凌太と心がすれ違ってしまって
母ちゃんが急に帰ってくるなんて言ったから、
凌太は、出ていって……

でも、いろんな事があって、
また凌太と想いが通じた。
なのに今度は、
凌太のシンガポール行き。

俺と違って、期限のないシンガポール勤務。
いつ、日本に戻ってくるか、わからない。


凌太の側にいたいだけなのに……。


すると、凌太が急に立ち上がって、
個室から出ていった。

慌てて、俺も追いかけた。


『凌太?ごめん!俺、なんか、悪い事言った?』


凌太は、俺の言葉に返事もせず、部屋に入った。
俺も追いかけて、部屋に入った。






つづく