障がい者と健常者が「働く」ときに必要なもの | 艶(あで)やかに派手やかに

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障がい者と健常者が「働く」ときに必要なもの(Webメディア マネたま)
https://www.manetama.jp/report/syougai-1


元山文菜さん 障害のある女性向けフリーペーパー「Co-Co Life☆女子部」編集長で、見えない下肢障害(人工股関節)当事者。
聞き手 和久井香菜子さん 視覚障害者のテープ起こし事業「ブラインドライターズ」のマネジメントを行う健常者。Co-Co Life☆女子部のライターでもある。
普段から接している二方だけあって、よく踏み込まれた内容です。

和久井さん
周囲の人は「(当事者が)どんなことができて、何ができないのか」まったくわからないですものね。何を聞いたらいいのかもわからないから、腫れ物を扱うようになる、という意見も聞いたことがあります。私は「Co-Co Life☆女子部」に関わり始めた当初、「車いすでは何センチくらいまでなら段差を乗り越えられるの?」とか本当に小さなこともたくさん聞きました。みんな丁寧に教えてくれましたよ。

元山さん
自分のことを知ろうとしてくれると思ったら、それは嬉しいですから、いくら聞かれても構わないと思います。でもひとくちに障がい者といってもさまざまです。たとえば事故に遭った直後の人は、あれこれ聞かれるのは辛いでしょう。逆に障がいをウリにしている人もいます。

和久井さん
ブラインドライターの業務を進めていると、みんな、甘えるところと遠慮するところの区別が難しそうだなと感じます。障がいによってできないことを「できない」と言いづらいのだろうなと。

元山さん
その部分は思いやりでわかってほしいところでもあります。身体の問題って、努力でどうにかできることだけではないですよね。それが原因で「できない」と伝えることは、ただ仕事ができないこととは違って、話すのがすごく辛いことなんです。でも「障がい」を受容する環境をつくることで、「できないこと」の発信が少しずつできるような気もしています。


障害者と健常者が一緒に働くということを考えた時、健常者の上司に障害者の部下というケースが圧倒的に多く、逆はあまり聞きません。
さらに踏み込んで言うと、健常者の上司とは、40歳以上の大卒の男性で、できる人ばかりのなかで途切れないキャリアを邁進してきた人が多く、このような人々は、残念ながら職場はもちろん学校や家庭や地域社会でも障害者や障害児と接した経験はほとんどなく、その結果当事者が何ができるかの想像力も充分でないのでは、と考えてしまいます。
それで健常者の上司は、障害者にできる仕事といえば、一昔前のOLがやっていたようなコピーや書類の整理など、非常に限られたことしか思いつかない、となってしまうのではないでしょうか。健常者の部下は飲み会に当然来るけれど、障害者に対してはわからない、来ないのでは、と思うかもしれません。健常者の上司が障害者の部下に対してどう接してるかと言うと、残念ながら健常者の部下に対して接してるのに対してかなり乖離がある、という体験談を聞きます。

でもそれらについては、特別視しないというか、障害ではなくその人を見る姿勢で考えてほしいことです。
かたや障害者にとって職場で安全で快適な環境を整える。これもその上司の役割ではないでしょうか。まして偏見に基づいた差別やハラスメントが行われるような状況というのは安全で快適な職場の提供ではありません。

障害者の方も、仕事はできる人に回ってくる、という仕組みを理解して、できることとできないことを伝えていく姿勢が必要です。

ただ、障害者の部下は、障害によってできないことを「できない」と言いづらい心理があります。
障害が原因でできないことかどうかの判断は、本人でもできていないことがあります。
それに障害があると、どうしても成果が出るまでに時間がかかったりします。
先天性障害だと、どうしても同世代の健常者と同じような経験を積む機会を得にくかったりして、結果として発達のヌケや遅れや、暗黙知の問題が伴ってでてくることが多いです。(そういうことから、すべての先天性障害は発達障害につながると言えるのかもしれません) そのような障害者の行動を、健常者の上司は社会人としての常識がないと捉えたり、障害があるから何でも許されるわけではないと叱責したりすることがあります。

こうした問題は、本人の努力でどうにかできることだけではないです。
機能的に、発達の機会損失ゆえに、できない、知らないことを「できない」「知らない」と伝えることは、仕事の出来不出来と違って、すごくつらいことだし、勇気のいることです。それを伝えること自体が言い訳だと受け取られかねないという後ろめたさが障害者にはあります。
でも、そこは上司が思いやりでわかってほしいところでもあります。受容する環境をつくることで、「あるがまま」の発信が少しずつできるような気もしています。

当事者も「障害特性だから理解して下さい」だとか「配慮がない、だから辞めます」と思考停止するのではなく、「どうしたらできるか」を前向きに考える必要があります。ここでは人事や支援者が間に入ってもいいと思います。

多くの伸びている優良企業と言われるところは、かなりこの点について配慮しています。 私自身、そのような環境に身を受けたことを大いに感謝したいです。
女性がイキイキと働ける環境を整えてる企業は常に業績もよく伸びてる企業が多いと裏付けられているのと同じように、障害者がイキイキと働ける環境を整えてる企業は非常に業績もよく伸びるのではないでしょうか。

そのように、健常者の上司が障害者に対してイキイキと働けるような適切な関わり合いやアドバイスを行っていく、障害者も健常者の上司の思いやりに感謝し100点満点を取る、という状況になるように進んでいけばいいな、という思いがあります。