□『ジョーカー・ゲーム』 柳広司 角川書店
書店で平積みになっていた頃から気になっていて、文庫化を待っていたけれど、待ちきれずにとうとう買ってしまった1冊。
作者の柳さんのお名前を知るきっかけにもなったのが本作ですが、文庫化を待つと同時に、買うべきか検討するために先に他の作品を読もうと思って、先に文 庫で出ている長編を何作か読みました。それらがすごく面白かったので、つい文庫化前に買ってしまったという次第←本末転倒。
舞台は第二次世界大戦前夜の日本。陸軍の中に秘密裏に設置された情報勤務要員養成所、通称「D機関」に纏わる物語。短編集で、本書には5編が収録されています。
第1編の「ジョーカー・ゲーム」は、D機関の設立と最初の任務の話。設立者の結城中佐と彼が選抜した学生たちの非人間的なまでの有能さと冷静さが、陸軍 から監視役として派遣された中尉の視点に添って描かれます。D機関がジョーカーを引くべく仕組まれた任務を利用して、今後潤沢に予算を得る道筋をつけるこ とになります。「魔王」とも呼ばれる結城中佐とD機関の学生たちの華々しいイントロダクションと、その後の資金源の裏付け。この話で設定された前提に基づ いて、その後の物語が展開されていきます。
その後の4編では、D機関出身者たちがそれぞれ担当する任務が描かれます。標的に近づいての情報収集、敵に捕らわれてからの脱出劇、陸軍内部で起こる物資の不正な横流しを暴く話、殺人事件の捜査と、バラエティが豊か。
「……ロンドンで、目も当てられない失敗が演じられた。」という1行から始まる「ロビンソン」が結構好きでした。
敵国スパイが殺害された事件を捜査する「XX(ダブル・クロス)」は、不可能殺人のトリックを見破るという筋ですが、そこにD機関の卒業試験やD機関におけるスパイの素質が絡んでくるのが面白かったです。
D機関の学生は、目立った特徴がなく(そのように訓練されているわけだし、作中で学生個々人の外見的特徴も特に表現されない)、全員が養成所入所当初か ら偽名と偽の経歴で過ごしており、また任務毎に異なる名前と経歴を与えられるため、読み始めた段階では誰がD機関の人間で、何を目的として動いているの か、というのがわからないという設定が面白いと思います。いろんな話が作れそう。
1編1編があまり長くないし、読み応えは十分なので、楽しみやすい本だったと思います。続編も出ています。
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ダブル・ジョーカー Amazon.co.jpへ
ハードカバーですが、素材の関係か、あまり重くないですし。ハンディな感じで楽しみやすいです。
書店で平積みになっていた頃から気になっていて、文庫化を待っていたけれど、待ちきれずにとうとう買ってしまった1冊。
作者の柳さんのお名前を知るきっかけにもなったのが本作ですが、文庫化を待つと同時に、買うべきか検討するために先に他の作品を読もうと思って、先に文 庫で出ている長編を何作か読みました。それらがすごく面白かったので、つい文庫化前に買ってしまったという次第←本末転倒。
舞台は第二次世界大戦前夜の日本。陸軍の中に秘密裏に設置された情報勤務要員養成所、通称「D機関」に纏わる物語。短編集で、本書には5編が収録されています。
第1編の「ジョーカー・ゲーム」は、D機関の設立と最初の任務の話。設立者の結城中佐と彼が選抜した学生たちの非人間的なまでの有能さと冷静さが、陸軍 から監視役として派遣された中尉の視点に添って描かれます。D機関がジョーカーを引くべく仕組まれた任務を利用して、今後潤沢に予算を得る道筋をつけるこ とになります。「魔王」とも呼ばれる結城中佐とD機関の学生たちの華々しいイントロダクションと、その後の資金源の裏付け。この話で設定された前提に基づ いて、その後の物語が展開されていきます。
その後の4編では、D機関出身者たちがそれぞれ担当する任務が描かれます。標的に近づいての情報収集、敵に捕らわれてからの脱出劇、陸軍内部で起こる物資の不正な横流しを暴く話、殺人事件の捜査と、バラエティが豊か。
「……ロンドンで、目も当てられない失敗が演じられた。」という1行から始まる「ロビンソン」が結構好きでした。
敵国スパイが殺害された事件を捜査する「XX(ダブル・クロス)」は、不可能殺人のトリックを見破るという筋ですが、そこにD機関の卒業試験やD機関におけるスパイの素質が絡んでくるのが面白かったです。
D機関の学生は、目立った特徴がなく(そのように訓練されているわけだし、作中で学生個々人の外見的特徴も特に表現されない)、全員が養成所入所当初か ら偽名と偽の経歴で過ごしており、また任務毎に異なる名前と経歴を与えられるため、読み始めた段階では誰がD機関の人間で、何を目的として動いているの か、というのがわからないという設定が面白いと思います。いろんな話が作れそう。
1編1編があまり長くないし、読み応えは十分なので、楽しみやすい本だったと思います。続編も出ています。
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