『湯道』(ゆどう) | アディクトリポート

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『湯道』(ゆどう)

2023/3/1 イオンシネマ浦和美園 スクリーン11 D列 11席

 

3月1日は午後5時からの「マンダロリアン」シーズン3配信までの時間つぶしに、

『サバカン SABAKAN』(2022/09/15)以来半年ぶりの、

イオンシネマ浦和美園での鑑賞。

 

ではなぜ幾多の上映作品の中から、

あえて『湯道』を選んで観たのかというと、

単純に上映スケジュールが合ったから。

 

でもって何の事前情報もなく鑑賞したら、これが意外な拾い物!

 

存分に堪能しました。

 

ですがこうやって持ち上げると、読者の期待値が異常に高まってしまい、

「そんなに言うほどの出来栄えでも」とガッカリされてしまうかも知れない。

 

だからと言って「ここが良かった」と具体的に書いてしまえば、これまた読者の映画との新鮮な出会いを阻害してしまうため、これすらもやりたくない。

 

というわけで、うんと遠回しに映画制作の周辺事情に話を絞るが、これとて先入観を与えかねないため、読むのは本編鑑賞後にしていただいたほうがいいかも。

 

『湯道』(ゆどう)は、2023年2月23日に公開の日本映画。監督は鈴木雅之、主演は生田斗真。また、タイトルにもある「湯道」の提唱者である小山薫堂が企画・脚本を担当。

 

小山薫堂(こやま・くんどう)といえば、『おくりびと』(2008)の脚本で有名。『おくりびと』は第81回アカデミー賞外国語映画賞の受賞でハクがつき、

おくり

2008年9月13日220館で公開され、9月13日・14日の週末動員ランキング5位。9月15日までの3日間で観客動員数29万0451人、興行収入3億4854万8500円をあげた。

出演者の峰岸徹の逝去が伝えられた直後の10月11日・12日の週末ランキングで3位まで上昇するが2008年11月1日・2日の10位以降は週末トップ10ランキング外となる。この時点での興行収入は30億円に達してない模様。

第81回アカデミー賞の外国語映画賞のノミネート発表を期に公開館を180館までに増やし2009年2月21日・22日の週末ランキング8位に再登場。

アカデミー賞の受賞発表後の2009年2月28日・3月1日には2日間で動員29万8470人、興収3億1938万3400円を記録し公開25週目にして初めて週末ランキングで1位になった。これらの数字は公開二日間の動員・興収を上回り、この時点での累計興収が38億4000万円。3月28日・29日10以降週末ランキングトップ10からは消えるが、4月には累計興収が60億円超えのアナウンスがあった。

 

スケジュール的にもアカデミー賞受賞の道筋は整えられていたようである(当初から受賞がほぼ決まっていて、受賞後に興行をブーストした)。

 

本作の成功には脚本の小山薫堂の功績も大きかろうが、

 

本木雅弘が、1996年に青木新門著『納棺夫日記』を読んで感銘を受け、青木新門宅を自ら訪れ、映画化の許可を得た。

しかし、その後、脚本を青木に見せると、舞台・ロケ地が富山ではなく山形になっていたことや物語の結末の相違、また本人の宗教観などが反映されていないことなどから映画化を拒否される。本木はその後、何度も青木宅を訪れたが、映画化は許されず、「やるなら、全く別の作品としてやってほしい」との青木の意向を受け、『おくりびと』というタイトルで、『納棺夫日記』とは全く別の内容で、別の作品として映画化。映画の完成までには本木と、本木の所属事務所元社長の小口健二の働きは大きい。

 

ーーとのことで、必ずしも小山の脚本のみのなせる技ではなかったようで。

 

それが証拠に、『おくりびと』の夢をもう一度と当てこんだ、同じ滝田洋二郎監督の翌年次回作『釣りキチ三平』(2009)もショボショボ。

脚本は何と『レジェンド&バタフライ』の古沢(こさわ)良太!ああ、それなのに…

 

薫堂脚本の次回作『スノープリンス 禁じられた恋のメロディ』(2009)は、

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『釣りキチ三平』に輪をかけたショボショボぶりで、「何でこんなものを?」と思わず首を捻りたくなる珍作だった。

 

そんな”『おくりびと』バブル脚本家”の香り高き小山薫堂が、

「オレは独力で大した脚本家なんだよ」と示したのが、今回の『湯道』である。

 

冒頭でフジテレビの映画と示され、

「いかん、テレビ局の息のかかった映画とは、どうせロクなもんじゃないんでは」

と懐疑的に観始めたんだが、

映画「Dr.コトー診療所」のようにテレビ版の下敷きはなく、

完全映画オリジナル作品で、

いつの間にか展開に引き込まれ、最後まで飽きることなく楽しんだ。

 

湯道とは、そもそも小山薫堂本人が提唱者だから、

一昔前の押井守の『立喰師列伝』(2006)みたいな成り行きだが、

〈小説

角川書店のライトノベル雑誌「ザ・スニーカー」にて、2000年12月号、および2001年8月号から2003年6月号にかけて連載された。単行本は角川書店より2004年2月に出版されている。

小説だが、起承転結のある物語ではなく、戦後から現代に至り日本に存在したとされる「立喰師」に関する資料、伝承などをまとめ、その実態に迫らんとする研究書であるという設定で書かれている。

 

あの映画のクソつまらなさと比べれば、『湯道』は何億倍も面白い…というより、

押井守作品と比べるなんて、小山薫堂に失礼極まりない気がする。

 

『湯道』監督の鈴木雅之氏は、同姓同名の歌手しか思い浮かばないが、

フジテレビのテレビドラマ演出多数、

テレビドラマ

映画

映画で観たのは、『ハットリくん』『HERO』『プリンセス トヨトミ』(テレビ放送版を視聴)そして今回の『湯道』だけだが、あまりいい意味で印象に残る作品は少なく、今回がようやく代表作と言えるのではないか。

 

そんなこんなで、『湯道』は126分あるからテレビ放送では時間延長で全長放送するんだろうけど、

そんなシケた視聴を1年も待たずに、公開中に映画館で観ても損はしませんよ。