『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』 | アディクトリポート

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『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』通常2D版

2018/1/23 イオンシネマ越谷レイクタウン スクリーン4 E-7

 

【雑感】

●必殺技の名前を唱える戦い方は、なつかしくも新鮮。

●登場メカ(機械獣)を印象づけるため、名称のテロップが欲しかった。

●「兜甲児の声が石丸博也じゃない」という文句は、

 同氏や松島みのりの別キャストで事情がわかるだろうにと不可思議。

 

ストーリーやドラマが

こうなったイキサツはよくわかるが、

それだけに、

全肯定とはいいがたい。

 

以下、映画の内容にふれているので、

鑑賞前に読むのはオススメできません。

 

話の組み立てとしては、
そろ

マジンガーZ

z

frtr

グレートマジンガー

zazaza

gann

グレンダイザー

こうきゅう

の続編となり、

とてもすべてを盛り込めないため、

取捨選択を迫られている。

 

グレンダイザーの要素を盛り込むゆとりはなく、

rack

完全に不在。

 

グレートマジンガー(右)はサブで、
ましんだー

tada

マジンガーZ(右)がメイン。

 

ビューナスAと、

ボスボロット

右の重戦車Zは、

ジャンボマシンダーのベースマシンが元メカ。

 

キャラも同様で、

・兜甲児

kouji

甲児の弟

・兜シロー

光子力研究所の

・弓弦之助

娘の

・弓さやか

三博士のうち、

・のっそり博士

・せわし博士

もっこりもりもり博士は死亡)

・ボス

・ムチャ

・ヌケ

——が登場。

 

一応「グレート」からも、

・剣鉄也

・炎ジュン

・みさと

——が登場。

 

敵は「グレート」のミケーネ闇の帝国の暗黒大将軍が率いる

戦闘獣軍団よりも、

・Dr.ヘルと

彼を巨大ロボ化した

・地獄大元帥と、

「Z」の

・機械獣軍団が登場キャラに選ばれた。

 

幹部はすべて「Z」の

・あしゅら男爵と

・ブロッケン伯爵、

ブロッケンの部下、

・鉄十字軍団

 

同じ「Z」のキャラでも、

ピグマン子爵や、

ミケーネのスパイ、

ゴーゴン大公は出て来ない。

 

そうなると

なんでこのキャラ(このメカ)が出て、あのキャラ(あのメカ)が出ない

かを説明しなければならない。

 

『INFINITY』は、その説明に多くの時間を割いているが、

これがどうにも言い訳がましい。

 

 

ドクターヘルは、

パラレルワールド(劇中では別の用語=隣接世界)に逃げ込んでいたが、

光子力エネルギー反応で、

並行世界の通路が発生し、行き来が可能に。

 

かくしてリターンマッチを挑むが、

なにせ彼は科学者だけに、

以前と同じではどうせ負けると踏んで、

違う戦いをしかけてくる。

 

それが「戦わずに共存」という建前で、

もちろん本心は別なんだが、

このドクターヘルの策略と渡り合うには、

政治が必要となり、

単なる

光子力研究所という施設組織=マジンガー軍

VS

ドクターヘルの機械獣軍団

という図式には収まらなくなる。

 

そこで弓教授を総理大臣にして、

政治の代表としても機能させるが、

本来は、

マジンガーシリーズの名主役対名敵役こそ、

『INFINITY』の本筋だったはずが、

それがおろそかになって、

脇筋がうんと幅をきかせてしまう。

 

ここで問題なのは、

「マジンガーZ」という子供向け(単純明快、勧善懲悪)アニメの続編なのに、

どうにもそぐわない余計な話がどっとまぎれこんだために、

すっかり焦点がボケてしまい、

話がテンポ良く進まず、
どんより停滞してしまうこと。

 

「グレンダイザー」から10年後で、

キャラはみんなオトナなので、

子供のままでは解決しない課題があるのはわかるけど、

そもそも、そういうオトナの話が、

シナリオでうまく処理できておらず、

もっぱら説明に苦労したうえ、

光子力のあつかいも、

政治的解決も、

オトナが考えるにしては、

「なんじゃこりゃ?」と未熟すぎ、不完全燃焼である。

 

どこらへんがそうなのか不備を指摘しないと、

頭ごなしに否定と受け取られかねないので例を挙げよう。

 

正義がピンチの時、

世界中から支援が寄せられる。

その支援とは電力。

この電力を逆変換(還元)して、光子力に使って欲しいらしい。

 

電力発生のしくみは、

水力にせよ、

火力にせよ、

風力にせよ、

原子力(核分裂)にせよ、

電力を使って元のエネルギー資源に戻せないどころか、

できたにしても膨大なロスが生じて、

あまりに非効率的である。

 

ムチャクチャな話が強引に押し通される原因は、

光子力エネルギーという架空の未知エネルギーだから、

都合良く扱えるというもので、

ある場面では原子力のように忌み嫌われ、

別の場面では核融合のように理想化されるが、

その正体や正解は誰にもわからない。

 

このように、

脚本で「成立してる」ことが、

「ホントに成立してるかアヤシイ」のは、

それ以前の基本的な事柄すら、

満足にこなせてないことから類推できる。

 

マジンガーZと機械獣軍団の戦いは、

全世界に同時中継され、

各国市街の大型モニターに、

その様子が映し出される。

 

表示文字から察するに、

作画陣に参加の多い国、

イタリアの景色らしいが、

とにかくすべての国の同時配信が、

ことごとく昼間の日中!

 

この世界に時差はないのか?

 

吉川晃司のエンディングテーマ「The Last Letter」は、

「ぼくらのマジンガーZ」になぞらえて、

Zとグレートの図解と共に流れるが、

なかみ

↓こちらが新しい『INFINITY』用の図解。

目の高さと位置が外装と図解でズレているのを、

どうして直さなかったのか?

 

こういう基本中の基本ができてないのに、

オリジナル作品があつかわなかった大それたテーマや問題を、

無難にこなせるはずがなかろう。

 

これに関連した話だと、

『スター・トレック2 カーンの逆襲』(1982)は、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-こっちや

1作目『スター・トレック』(1979)の反省から、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-hunnpa

内容に盛り込む要素をリスト化し、

シナリオはリストをチェックしながら執筆された。

だから盛りだくさんの内容ながら、

取りこぼしがなくドラマが展開。

 

しかし才人ニコラス・マイヤー(メイヤー)の脚本執筆は、

とおりいっぺんではなく、

それなりの紆余曲折があった。

 

スポック役のレナード・ニモイに脚本を読んでもらったところ、

「自分の役の扱いが気に食わん」

とのご感想。

 

そこでマイヤーは、

2週後にイスラエル撮影に向かうニモイに間に合わせて改稿。

 

ニモイはこれに満足し、

「たったの2週間で、問題点を直してくるヤツは彼だけ」

と感心しきりだった。

 

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かのミレニアム・ファルコンだって、

現在の形に落ち着くまでに、いくつもの段階を経ている。

 

 

デザイナーのジョー・ジョンストンは、

「当初はただ闇雲にデザインを描いていたが、

途中からコツがつかめて、ハズレを描かなくなっていった」

と当時をふり返る。

 

このように一流のプロ、

ニコラス・マイヤーにせよ、

ジョー・ジョンストンにせよ、

始めから正解を提供できたわけではなく、

他者の意見を採り入れ、

すりあわせや試行錯誤の過程を経て初めて、

最終完成案にたどり着いた。

 

ところが最近の脚本家やデザイナーは、

日本にせよアメリカにせよ

こうした途中過程を経ることなく、

最初に出した案がダメ出しを喰らわず、

そのまま最終案になってるんじゃないか?

 

「プロなんだから、初期案で合格だろ」
というのは、
創作の過程でたいへんな間違いだが、
最近の現場では、それがあたりまえになってるんじゃないのか?

 

 

 

試行錯誤や切磋琢磨、醸成という、

不可欠な段階を経て研ぎ澄まされていく過程がなく、

鍛えられないナマクラ刀が、

まともな使い物になるはずないだろ!

 


「すごい(脚本)ですね! これで行きましょう」

なんて馴れ合いは、互いにとって失礼千万である。

 

『INFINITY』は、4DXでこそ真価を発揮するそうだが、

そんなの4DXという上映環境がお手柄なだけで、

作品自体の出来不出来とは関係ない。

 

マジンガーZ対暗黒大将軍』(1974)は、

モノラル音源で2Dフィルムだったが、

4DX効果なしでも、

じゅうぶんに見応えがあった。

 

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結論:やるべきことに注力し、やらなくていいことは徹底的に省くべし。

 

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