『ブレードランナー』(1982)関連記事の3回目は、
【1回目】
【2回目】
タンホイザー・ゲート(Tannhäuser Gate)
と
Cビーム(C-beams glitter)
を話題の中心に。
この言葉は、
レプリカントのロイ・バティ(ルトガー・ハウアー)が、
I've seen things you people wouldn't believe.
おまえたち人間が信じがたい光景を見てきた。
Attack ships on fire off the shoulder of Orion.
オリオン座の肩口で、炎上している攻撃艇の群れ。
I watched C-beams glitter in the dark near the Tannhäuser Gate.
タンホイザー・ゲートの強重力で、弧を描く光の束(オーロラ)を。
All those moments will be lost in time, like tears in rain.
全ては時に流れ消えゆく。雨にまみれた涙のように。
Time to die.
臨終の時。
実は「ウルトラマンオーブ」(2016)でも、
ジャグラスジャグラー(青柳尊哉)がもじったが、
25話「さすらいの太陽」2016/12/24 脚本:中野貴雄
おまえ(オーブ)と俺(ジャグラー)は色々なものを見てきたな。
ダイヤモンド新星の爆発も。
黄金の銀河に浮かぶオーロラも。
だがそんな思い出はいずれ消える。
まるで星屑のように。
何もかも消える。
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『ブレードランナー』のロイのセリフ、脚本では冗漫で、
いささか要領を得なかったため、
シナリオの原案
I have known adventures, seen places you people will never see, I've been Offworld and back...frontiers! I've stood on the back deck of a blinker bound for the Plutition Camps with sweat in my eyes watching the stars fight on the shoulder of Orion. I've felt wind in my hair, riding test boats off the black galaxies and seen an attack fleet burn like a match and disappear. I've seen it...felt it!
ロイ役のルトガー・ハウアーが自分で、
より効果的で簡潔なセリフに書き替えた。
という。
とはいうものの、
私は諸手を挙げて絶賛せず、
疑ってかかっていた。
なぜなら『ブレードランナー』はいたって不完全で
いびつなところもまた魅力だったりするから、
やることは全部正解とかいかぶるのは禁物。
『ブレードランナー』公開から数年は、
グッズ共々、
関連情報も少なかった。
アクセスする情報源も異なれば、
時期も違うため、
マニアが仕入れた「自分だけが知っている」は、
ほんとに独自性が高かった。
あの(笑)、喜多嶋舞がレギュラー出演の、
テレビ朝日の情報バラエティ
「はなきんデータランド」(1989年4月14日〜1996年3月22日)で、
『ブレードランナー』を特集した時、
ビデオフォンでデッカード(ハリソン・フォード)と通話してるのは、
レイチェル(ショーン・ヤング)ではなく、
デッカードの別れた元妻という、
「そんなの、どこで仕入れた?」級の特ダネ?が示された。
ビデオフォン=テレビ電話と言っても、
ケータイ、つまりガラケーもスマホも未来予測できず、
公衆テレビ電話(public vid-phone)というのがほほ笑ましいが、
たしか元妻がレイチェルとそっくりだったからこそ、
デッカードはレイチェルに一目惚れしたという説明つきだったような…。
だけどこれがマユツバで、
シナリオでもレイチェルになってるし、
[Deckard calls Rachael on a public videophone.]
キャスト表にも、デッカードの元妻は記載がない。
そもそも、ここでデッカードがレイチェルに自分の居場所を伝えなければ、
彼女はこの場所に助けに来られない。
このガセネタが示すように、
ふかしコキまくりだったテレビ番組のキャスター
喜多嶋舞が、
トラブル発覚→芸能界引退→責任回避という流れが、
江角マキコにも
引き継がれたのは皮肉なものだ。
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「『ブレードランナー』劇中で描かれていること全部が正解じゃない」
と、最初に示したのは、
レーザーディスクのクライテリオン・コレクションだったと思う。
今のDVDで音声コメンタリーに相当する、
静止画+解説文で、
デッカードが証拠写真を分析機にかけて、
画面に非表示の画像情報を手に入れるなんて、
「技術的に不可能」と断定されていた。
当時はデジカメとインクジェットプリンターを予測できず、
紙焼き写真から視点(撮影場所)を自在に変えて、
そこに記録(撮影)されていない画像を得るとされていた。
しかしこれはどだい無理な話で、
それができちゃうんなら、
たった写真1枚で、いくらでも証拠写真に使えてしまう。
劇中では都合良く、かつもっともらしく、
使えちゃってるが。
そんなこんなで、
レプリカントのロイ・バティが、
死ぬ間際に遺(のこ)した言葉も、
けっこうマユツバと疑っていた。
まずは、
原案のセリフにもある、
彼が炎上する攻撃型宇宙船団(Attack ships on fire)を目撃した、
オリオン座の肩口(off the shoulder of Orion)とは、
地球からどれくらい離れている「辺境」(Off-world)なのか?
ロイ・バティが目撃したオフワールドがオリオン座にあるなら、
オリオン座のリゲルという星は、地球から700光年離れている。
ロイ・バティは地球で絶命したので、
700光年をはるばる旅したことになる。
たとえば光速度の99パーセントで進む宇宙船内の時計は静止系の約1/7の速さで進むため、
この亜光速航行だと、船内時間は100年もかかってしまう。
しかも静止状態でレプリカントが乗り込んだ宇宙船が、
光速の99パーセントに達するまで加速を続けるのに、
さらに何年もかかるから、
絶対に船内時間は1世紀=100年をゆうに越える。
一方、レプリカントの寿命は、
たったの4年しかない。
シャトルをどこで強奪したのかは不明だが、
たった2週間マイナス3日、
つまり11日でそこから地球に到達。
There was an escape from the off-world colonies two weeks ago.
Six replicants, three male, three female.
男女3名ずつ、総勢6名のレプリカントが、2週間前にオフワールドからテロ逃亡。
空挺隊が地球の海岸で船骸を発見するも、
レプリ6名の痕跡はなし。
3日前の夜に、レプリどもはタイレル社に押し入ろうと画策。
配電スペースを逃走中に1名が感電して黒焦げに。
残りのレプリ5名の行方はつかめず。
次にやつらは社員を装ってタイレル社への潜入を計画。
そこで(ブレードランナーの)ホールデンを派遣し、
社員候補にフォークト=カンプフ検査を実行、
容疑者一人を特定した模様。
時代設定は、2019〜2020年。
今からほんの2〜3年後に、
地球文明は700光年先に、
レプリの強制労働コロニーを築けるのか?
亜光速宇宙船なんて時間切れで、
まずあり得ない。
2019年に、
人類(地球生まれ)の富裕層がオフワールド(地球外)に移住しており、
その移住先は火星だとか木星の衛星ではなく、
別の太陽系という、
『猿の惑星』(1968)で、
公開当時の「現代」(1960年代末〜70年代初頭)に、
恒星間飛行の宇宙船が存在していたのと同じくらいのブッ飛び設定。
↓ジョージ・テイラー船長(チャールトン・へストン)の宇宙船〈リバティー1〉の全体形。
こんなに貧弱な推進装置で、
どうやって光速に近づくのか…。
となると、
こちらは原案にはない
謎のセリフ、
タンホイザー・ゲートに頼るしかなくなるが、
どっこい、これが役に立ちそうなフンイキ。
I watched C-beams glitter in the dark near the Tannhäuser Gate.
タンホイザー・ゲートのあたりで、Cビームのオーロラを見つめていた。
タンホイザーとは、
『タンホイザー』(ドイツ語: Tannhäuser)WWV.70は、リヒャルト・ワーグナーが作曲した、全3幕で構成されるオペラ。
正式な名称は『タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦』(Tannhäuser und der Sängerkrieg auf Wartburg)であるが、一般的には前者の題名で知られている。
ルトガー・ハウアーはこのオペラの語感から、
壮麗な何かを想起させようと思ったらしいが、
それはともかく、
これ以上タンホイザーで掘っても何も出て来ないので、
仕方なく、
これまたセリフ原案にはない、
Cビーム(C-beams glitter)って、何やねん?
ビームは光線。
柱や梁(はり=建築の構造材)の意味もあるので、glitter(輝き)を添えて区別している。
通常条件下では光は直進するから直線状。
C−とは、
X−wing(翼形態がX字)
Yーwing(外形がY字型)

C−scar(C字型の頬骨の傷)
——のように、
「C字型の」という意味。
光線が歪んで弧を描いている。
しかも1本だけでなく、束状(オーロラ)で。
直線のはずの光が曲線状に歪むのは、
ブラックホール等の強重力に影響される場合のみ(たぶん)。
天の川を背景として太陽質量の10倍となるブラックホールから600km離れた視点を想定し、理論的な計算を基に作成したシミュレーション画像。光はブラックホールより出られないため真っ暗で、周囲の光が重力でねじ曲げられる様子が描かれている。(Ute Kraus、2004年)
ブラックホール航法とは、
光速を突破できるワープ航法の一種である(たぶん)。
ホーキング博士によれば、ブラックホール航法は光速突破だけでなく、タイムトラベルにも使えるらしい。
そうなると、タンホイザー・ゲートと、
光のC字型の歪みには密接な関係があり、
ゲートは光速突破装置の名前と推測できる。
だから、
I watched C-beams glitter in the dark near the Tannhäuser Gate.
タンホイザー・ゲートの強重力で、弧を描くオーロラを。
と訳したわけ。
ブレードランナーWiki(英語版)によれば、
タンホイザー・ゲートは、
1998年の映画『Soldier』でも言及され、
The Tannhäuser Gate is never described in any detail during the film, but fans have often assumed that it to be a warp station of some kind, a fact confirmed by one of Soldiers deleted scenes.
『ブレードランナー』劇中では一切説明のなかったタンホイザー・ゲート。
映画“Soldier”の削除シーンに登場したこともあり、
ファンの間ではワープ機関の一種ではないかとウワサされている。
——という記述が!
脚本は『ブレードランナー』の共同脚本、デビッド・ピープルズ。
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さらに、
- Perhaps in a reference to Blade Runner, or through an independent resource, the Japanese animation series Gunbuster created by Gainax makes several references to space travel through a Tannhauser Gate.
ガイナックスの和製アニメ「ガンバスター」(トップをねらえ!・未見)には、『ブレードランナー』の影響らしき、タンホイザー・ゲートを通過する宇宙航法が出て来る。
——とも。
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ちなみに“Soldier”や『ガンバスター/トップをねらえ!』は、
この記事のために調べて初めて知ったので、
タンホイザー・ゲートが光速突破トンネル/ワープ装置という仮説は、
あくまでも私の持論で、何かを参考にしたわけではありません。
それだけに、ブレードランナーマニアや、
『トップをねらえ!』のスタッフは、
よくわかってるじゃないかと感心し、
まずは何より、ルトガー・ハウアーという役者の、
文系にも理系にも秀でた教養に恐れ入る。
『ブレードランナー』については、あと1回、
『2049』についても、あと1回、やる予定ですが、決定ではありません。





















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