パクリ〜にゃ!【前編】 | アディクトリポート

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※この物語はフィクションです。

俺の名はサノケン・ジロウ(佐野県 次郎)。

今何かと話題の、
佐野研二郎(サノ・ケンジロウ)と混同しないでくれよな。

あんなパクラーと一緒にされるのは心外だぜ。

クラーならぬ、クラー。「宇宙猿人ゴリ」(1971)に登場するシロアリ怪獣。
えっと
↑(右)親が一つ目なのに、腹に潜む子供はなぜ二つ目?
…と思ったら、目が2つある方は、バクラーの腹の中に潜んでいる原始生物で、
これをスペクトルマンに引きずり出されると、バクラーは息絶えたそうな。


顔つきだって、
ビリケンみたいなあいつには、全然似ていないし。
↓佐野研二郎は、髪型までビリケンをパクっているんだろうか?
zeronn


わけあって顔出しはできないが、
仲間からは、
↓「突撃!ヒューマン」のキングフラッシャーだとか、
みっつ
「ウルトラセブン」幻の12話に登場、
↓今では「なかったこと」にされてるスペル星人、
123
↑「レオ」のプレッシャー星人あたり、
つまり
パンストをかぶって引っ張られた顔を
パクッたみたいなキャラ

に、よく似てるって言われるよ。

あれ?

ってことは、半島系の顔つきってわけで、
おれサノケンも、サノに似てるってことか…。

オレがパクッたんじゃない!
アイツがオレの顔をパクッたんだよ。

さいな
↑「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」
の口調をパクってみました。


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オレ様の職業はデザイナー
…ではなく、
アートディレクター
といって、下っ端のデザイナーどもに指示を出して、
実作業は任せるんだ。

つまりデザイナー界の頂点だから、
そんじょそこらの、
ザコデザイナーといっしょにしてもらっちゃ困るぜ


作業ったって、
鉛筆を手に握って、
紙に描き付けるなんて、
時代遅れなことはやらない。

そもそも我がスタジオには、
筆記具もカンバスもなくて、
パソコンをネットにつなげてるだけだからな。


イチからデザインを作り上げる時代なんて終わったんだよ。

なにせネット社会になって、
画像や図案は世界中からパクリ放題。

つまりいったんネットに画像が流れた時点で、
もはや手綱は切れたも同然で、追跡は不可能なんだから、
元ネタのデザイナーが、権利を主張すべき時代なんて終わったわけさ。

見苦しく、画像に出本の著作権表示を配する、
往生際の悪いやつも中にはいるみたいだが、
のきに
そんな版権表示、
トリミングで切り取っちまえば、
証拠は残らない


使用料を払ったら、電子透かし(ウォーターマーク)を外します。
っていう素材だって、
daidai
使う場所が背景程度なら、
タダでパクって全然オッケー。

もしも文句を言われたって、
ここ
デザインって言うのは単純化の突き詰めなんだから、
ある程度似通ってしまうのは当然。
「そんなことを言われたら何もデザインできなくなる」
と逆ギレ
すりゃあ、
相手も、誰でも思いつきそうなチョロいデザインだって自覚があるから、
黙るもんなんだよ。

オレ様のデザインの素晴らしさが、
世間に衝撃を与えたのは、
まだ広告代理店勤務時代の、ニャンまげ。
ねこけい
2種類のネコ系既存キャラをニコイチしたのが、
元ネタの特定を困難にしたという、
ま、作戦勝ちかな。

オレの持ち味と言えば、
とても一人のデザイナーから産み出されたとは思えない、
多彩な図案だが、
そんなの、
パクリ元が一人じゃなくて、何人もいるんだから、
作風がバラバラで、統一感がなくてあたりまえ。

美大を出て、
大手広告代理店勤務を経て
独立して、ミスターデ・ザインという、
ききき
ミスタードーナツをパクッた名前のスタジオを設立。

まさに絵に描いたような成功街道まっしぐら。

そんなオレに、さらなる成功のネクストステージがやってきた。

2020年の東京オリンピックのエンブレムが公募。

東京オリンピック自体が、
巨大な利権の温床で、
関連事業に群がる業者は、
ボッタクリし放題。

新国立競技場だって、
入札制にしてみなよ。

2500億なんて、途方もない値段になるわけねえから。
たぶんその半分でも、おつりが来るぜ。
ヘタすりゃ1/4の600億や、1/5の500億でも、
よろこんでやらせていただきます。
って業者が、たくさん見つかるはずだぜ。

ってことは、最近落ち着いた1550億だって、
適正価格の3倍くらいで、まだまだ高い!

なのにじゃあ、500億~600億って言ったら、
そもそも当初の、
2500億のボッタクリが、
どういう算定基準だったんだよって、
ますます非難を浴びるから、
1550億って発表することで、
ずいぶん適正に圧縮したって印象に、
されちまってるだけのことだろ。

この例が示すように、
もらうもんだけ、ちゃっかりせしめたら、
中途半端な仕事を納品して、
さっさとずらかるヒットアンドアウェイが、
あちこちで横行してて、
思いがけず、
オレにもそのチャンスが回って来た!

兄弟、親戚、同業者といった人脈のおかげで、
オレの受賞は、はじめから決まってたしな。

じゃあ、そろそろ具体的なデザインのパクリ作業に取りかかるか。

最近は元ネタ1案につき、
決定デザイン1案でやって来たけど、
30点もあるサント・リーのトートバッグ程度じゃ、
それでよくても、さすがにエンブレムとなれば、
ニャンまげの初心に立ち返り、
2つぐらい元ネタを決めよう。

一つ目は、これだな。
りえーじゅ
ふつうに画像検索しても出て来ない、
デザインSNSのピンタレストにアップされてて、
おまけに意匠登録もされてないから好都合。

まさかベルギーの劇場のロゴと、
東京オリンピックを結びつけるとは、
誰も思いつくまい。

フッ、オレって、つくづく天才だな。

しかし、モノクロか。
手抜きしやがって、色まで考えとけよ。

しかたねえな、色はどっかで見つけるとしよう。

これでいっか。
すぺいん
バルセロナのデザイン事務所Hey Studioの作品 rebuild japanで、
各国のデザイナーが日本震災支援・寄付のためにデザインした画像の一つ。

え? どうしてこれにしようと決めたのかって?

そんなの、この壁紙のデザイン要素(形)が、
ベルギーの劇場ロゴに通じるからに決まってんだろ!

は? なんで、何かに頼らず、色ぐらい自分で決めないのかって?

そんなの、自信がないからに決まってんだろ!

こちとら、ずっとパクリ続けて来たから、
もはや自力で色も形も決められない、
完全なパクリ依存症なんだよ。

というわけで、めでたくできあがったのが、
↓この右側のやつだ。
となると

これに文句をつけたいヤツは、
元ネタのベルギーのデザイナー、オリビエ・ドビとか言う奴や、
バルセロナのデザイン事務所ヘイ・スタジオにでも言ってくれ。

そんなこんなの出来レースで、めでたく受賞。
みすと
「夢はかなう」と満面の笑みで、会見に応じたっけな。

いよいよ、オレの時代が来る!

この時は、本当にそう考えていたんだぜ。

パクリ~にゃ!
ぱくり

つづく

※この物語はフィクションです。
実在の人物、団体とは、一切関係ありません(笑)